測量士と測量士補は、どちらも測量法に基づく国家資格です。名前が似ているため同じ資格の上下だと思われがちですが、できる仕事の範囲が違い、試験の中身も難易度も大きく異なります。さらに、この資格には土地家屋調査士の試験を有利にするという別の使い道があり、そちらを目的に取る人も少なくありません。この記事では、両者の違い、試験を受けずに取得するルート、免除制度の使い方までを整理します。
測量士と測量士補の違い
測量法では、測量業者は営業所ごとに測量士を置くことが義務づけられています。測量士補は測量士を補助する立場です。
| 項目 | 測量士 | 測量士補 |
|---|---|---|
| 役割 | 測量計画を作成し、実施する | 測量士が作成した計画に従って測量に従事する |
| 営業所への設置 | 測量業者の営業所ごとに設置が必要 | 設置義務の対象ではない |
| 試験の形式 | 択一式に加えて記述式がある | 択一式のみ |
| 難易度の目安 | 合格率は令和4〜6年が1割台、令和7年は40.2%、令和8年は24.2%と年による差が大きい | 年度による変動が大きいが、測量士より大幅に高い |
| 受験資格 | 制限なし | 制限なし |
決定的な違いは計画を作れるかどうかです。測量士補は現場で測量に従事できますが、測量計画そのものを作成する立場にはなりません。測量業者の営業所に必ず置かなければならないのも測量士だけです。
受験資格はないが、登録しないと名乗れない
測量士・測量士補の試験は、年齢・学歴・実務経験を問わず誰でも受験できます。この点は受験資格の制限がない資格と同じで、入口は完全に開いています。
ただし、試験に合格しただけでは測量士・測量士補を名乗れません。国土地理院に備えられた名簿への登録を受けて、はじめて資格者として扱われます。登録は自動では行われず、自分で申請する必要があります。この構造は合格と登録が分かれている資格に共通するもので、就職や転職の期日から逆算して手続きを進めてください。
試験を受けずに取得するルートがある
測量士・測量士補には、試験以外の取得ルートが法律で用意されています。学校で測量に関する科目を修めた人向けの制度です。
| ルート | 測量士補 | 測量士 |
|---|---|---|
| 指定の学校で測量に関する科目を修めて卒業 | 卒業により登録の要件を満たす | 卒業に加え、一定期間の実務経験が必要 |
| 登録された測量に関する養成施設を修了 | 修了により登録の要件を満たす | 修了に加え、一定期間の実務経験が必要 |
| 試験に合格する | 実務経験は不要 | 実務経験は不要 |
測量士については、必要な実務経験の年数が学校の種別によって変わります。大学を卒業した場合と短期大学・高等専門学校を卒業した場合とでは、求められる年数が異なる仕組みです。自分の出身校が対象になっているかどうかは、国土地理院が公表している一覧で確認できます。測量系の学科を出ている人は、試験を受ける前にまずこちらを確認してください。該当していれば、試験対策そのものが不要になります。
測量士補は土地家屋調査士の午前試験を免除できる
測量士補が測量業界以外からも受験される理由が、この免除制度です。
土地家屋調査士試験の筆記は午前の部と午後の部に分かれており、午前の部では測量・作図に関する知識が問われます。測量士・測量士補・一級建築士・二級建築士のいずれかを持っていると、この午前の部が免除されます。実際の受験者の多くは、先に測量士補を取得して午前免除の状態で土地家屋調査士に臨みます。
ただし、免除されるのは午前の部だけです。午後の部では民法・不動産登記法などの法律科目と、申請書・図面の作成という書式問題が出題されます。土地家屋調査士の難しさの中心はこちらにあります。免除で有利になるのは事実ですが、それで合格が近づいたと考えるのは早計です。
試験の中身
測量士補
択一式のみで構成され、記述式はありません。出題範囲は、測量法の改正(令和7年4月1日施行)で科目名が整理され、令和8年試験では測量に関する法規、測地測量、測図測量、応用測量の4科目になっています(旧科目名の多角測量・水準測量などは測地測量に、地形測量・写真測量・地図編集は測図測量にまとめられました)。計算問題が一定量含まれますが、出題のパターンは比較的安定しており、過去問の反復が効きます。数学に苦手意識がある人でも、公式の使い方を型として覚えることで対応できる範囲です。
測量士
択一式に加えて記述式が出題されます。記述式では計算過程や測量計画の考え方を答えさせる問題が出るため、暗記だけでは対応できません。合格には択一式で一定の得点を確保したうえで、総合点でも基準を超える必要があります。択一だけ高得点でも記述が振るわなければ届きません。測量士補との難易度差は、この記述式の有無から生まれています。測量士の令和8年試験の科目は、測量に関する法規及びこれに関連する国際条約、測地測量、測図測量・地理情報システム、三次元点群測量、応用測量です。
合格率と合格基準(国土地理院の公表値)
| 試験日 | 測量士 受験者 | 測量士 合格率 | 測量士補 受験者 | 測量士補 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 令和4年5月15日 | 3,194人 | 14.4% | 12,556人 | 44.1% |
| 令和5年5月21日 | 3,667人 | 10.3% | 13,480人 | 32.2% |
| 令和6年5月19日 | 3,717人 | 13.0% | 13,633人 | 31.4% |
| 令和7年5月18日 | 3,703人 | 40.2% | 13,363人 | 51.2% |
| 令和8年5月17日 | 3,966人 | 24.2% | 12,269人 | 44.4% |
測量士は令和4〜6年が1割台でしたが、令和7年は40.2%(1,487人合格)、令和8年は24.2%(961人合格)と大きく上がりました。測量士の合格基準は、午前の択一式(700点満点)で450点以上、かつ午前と午後(記述式700点満点)の合計で910点以上です。午前の基準は令和6年に400点から450点へ引き上げられています。測量士補は700点満点中450点以上が合格です。
実際にどんな仕事をするのか
測量の仕事は、大きく公共測量と民間の測量に分かれます。
- 公共測量 国や自治体が実施する測量です。道路・河川・上下水道などの整備に先立って地形や境界を測ります。測量法に基づく手続きが定められており、作業規程に従って進めます
- 民間の測量 宅地の造成、建物の建築、開発行為などに伴う測量です。土地の分筆や境界の確定に関わる場面では、土地家屋調査士の業務と接続します
いずれも、現場での観測作業と、事務所での計算・図面作成の両方があります。現場作業は屋外で天候の影響を受け、繁忙期には日程が集中します。一方で、近年はGNSS測量やドローンによる写真測量、3次元レーザースキャナーなどの機器が普及し、扱う技術の幅が広がっています。機器の進歩によって作業のやり方は変わっていますが、測量計画を立てて精度を管理する役割は測量士が担い続けています。
どんな人が目指すとよいか
- 測量会社・建設コンサルタントで働いていて、営業所に置く測量士の要件を満たしたい人
- 土地家屋調査士を目指していて、午前の部を免除したい人
- 建設・土木の現場で働いていて、測量の知識を資格として形にしたい人
- 測量系の学科を卒業していて、無試験ルートが使える可能性がある人
逆に、測量とまったく関係のない仕事をしていて、土地家屋調査士も目指していない場合、測量士補を単独で取る意味は薄くなります。この資格は測量の実務か、土地家屋調査士という次の資格につながって初めて効いてきます。
関連する資格との関係
| 資格 | 扱う領域 | 測量士補との関係 |
|---|---|---|
| 土地家屋調査士 | 不動産の表示に関する登記、土地・建物の調査測量 | 測量士補の保有で午前の部が免除される |
| 司法書士 | 不動産の権利に関する登記、供託手続 | 登記でも扱う範囲が異なる。表示は調査士、権利は司法書士 |
| 建築士 | 建築物の設計・工事監理 | 一級・二級建築士も土地家屋調査士の午前の部を免除できる |
| 宅地建物取引士など不動産系 | 不動産取引の説明・契約 | 取引の資格であり、測量・登記とは役割が分かれる |
よくある質問
測量士補と測量士、どちらから受けるべきですか。
どちらも受験資格に制限がないため、いきなり測量士を受けることもできます。ただし記述式の有無で難易度が大きく違うため、測量の学習経験がない場合は測量士補から入るほうが現実的です。
測量士補は独学で取れますか。
択一式のみで出題範囲も定まっているため、市販のテキストと過去問で対策する人が多い資格です。計算問題は解き方が決まっているものが中心で、繰り返し解くことで対応できます。
文系でも大丈夫ですか。
測量士補については、必要な計算は公式の当てはめが中心です。数学の応用力より、出題パターンを覚えて手を動かした量が結果に出ます。土地家屋調査士の午前免除を目的に、法律系のバックグラウンドから受験する人も多くいます。
合格しただけで測量士補と名乗れますか。
名乗れません。国土地理院の名簿に登録されて初めて資格者になります。登録申請は自分で行う必要があります。
土地家屋調査士の午前免除は、測量士補と建築士のどちらが有利ですか。
免除される範囲は同じです。取得にかかる負担で選ぶことになり、建築士は学歴要件や実務経験が関わるため、免除だけが目的なら受験資格に制限のない測量士補のほうが早い場合が多くなります。
測量系の学科を出ていれば必ず無試験で取れますか。
学校と履修科目が制度の対象になっている必要があります。対象校は国土地理院が公表しているため、卒業証明書や成績証明書を用意する前に、まず一覧で確認してください。
測量士補を取ると就職に有利ですか。
測量業界や建設コンサルタントでは、測量の基礎知識がある証明として扱われます。ただし営業所に置くことが求められるのは測量士のため、キャリアとしては測量士への昇格や実務経験の積み上げが次の目標になります。
まとめ
測量士と測量士補は、計画を作れるかどうかで役割が分かれます。測量業者の営業所に必ず置かなければならないのは測量士で、測量士補はその補助という位置づけです。試験は記述式の有無で難易度に差があり、測量の学習経験がなければ測量士補から入るのが現実的です。
そしてこの資格には、土地家屋調査士の午前の部を免除できるという測量以外の使い道があります。土地家屋調査士を目指す人にとって、測量士補の取得は最短ルートの一部です。
測量系の学科を卒業している人は、試験対策を始める前に無試験ルートの対象になっていないかを確認してください。該当すれば、受験そのものが不要になります。
この記事の資格制度・試験に関する内容は、測量法の規定および国土交通省国土地理院が公開している測量士・測量士補試験の案内をもとに2026年9月に整理したものです。合格率・合格基準は国土地理院「測量士・測量士補試験問題・解答例及び実施結果」、科目・手数料・日程は「令和8年測量士・測量士補試験について」と受験案内PDFで、2026年10月4日に確認しました。試験の実施内容や登録の手続きは変更される場合があるため、受験・申請の前に必ず公式の最新情報を確認してください。
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