技術・安全衛生系資格

電験三種(第三種電気主任技術者)とは?科目別合格制度を使った学習計画

電験三種(第三種電気主任技術者)は、工場やビル、発電所などの電気設備を保安監督するための国家資格です。事業用電気工作物を設置する事業者には電気主任技術者を選任する義務があるため、資格を持つ人が社会的に必要とされ続ける構造になっています。難関資格として知られる一方、科目別合格制度があり、数年かけて計画的に取得を狙える点も特徴です。令和7年度は上期・下期あわせて48,942人が受験し、4科目すべてに合格したのは6,365人でした。この記事では、一般財団法人電気技術者試験センターが公開している情報をもとに、試験制度と合格率の推移、学習の進め方を整理します。

電気主任技術者とはどんな資格か

電気事業法により、事業用電気工作物を設置する者は、その工事・維持・運用に関する保安の監督をさせるため、電気主任技術者を選任しなければならないとされています。設置する側に選任義務があるという点が、この資格の性格を決めています。資格者がいなければ設備を運用できないため、企業側は有資格者を確保し続ける必要があります。

資格は監督できる範囲によって3種類に分かれます。

種別 保安監督できる範囲の目安
第一種 すべての事業用電気工作物
第二種 電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物
第三種 電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5,000キロワット以上の発電所を除く)

第三種が扱える5万ボルト未満という範囲には、中小規模の工場、商業施設、ビル、太陽光発電設備などが幅広く含まれます。実務で出会う設備の多くはこの範囲に収まるため、電験三種でも活躍の場は広く取れます。

電気工事士との違い

混同されやすいのが電気工事士です。電気工事士は実際に工事を行うための資格であるのに対し、電気主任技術者は保安を監督する立場です。手を動かして施工するのが電気工事士、設備全体の安全を管理し責任を負うのが電気主任技術者、という役割の違いになります。電気工事士(第一種・第二種)の資格概要と選び方もあわせて読むと、両者の位置づけが整理できます。

両方を持っていると、施工と保安の両面が分かる人材として評価されやすくなります。順番としては、実技のある電気工事士のほうが学習期間は短く済むため、電気工事士から入って電験三種に進む人も少なくありません。

試験の概要

項目 内容
受験資格 制限なし。年齢・学歴・実務経験を問わず受験できる
実施回数 年2回(上期・下期)
受験方式 申し込み時にCBT方式と筆記方式のどちらかを選択
試験科目 理論・電力・機械・法規の4科目
解答形式 五肢択一
受験手数料 7,700円(インターネット申込の場合)

かつては年1回の実施でしたが年2回に増え、さらにCBT方式が選べるようになりました。受験機会が増えたことは、科目別合格制度と組み合わせたときに大きな意味を持ちます。

合格率の推移

電気技術者試験センターの推移表とプレス発表資料から、年2回実施になった令和4年度以降の結果を並べました。受験者数は1科目でも出席した人の数です。

回 受験者数 4科目合格者 合格率 科目合格者(4科目合格を除く)
令和4年度 上期 33,786人 2,793人 約8.3%(当サイト計算) 9,930人
令和4年度 下期 28,785人 4,514人 約15.7%(当サイト計算) 8,269人
令和5年度 上期 28,168人 4,683人 約16.6%(当サイト計算) 9,252人
令和5年度 下期 24,567人 5,211人 約21.2%(当サイト計算) 8,761人
令和6年度 上期 25,416人 4,064人 約16.0%(当サイト計算) 7,898人
令和6年度 下期 24,547人 4,117人 16.8% 7,635人
令和7年度 上期 24,766人 3,201人 12.9% 6,859人
令和7年度 下期 24,176人 3,164人 13.1% 6,680人

4科目合格の割合は回によって8%台から2割強まで動き、令和7年度は上期・下期とも13%前後でした。一方、4科目合格には届かなくても一部の科目に合格した人が毎回6千〜1万人近くいて、令和7年度下期の科目合格率は27.6%です。

合格基準は各科目とも原則60点ですが、難易度によって調整されることがあり、令和7年度上期の筆記方式では機械科目が55点以上に引き下げられました。令和7年度下期の科目別合格率は理論23.9%、電力20.7%、機械19.8%、法規21.1%で、受験者のうちCBT方式は9,516人、筆記方式は14,660人でした。

科目別合格制度が学習計画を左右する

電験三種の最大の特徴が、科目別合格制度です。4科目のうち一部だけに合格した場合、その科目は「科目合格」となり、最初に合格した試験以降、申請により最大で連続5回まで当該科目の試験が免除されます。例えば令和7年度上期に科目合格した場合、免除を受けられるのは令和9年度下期の試験までです(受験案内の免除期間表による)。

年2回実施であるため、科目合格した回を含めて約3年の間に計6回の受験機会があるという計算になります。つまり、1回の試験で4科目すべてを取る必要はなく、次のような戦い方が成立します。

  • 1年目の上期に理論、下期に電力を取る
  • 2年目に機械という最大の山に集中する
  • 3年目までに法規を仕上げて完成させる
科目合格を活かすには、どの順番でどの科目を取るかを最初に決めておくことが重要です。行き当たりばったりで受けると、有効期間内に4科目が揃わず、最初に取った科目の免除が切れて振り出しに戻ることがあります。合格した科目の免除がいつまで有効かは、必ず自分で管理してください。

4科目の性格と学習の順番

4科目は独立しているわけではなく、理論が他の3科目の土台になる関係にあります。一般的に勧められる順番は次のとおりです。

  1. 理論 電気回路や電磁気の基礎。ここが弱いと他の科目の計算問題で行き詰まる
  2. 電力 発電・送電・変電の仕組み。理論の知識を前提にした内容が多い
  3. 機械 電動機・変圧器・パワーエレクトロニクス・制御など範囲が最も広く、多くの受験者が最大の難所と感じる
  4. 法規 電気事業法などの法令と、施設管理の計算問題。暗記の比重が高く、短期で仕上げやすい

法規は最後に回す人が多い科目ですが、計算問題も出るため暗記だけでは足りません。逆に理論を後回しにすると、電力・機械の学習効率が大きく落ちます。迷ったら理論から始めるのが定石です。

学習時間の目安は、電気の基礎知識がある人で500〜800時間程度、まったくの初学者ならそれ以上を見込む必要があるとされます。数か月で終わる資格ではなく、1年から3年の計画で臨む資格と考えたほうが実態に合います。

取得後の使いみち

  • ビル管理・設備管理の分野。有資格者の選任が必要なため、求人で必須要件になりやすい
  • 工場の電気設備の保安管理
  • 太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー設備の保安
  • 電気保安法人や電気管理技術者としての独立

一定の要件を満たす場合、事業場が保安管理業務を外部に委託できる制度もあります。実務経験を積んだうえで独立するルートが存在する点は、雇用される以外の選択肢として押さえておく価値があります。要件は細かく定められているため、検討する際は所管の産業保安監督部などの案内を確認してください。

資格が法律で必要とされている資格の効き方については、その資格は仕事にどう効くのか?業務独占・必置・名称独占で12資格を比較で整理しています。

上位種別へのルート

第二種・第一種は試験に合格する方法のほかに、認定校の課程を修了し、所定の実務経験を積んだうえで申請する認定取得のルートがあります。第三種を取得して現場に入り、実務経験を重ねながら上位を目指すという道筋が制度として用意されているわけです。実務経験の年数や対象となる業務の範囲は定められているため、認定を視野に入れるなら早い段階で要件を確認しておくとよいでしょう。

よくある質問

受験資格はありますか。

ありません。年齢・学歴・実務経験を問わず受験できます。ただし合格後に電気主任技術者として選任されるかどうかは、勤務先の設備と体制によります。

試験は年に何回ありますか。

年2回、上期と下期に実施されます。以前は年1回でしたが、受験機会が増えました。

CBT方式と筆記方式はどちらが有利ですか。

出題内容は同じで、解答の方法が違います。申し込み時に選択します。会場や日程の自由度を重視するならCBT方式、紙に書き込みながら計算したいなら筆記方式という選び方になります。

科目合格はいつまで有効ですか。

最初に合格した試験の次の回から、申請により最大で連続5回まで当該科目の試験が免除されます。公式の受験案内では、令和7年度上期に科目合格した場合の免除期間は令和9年度下期まで、令和8年度上期の合格なら令和10年度下期までと示されています。年2回実施なので、期間にするとおよそ2年半です。

どの科目から勉強すべきですか。

理論が他科目の土台になるため、理論から始めるのが一般的です。機械は範囲が最も広く難所とされるので、学習時間を厚く配分してください。

電気工事士とどちらを先に取るべきですか。

目的によります。施工の仕事に就きたいなら電気工事士、設備の保安管理を目指すなら電験三種です。学習期間は電気工事士のほうが短いため、先に電気工事士を取って現場に入り、働きながら電験三種を目指す人もいます。

独学でも合格できますか。

市販の教材が充実しているため独学で挑む人は多くいますが、学習時間の目安が数百時間規模で、数学と物理の基礎が前提になります。科目別合格制度を使って1科目ずつ確実に取る方針にすると、独学でも完走しやすくなります。

まとめ

電験三種は、電気事業法にもとづく選任義務に支えられた資格です。事業者側に有資格者を確保する必要がある以上、需要が構造的に生まれ続けます。受験資格はなく誰でも挑戦できますが、4科目の学習範囲は広く、数か月で仕上がる資格ではありません。

その代わりに用意されているのが科目別合格制度です。最大で連続5回(年2回実施で約2年半)の科目免除を使えば、1年に1〜2科目ずつ積み上げる進め方ができます。最初に科目の取得順と年間の計画を決めることが、この資格では学習法そのものより結果を左右します。

この記事の試験制度に関する内容は、一般財団法人電気技術者試験センターが公開している情報および電気事業法令の規定をもとに2026年9月に確認したものです。実施日程や手数料は変更される場合があるため、申し込み前に必ず公式サイトで最新の情報を確認してください。合格率の推移は同センターの「第三種電気主任技術者試験の試験結果と推移」と、令和7年度上期・下期の「試験の結果について」(プレス発表資料)で、2026年10月4日に確認しました。「当サイト計算」とした合格率は、公表された人数から当サイトが割り算した値です。

この記事の集計方針や出典の扱いについては、運営者情報ページにまとめています。

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