マンション管理士と管理業務主任者は、名前が似ていて試験範囲も大きく重なりますが、立っている側が正反対の資格です。片方は管理組合の相談に乗る側、もう片方は管理会社として業務を受ける側にあります。試験には相互の免除制度があり、同じ年に両方受ける人も少なくありません。この記事では、2つの資格の違い、5問免除の仕組み、どちらから取るべきかを整理します。
立場が正反対の2資格
| 項目 | マンション管理士 | 管理業務主任者 |
|---|---|---|
| 立場 | 管理組合の側に立ち、運営や大規模修繕について助言・指導する | マンション管理業者の側で、管理組合に対して契約の説明や報告を行う |
| 資格の型 | 名称独占 | 設置義務があり、法定の業務を担う |
| 試験の実施団体 | 公益財団法人マンション管理センター | 一般社団法人マンション管理業協会 |
| 主な職務 | 管理規約の見直し、修繕計画、住民間のトラブルへの助言 | 管理受託契約の重要事項の説明、管理業務の処理状況のチェックと報告 |
管理業務主任者は、マンション管理業者が事務所ごとに国土交通省令で定める人数を設置しなければならないとされています。会社側に設置義務があるため、管理会社では有資格者の確保が必要になり、求人でも要件になりやすい構造です。
一方のマンション管理士は名称独占資格です。管理組合への助言そのものは資格がなくても行えるため、資格を持っていることが直接業務の独占につながるわけではありません。管理組合の理事や、独立してコンサルティングを行う立場での信用の裏づけとして機能します。
試験の比較
| 項目 | マンション管理士 | 管理業務主任者 |
|---|---|---|
| 受験資格 | 制限なし | 制限なし |
| 実施時期 | 年1回(例年11月) | 年1回(例年12月) |
| 出題数 | 50問 | 50問 |
| 形式 | 四肢択一のマークシート | 四肢択一のマークシート |
| 試験時間 | 2時間 | 2時間 |
出題範囲は、区分所有法、マンション管理適正化法、管理規約、建築・設備、会計・税務など大きく重なります。同じ土台の上に、視点の違いによる出題の差が乗っている構成です。試験日が11月と12月に分かれているため、同じ年に両方受験することが日程上も可能になっています。
5問免除とダブル受験
2つの試験には相互の免除制度があります。マンション管理士試験の合格者は、申請により管理業務主任者試験で「マンション管理適正化法に関する事項」の5問が免除され、解答するのは45問になります。逆方向にも同様の仕組みが用意されています。
ただし、免除を狙って両方に手を広げると、どちらも中途半端になる可能性もあります。学習時間が限られているなら、まず自分の目的に近いほうを確実に取るほうが現実的です。
難易度の違い
同じ範囲を扱いながら、マンション管理士のほうが合格の難度は高いとされています。管理業務主任者が実務に必要な知識の確認という性格が強いのに対し、マンション管理士は助言する立場としての判断力まで問われるためです。公表されている数字でも、その差ははっきり出ています。
| 区分 | 令和7年度 受験者 | 合格者 | 合格率 | 合格点(50問中) |
|---|---|---|---|---|
| マンション管理士 | 10,984名 | 1,210名 | 11.0% | 42問(5問免除者は45問中37問) |
| 管理業務主任者 | 14,435人 | 2,832人 | 19.6% | 36問(5問免除者は45問中31問) |
令和6年度はマンション管理士が12.7%(合格者1,389名)、管理業務主任者が21.3%(合格者3,159人)でした。管理業務主任者の合格率は令和3年度から令和7年度まで18.9〜21.9%の範囲で推移し、合格点は35〜38問の間で年によって動いています。マンション管理士の令和7年度の合格点42問は、管理業務主任者より6問高い水準です。
この難易度差も、11月のマンション管理士を先に受ける流れを後押ししています。上位の試験に向けて仕上げた知識で、翌月の試験に臨む形になるためです。
合格後の手続きと資格の維持
どちらの試験も、合格しただけでは業務に就けません。登録を受け、資格を証明する書面の交付を受ける必要があります。管理業務主任者として重要事項の説明などを行うには、管理業務主任者証の交付が前提です。
あわせて、いずれの資格も一定期間ごとに講習を受けることが定められています。マンション管理をめぐる法令や標準管理規約は改正されるため、知識を更新し続ける仕組みが制度に組み込まれているわけです。取得して終わりではない点は、資格を選ぶ段階で織り込んでおいてください。手続きの期限や講習の区分は変わることがあるため、合格後に公式の案内で確認するのが確実です。
需要の背景 高経年マンションと管理計画認定制度
この分野の資格が注目される背景には、分譲マンションの高経年化があります。築年数を重ねた建物では、大規模修繕、修繕積立金の不足、理事の担い手不足といった課題が同時に表面化します。管理組合だけで判断するのが難しくなる場面が増えるほど、専門知識を持つ人の関与が求められます。
制度面でも、マンションの管理計画を地方公共団体が認定する仕組みが設けられ、管理の質を可視化する方向に動いています。管理の状態が資産価値の評価につながる流れができつつあり、管理を「見られるもの」として整える仕事の重要性が上がっているのが現在の状況です。管理会社側でも管理組合側でも、知識を持つ人の役割は広がっています。
宅建士との関係
不動産系の資格として、宅建士とあわせて3つを取得する人もいます。区分所有法や民法など重なる範囲があるため、学習の相乗効果は生まれます。ただし宅建士は売買・賃貸の取引に関する資格で、管理の実務とは扱う場面が違います。
3つを並べると、取引の場面が宅建士、管理会社の業務が管理業務主任者、管理組合の運営がマンション管理士、という分担になります。自分がどの場面で働きたいかを決めてから、順番を考えるとよいでしょう。宅建士資格の難易度と勉強法まとめや宅地建物取引士以外の不動産系資格まとめもあわせてどうぞ。
学習の進め方
- 区分所有法を最初に固める。両試験の土台であり、条文の理解がそのまま得点につながる
- マンション管理適正化法を押さえる。管理業務主任者側で重点的に問われる分野
- 管理規約(標準管理規約)を条文単位で確認する
- 建築・設備、会計・税務は範囲が広いので、頻出項目に絞って回す
- 過去問を両試験ぶん解き、同じ論点が視点を変えて問われる形に慣れる
両方を狙う場合でも、教材を2セット買う必要はありません。範囲が重なっているぶん、共通のテキストで土台を作り、直前期に各試験の過去問で仕上げるという進め方が効率的です。
どちらから取るべきか
- 管理会社への就職・転職が目的なら管理業務主任者。設置義務があるため求人で評価されやすい
- 管理組合の理事や住民として知識を得たいならマンション管理士。運営側の視点で学べる
- 独立やコンサルティングを視野に入れているならマンション管理士を軸に、管理業務主任者で実務の知識を補う
- 時間に余裕があり両方狙うなら11月のマンション管理士から入り、12月に5問免除で管理業務主任者を受ける
資格が法律上どう位置づけられているかで効き方が変わる点は、その資格は仕事にどう効くのか?業務独占・必置・名称独占で12資格を比較でも整理しています。
よくある質問
受験資格はありますか。
どちらの試験にも受験資格の制限はありません。年齢・学歴・実務経験を問わず受験できます。
5問免除はどうすれば受けられますか。
申し込み時に申請が必要です。マンション管理士試験の合格者が管理業務主任者試験を受ける場合、マンション管理適正化法に関する5問が免除され、解答は45問になります。自動的に適用されるものではないため、申請を忘れないでください。
同じ年に両方受験できますか。
試験日が11月と12月に分かれているため、日程上は可能です。ただし前者の合格発表は後者の試験後になるため、5問免除を使うには前年までに合格している必要があります。
どちらが難しいですか。
公表値でもマンション管理士のほうが難しく、令和7年度の合格率はマンション管理士11.0%、管理業務主任者19.6%でした。合格点も50問中42問と36問で、マンション管理士のほうが6問高くなっています。
合格後にすぐ働けますか。
登録と資格を証明する書面の交付が必要です。管理業務主任者として重要事項の説明などを行うには、管理業務主任者証の交付を受けている必要があります。
資格の更新はありますか。
いずれの資格も一定期間ごとに講習を受けることが定められています。マンション管理に関する法令や標準管理規約は改正されるため、知識を更新する仕組みが制度に組み込まれています。
マンション管理士は独占業務がありますか。
名称独占資格であり、助言や相談の業務そのものは資格がなくても行えます。名乗れることによる信用が価値の中心になります。
宅建士を持っていると有利ですか。
民法や区分所有法など重なる範囲があるため、学習の負担は軽くなります。ただし扱う場面が違うため、試験対策としては別途の学習が必要です。
管理業務主任者の資格はどう活かせますか。
マンション管理業者には事務所ごとの設置義務があるため、管理会社での就業に直結します。管理受託契約の重要事項の説明や、管理業務の処理状況の報告といった業務を担います。
まとめ
マンション管理士と管理業務主任者は、試験範囲が大きく重なりながら、立っている側が正反対の資格です。管理組合の側に立つのがマンション管理士、管理会社の側で法定の業務を担うのが管理業務主任者になります。就職に直結しやすいのは設置義務のある管理業務主任者、独立や管理組合側での活動を考えるならマンション管理士という選び方が基本です。
両方を狙うなら、11月のマンション管理士を先に、翌年以降に5問免除を使って管理業務主任者を受ける流れが効率的です。免除は申請制なので忘れないでください。
この記事の試験制度に関する内容は、公益財団法人マンション管理センター、一般社団法人マンション管理業協会、国土交通省が公開している情報をもとに2026年9月に整理したものです。試験日程や免除の取り扱いは変更される場合があるため、申し込み前に必ず公式の案内で確認してください。合格率と合格点はマンション管理センター「令和7年度マンション管理士試験の結果について」とマンション管理業協会の令和3〜7年度「管理業務主任者試験 結果報告」、令和8年度の日程と手数料は同センターの実施公告と同協会の実施要領で、2026年10月4日に確認しました。
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