住宅の配線工事から工場・ビルの電気設備まで、電気を安全に扱う工事には電気工事士の国家資格が欠かせない。資格は第一種と第二種に分かれ、扱える工事の範囲や取得までの道のりが異なる。令和7年度は第二種の学科試験を139,087人、第一種の学科試験を36,154人が受験しており、受験者数では第二種が約4倍にあたる(当サイト計算)。この記事では、電気技術者試験センターが公表している試験結果の推移と令和8年度の日程をもとに両者の違いを整理し、未経験からのキャリアチェンジ、実務経験者のステップアップそれぞれの視点で選び方をまとめる。
電気工事士とは
電気工事士は、電気工事士法に基づく国家資格で、一般財団法人電気技術者試験センターが試験を実施している。同センターによれば、受験資格に実務経験は不要で、年齢や学歴を問わず誰でも受験できる。試験は「四肢択一方式でマークシート方式またはCBT方式で解答する学科試験」と、実際に配線作業を行う「技能試験」の2段階で構成され、両方に合格することで資格が得られる。
第一種・第二種の特徴の分解
扱える工事範囲の違い
第二種電気工事士は、低圧で受電する一般住宅や商店などの屋内配線設備、小規模な太陽電池発電設備などの工事に従事できる。第一種電気工事士は、第二種の範囲に加えて、高電圧で受電する小規模なビルや工場などの電気設備工事まで担当できる。扱える現場の規模が大きく変わるため、将来どの規模の工事に携わりたいかが資格選びの軸になる。
免状交付までの流れの違い
第二種は試験に合格すれば免状が交付される。第一種は試験合格に加えて、一定期間の実務経験を積むことが免状交付の要件になっている(令和3年4月の制度改正により、現在は学歴を問わず一律3年以上の実務経験が必要とされている)。合格しても即座に免状が交付されるとは限らない点は、第一種を検討するうえで見落としやすい部分だ。なお、実務経験を満たす前でも、第一種の学科・技能試験自体には合格しておくことができ、合格後に一定の条件下で「認定電気工事従事者」として簡易な電気工事に従事できる制度もある。
試験の難易度傾向
両試験とも学科試験と技能試験の両方に合格する必要があり、技能試験では時間内に配線を完成させる実技が課される。第二種は出題範囲が住宅・小規模施設向けの内容に絞られるため独学で合格を目指す人が多いとされる一方、第一種は出題範囲が広がり、高圧設備に関する知識も問われるため、実務経験と並行して学習を進めるケースが多いとされる。試験センターは合格率の欄を設けていないが、上期・下期ごとの受験者数と合格者数を公表している。そこから計算すると、近年の合格率はおおむね次の水準になる。
試験結果の推移(電気技術者試験センターの公表人数と当サイト計算の合格率)
第二種電気工事士(年度計、上期と下期の合計)
| 年度 | 学科 受験者 | 学科 合格者 | 学科 合格率 | 技能 受験者 | 技能 合格者 | 技能 合格率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 令和3年度 | 156,553人 | 92,640人 | 59.2% | 116,276人 | 84,684人 | 72.8% |
| 令和4年度 | 145,088人 | 81,179人 | 56.0% | 97,659人 | 70,888人 | 72.6% |
| 令和5年度 | 134,025人 | 79,655人 | 59.4% | 95,337人 | 67,749人 | 71.1% |
| 令和6年度 | 132,462人 | 77,045人 | 58.2% | 94,238人 | 66,215人 | 70.3% |
| 令和7年度 | 139,087人 | 78,711人 | 56.6% | 99,610人 | 71,471人 | 71.8% |
第一種電気工事士(年度計)
| 年度 | 学科 受験者 | 学科 合格者 | 学科 合格率 | 技能 受験者 | 技能 合格者 | 技能 合格率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 令和3年度 | 40,244人 | 21,542人 | 53.5% | 25,751人 | 17,260人 | 67.0% |
| 令和4年度 | 37,247人 | 21,686人 | 58.2% | 26,578人 | 16,672人 | 62.7% |
| 令和5年度 | 33,035人 | 20,361人 | 61.6% | 26,143人 | 15,834人 | 60.6% |
| 令和6年度 | 35,320人 | 20,030人 | 56.7% | 28,372人 | 17,004人 | 59.9% |
| 令和7年度 | 36,154人 | 20,735人 | 57.4% | 28,403人 | 16,509人 | 58.1% |
合格率は公表された合格者数を受験者数で割った当サイト計算の値で、令和5年度以降はCBT方式の受験者も含む。技能試験の受験者には、前年までに学科試験に合格した人や学科免除の人も入っている。第二種は学科が56〜60%前後、技能が70%台前半で毎年ほぼ動かない。第一種は技能試験の合格率が令和3年度の67.0%から令和7年度の58.1%まで下がってきており、実技で落ちる人の割合が第二種より高い。
令和8年度の日程
| 区分 | 学科試験(CBT方式) | 学科試験(筆記方式) | 技能試験 |
|---|---|---|---|
| 第二種 上期 | 4月23日〜6月7日 | 5月24日 | 7月18日または19日 |
| 第二種 下期 | 9月24日〜11月8日 | 10月25日 | 12月12日または13日 |
| 第一種 上期 | 4月1日〜5月8日 | なし | 7月4日 |
| 第一種 下期 | 9月11日〜10月18日 | 10月4日 | 11月21日 |
令和8年度の申込受付は上期・下期とも終わっており、次に申し込めるのは令和9年度の試験になる。学科試験は第二種が120分・50問、第一種が140分・50問の四肢択一である。
受験にかかる費用の目安
一般財団法人電気技術者試験センターの公表情報によると、第一種電気工事士試験の受験手数料はインターネット申込みで13,000円(非課税)、郵送申込みで14,400円(非課税)である。第二種電気工事士試験はインターネット申込みで11,100円(非課税)、郵送申込みで12,500円(非課税)とされ、いずれも学科試験と技能試験の両方を含む金額となる。不合格になった場合は再度この費用がかかるため、技能試験対策の練習キットや講座を利用する場合は、その費用も含めて全体の予算を考えておきたい。
分類・種類の比較
| 項目 | 第二種電気工事士 | 第一種電気工事士 |
|---|---|---|
| 対応できる工事 | 一般住宅・小規模店舗などの低圧設備 | 低圧設備に加え、小規模ビル・工場などの高圧受電設備 |
| 受験資格 | 制限なし | 制限なし |
| 免状交付要件 | 試験合格のみ | 試験合格+一定の実務経験 |
| 試験構成 | 学科試験+技能試験 | 学科試験+技能試験 |
| 想定される取得段階 | 未経験からの入り口として選ばれやすい | 実務経験を積んだ後のステップアップとして選ばれやすい |
他の類似資格との違い
電気関連の国家資格には、電気工事士のほかに電気主任技術者(電験)や電気工事施工管理技士がある。これらは名称が似ているため混同されやすいが、役割が異なる。
- 電気工事士:実際に配線・設備の工事作業を行うための資格。現場作業者として必須
- 電気主任技術者:発電所・変電所・大規模工場などの電気設備の保安監督を行う資格。工事そのものを行う資格ではなく、設備の維持・管理を担う立場で必要とされる
- 電気工事施工管理技士:電気工事の施工計画や工程管理、安全管理を担う資格。現場の作業者というより、工事全体を管理する立場で評価される
将来的に現場作業を中心にしたいのか、設備管理や施工管理といったマネジメント側に進みたいのかによって、次に取得すべき資格の方向性が変わってくる。
選び方・実践的なコツ
未経験からの選び方として、次の流れが一般的とされる。
- 電気工事の実務経験がない場合は、受験資格に制限がなく独学でも挑戦しやすい第二種からスタートする
- 第二種取得後に電気工事店などで実務経験を積みながら、第一種の免状交付要件を満たしていく
- 技能試験は候補問題があらかじめ公表されているため、練習キットや講座を使って繰り返し練習しておくと本番で安定しやすい
- 将来的に高圧設備の工事や大規模施設の案件に関わりたい場合は、早い段階で第一種の学科・技能試験合格を目指しておく
資格取得後のキャリアを考える際は、資格そのものだけでなく、勤務先が対応している工事の規模も合わせて確認しておきたい。第一種を持っていても、勤務先が低圧設備の工事しか請け負っていなければ、資格を活かす機会は限られる。転職や独立を見据える場合は、求人票や取引先の案件内容に「高圧」「自家用電気工作物」といった記載があるかどうかも、必要な資格を見極める手がかりになる。
よくある質問
Q. 未経験からでも第二種電気工事士は取得できますか
取得できる。受験資格に実務経験は不要で、学科試験と技能試験に合格すれば免状が交付される。独学での合格を目指す人も多いとされるが、技能試験は実技のため、練習キットなどを使った反復練習が推奨される。
Q. 第一種はいきなり受験できますか
受験自体は実務経験がなくても可能とされる。ただし合格後に免状の交付を受けるには一定期間の実務経験が要件になっているため、試験合格と資格(免状)の取得は分けて考える必要がある。
Q. 第二種と第一種、どちらから取得すべきですか
電気工事業界での実務経験がない場合は、まず第二種を取得して現場経験を積み、そのうえで第一種を目指す流れが一般的とされる。すでに実務経験がある場合は、第一種の学科・技能試験を先に合格しておくという進め方も選択肢になる。
Q. 技能試験ではどのような内容が出題されますか
配線図をもとに、指定された時間内に実際の配線・器具の取り付け作業を行う実技が出題される。事前に候補となる問題が公表されており、それをもとに練習することが一般的な対策とされる。
Q. 電気主任技術者との違いは何ですか
電気工事士は実際の工事作業を行うための資格で、電気主任技術者は発電所や大規模施設の電気設備の保安監督を担う資格である。扱う業務の内容が異なるため、目指すキャリアの方向性によって必要な資格が変わる。
Q. 資格を取れば独立開業できますか
電気工事士の資格だけで直ちに独立できるわけではなく、電気工事業を営むには別途、電気工事業法に基づく登録・届出などの手続きが必要になる。独立を視野に入れる場合は、資格取得後にこうした手続きについても確認しておく必要がある。
Q. 合格率はどのくらいですか
試験センターは受験者数と合格者数を公表しており、そこから計算すると令和7年度の第二種は学科56.6%・技能71.8%、第一種は学科57.4%・技能58.1%だった(当サイト計算)。学科と技能の両方に通る必要があるため、受験した人全体から見た最終的な合格の割合はこれより低くなる。
Q. 免状に有効期限はありますか
電気工事士の免状そのものに更新の必要はなく、一度交付されれば失効することなく保持できる。ただし、現場で作業を行う際には免状の携帯が義務付けられており、住所や氏名に変更があった場合は書き換えの手続きが必要になる。
Q. 第二種電気工事士だけでは対応できない工事はありますか
ある。高電圧で受電するビルや工場などの設備工事は第一種の範囲であり、第二種の資格では従事できない。契約電力や受電方式によって対応できる工事が変わるため、担当する現場の規模に応じて必要な資格を確認する必要がある。
まとめ
電気工事士は、扱える工事の規模によって第二種と第一種に分かれる国家資格である。未経験であれば受験資格の制限がない第二種から挑戦し、実務経験を積みながら第一種の免状交付要件を満たしていくのが一般的なキャリアパスとされる。将来携わりたい工事の規模や、電気主任技術者・電気工事施工管理技士といった関連資格との役割の違いも踏まえて、取得の順序を検討するとよい。
この記事の試験情報は、一般財団法人電気技術者試験センターの公式サイト(令和8年度試験実施要項・免状交付要件・受験手数料のご案内)を2026年9月28日に確認して整理しました。受験手数料は第一種電気工事士がインターネット申込み13,000円・書面申込み14,400円、第二種電気工事士がインターネット申込み11,100円・書面申込み12,500円(いずれも非課税、令和8年度)であることを確認しています。第一種電気工事士の免状交付に必要な実務経験は、2021年4月の制度改正により学歴を問わず一律3年以上とされています。試験結果の人数は同センターの「第一種電気工事士試験の試験結果と推移」「第二種電気工事士試験の試験結果と推移」、令和8年度の日程は各試験のトップページ、試験時間と出題数は「学科試験のポイント」で2026年10月4日に確認しました。合格率は公表人数から当サイトが計算したものです。受験前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
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