令和7年度の税理士試験では、受験した36,320人のうち5科目目の合格で試験合格に届いた人は527人だった。一方で、1科目以上に合格した一部科目合格者は7,320人いる。税理士試験は、一発勝負ではなく科目を何年かかけて積み上げる試験だということが、この数字からも読み取れる。この記事では国税庁の公表資料をもとに、税理士の業務と試験制度、科目別の合格率、令和8年度試験の日程と手数料、他の会計・法律系資格との違い、取得までの進め方を整理する。
税理士とは何か
税理士は、税務代理・税務書類の作成・税務相談という3つの業務を行う専門家で、税理士法に基づく国家資格である。企業や個人に代わって確定申告や税務調査への対応を行い、日々の会計処理から相続税の相談まで、税に関わる場面全般を担う。税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士の独占業務とされており、これらを税理士以外の者が有償で行うことは原則として認められていない。所管官庁は財務省で、試験は国税庁が実施する。
税理士試験の特徴を分解する
科目合格制という仕組み
税理士試験は、会計科目2科目と税法科目3科目の合計5科目に合格する必要がある科目合格制の試験である。一度に5科目すべてを受験する必要はなく、1科目ずつ受験して合格を積み重ねていくことができる。合格した科目は生涯有効とされているため、働きながら数年かけて5科目をそろえる受験者が多い。
必須科目と選択科目の組み合わせ
会計科目は簿記論・財務諸表論の2科目が必須である。税法科目は、所得税法・法人税法のいずれか1科目が必須とされ、残る2科目は相続税法・消費税法・酒税法・国税徴収法・住民税・事業税・固定資産税のなかから選ぶ(ただし消費税法と酒税法はどちらか一方のみ、住民税と事業税もどちらか一方のみしか選択できない)。
受験資格が緩和された経緯
2023年度の試験から受験資格が見直された。会計科目(簿記論・財務諸表論)は受験資格そのものが撤廃され、学歴を問わず誰でも受験できるようになった。税法科目については、必要とされる学識要件が「法律学または経済学に属する科目」から「社会科学に属する科目」へと対象が広げられ、社会学・政治学・教育学・統計学など幅広い分野の履修者が受験しやすくなっている。
試験の実施時期と形式
税理士試験は例年8月に、会計科目・税法科目とも筆記試験の形式で3日間にわたって実施される。マークシート方式ではなく、計算問題と理論問題を記述する形式が中心で、1科目の試験時間は2時間である。令和8年度(第76回)は8月4日(火)から6日(木)に行われ、合格発表は11月27日(金)の予定とされている。受験手数料は申込科目数で決まり、1科目4,000円、2科目5,500円、3科目7,000円、4科目8,500円、5科目10,000円である。
令和8年度からは結果の通知方法も変わった。これまで得点が知らされたのは合格点に届かなかった科目だけだったが、第76回以降は試験合格者・一部科目合格者を含む全受験者に各科目の得点が通知される。なお、熊本県の会場(グランメッセ熊本)で受験する予定だった人は、地震の影響で11月1日から3日に再試験が行われ、その合格発表は12月25日の予定である。
公式統計で見る税理士試験の合格率
国税庁は毎年、試験地別・科目別の結果表を公表している。令和7年度(第75回)と令和6年度(第74回)の全体の数字は次のとおりである(受験者数・合格者数は実人員)。
| 区分 | 令和7年度(第75回) | 令和6年度(第74回) |
|---|---|---|
| 受験申込者数 | 45,517人 | 43,919人 |
| 受験者数 | 36,320人 | 34,757人 |
| 5科目到達者数(試験合格) | 527人 | 578人 |
| 一部科目合格者数 | 7,320人 | 5,184人 |
| 合格者数合計 | 7,847人 | 5,762人 |
| 合格率(合格者数合計÷受験者数) | 21.6% | 16.6% |
ここでいう合格率21.6%は、1科目でも合格した人を含めた割合である。その年に5科目目の合格で試験合格に達した527人は、受験者全体の約1.5%にあたる(当サイト計算)。
科目別の合格率は年によって大きく動く
| 科目 | 令和7年度 受験者数 | 令和7年度 合格者数 | 令和7年度 合格率 | 令和6年度 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 簿記論 | 18,466人 | 2,058人 | 11.1% | 17.4% |
| 財務諸表論 | 15,629人 | 4,980人 | 31.9% | 8.0% |
| 所得税法 | 1,120人 | 146人 | 13.0% | 12.6% |
| 法人税法 | 3,606人 | 488人 | 13.5% | 16.4% |
| 相続税法 | 2,413人 | 333人 | 13.8% | 18.7% |
| 消費税法 | 7,064人 | 712人 | 10.1% | 10.3% |
| 酒税法 | 590人 | 72人 | 12.2% | 12.1% |
| 国税徴収法 | 1,671人 | 231人 | 13.8% | 13.0% |
| 住民税 | 439人 | 78人 | 17.8% | 18.2% |
| 事業税 | 310人 | 38人 | 12.3% | 13.7% |
| 固定資産税 | 928人 | 144人 | 15.5% | 18.0% |
| 合計(延人員) | 52,236人 | 9,280人 | 17.8% | 13.5% |
目を引くのは財務諸表論で、令和6年度は8.0%だったが令和7年度は31.9%に上がった。令和5年度は28.1%だったので、1年だけ極端に低かったことになる。税法科目は両年とも10%台に収まっているが、科目によっては前年の数字が翌年の目安にならない。
令和8年度(第76回)の受験申込者は45,954人で、前年の45,517人から101.0%とほぼ横ばいだった。科目別の申込は簿記論が26,001人、財務諸表論が20,428人である。
資格取得までのルートの分類
税理士になるルートは一つではなく、主に次の4つに分けられる。
| ルート | 概要 |
|---|---|
| 税理士試験合格 | 会計2科目・税法3科目の合計5科目に合格する、最も一般的な方法 |
| 大学院での科目免除 | 一定の要件を満たす大学院を修了し、国税審議会の認定を受けて一部科目の免除を受ける |
| 公認会計士資格による登録 | 公認会計士登録者は、税理士としても登録できる |
| 弁護士資格による登録 | 弁護士登録者は、税理士としても登録できる |
いずれのルートを経ても、税理士として業務を行うには日本税理士会連合会への登録が必要であり、登録にあたっては会計に関する一定の実務経験が求められる。試験に合格しただけでは、まだ税理士を名乗って業務を行うことはできない。
5科目すべてに合格した場合、合格発表の日の官報に受験地・受験番号が掲載されるため「官報合格」と呼ばれる(令和6年度試験以降、個人情報保護の観点から氏名は掲載されていない)。官報合格者は毎年の合格者全体のなかでも一部にとどまり、多くの受験者は会計事務所などに勤務しながら複数年かけて科目をそろえている。
他の会計・法律系資格との違い
税理士としばしば比較されるのが公認会計士である。両者は業務の中心が異なる。
| 項目 | 税理士 | 公認会計士 |
|---|---|---|
| 主な業務 | 税務代理・税務書類の作成・税務相談 | 財務諸表監査(監査証明業務) |
| 独占業務の対象 | 税務申告・税務相談 | 上場企業等の財務諸表監査 |
| 試験制度 | 科目合格制、5科目に合格すればよい | 短答式・論文式を経る一括合格に近い制度 |
| 資格の関係 | 公認会計士登録者は税理士登録も可能 | 税理士試験合格者が自動的に会計士になることはない |
行政書士も書類作成を扱う資格として名前が挙がることがあるが、行政書士の独占業務は官公署に提出する書類の作成が中心で、税務申告書の作成や税務相談は含まれない。税務に関する独占業務を持つのは税理士のみである点が、両資格を分ける最大の違いになる。
選び方・学習を進める実践的なコツ
税理士試験は、科目ごとの出題範囲が広く、複数科目を並行して学習する負担も大きい難関試験である。国税庁が公表している合格基準点は各科目とも満点の60%だが、科目別の合格率は10%前後から30%台まで年によって動く。公表されているのは基準点と結果の数字までで、得点の調整の有無などは示されていない。前年の合格率を見て受けやすい科目を当てにするより、どの年に受けても60%を取れる準備をするほうが計画は崩れにくい。
働きながら受験する場合は、1年に1〜2科目のペースで積み上げる計画が現実的である。5科目すべての合格を目指す官報合格にこだわらず、必要科目をそろえた時点で登録要件を満たす道を選ぶ受験者もいる。大学院での科目免除制度を使うかどうかも、免除にかかる学費や在学期間と、試験科目を自力で積み上げる時間とを比較したうえで検討する価値がある。どちらの道を選ぶにしても、実務経験を並行して積んでおくと登録時にスムーズに手続きへ移行しやすい。
よくある質問
Q. 税理士試験に受験資格はありますか
2023年度の試験から、会計科目(簿記論・財務諸表論)は受験資格が撤廃され誰でも受験できる。税法科目は社会科学に属する科目の履修など一定の学識要件があるが、対象範囲は以前より広がっている。
Q. 5科目に一度で合格しないといけませんか
その必要はない。科目合格制のため、1科目ずつ受験して積み重ねることができ、合格した科目は生涯有効とされている。
Q. 官報合格とは何ですか
5科目すべてに合格すると、合格発表の日の官報に受験地・受験番号が掲載されることから「官報合格」と呼ばれている(令和6年度試験以降、氏名は掲載されていない)。
Q. 合格率はどのくらいですか
令和7年度は、一部科目合格者を含めた合格率が21.6%(受験者36,320人中7,847人)で、5科目目の合格で試験合格に達したのは527人だった。科目別では簿記論11.1%、財務諸表論31.9%、法人税法13.5%などで、同じ科目でも年によって合格率が大きく変わる。合格基準点は各科目とも満点の60%と公表されている。
Q. 公認会計士や弁護士は税理士試験を受けなくてもよいのですか
公認会計士・弁護士の資格を持つ者は、税理士試験に合格していなくても税理士としての登録ができる制度がある。
Q. 大学院に進学すれば試験を受けなくてよいのですか
大学院修了による免除は税法または会計に属する科目の一部が対象で、全科目が免除されるわけではない。免除の対象範囲や要件は国税審議会の認定によって決まる。
Q. 資格を取ったらすぐに独立できますか
試験合格や登録直後にすぐ独立するケースは多くなく、会計事務所などで実務経験を積んでから独立や転職を選ぶ人が一般的である。
Q. 働きながらの取得は可能ですか
科目合格制のため、会計事務所などに勤務しながら数年かけて5科目をそろえる受験スタイルは広く見られる方法である。
Q. 登録に必要な実務経験とはどのような内容ですか
税理士登録には、租税に関する事務または会計に関する事務について通算2年以上の実務経験が求められる。試験合格や資格取得の前後を問わず経験期間として認められる場合があるため、詳細は日本税理士会連合会の登録要件を確認する必要がある。
まとめ
税理士は税務代理・税務書類の作成・税務相談を独占業務とする国家資格であり、資格取得には税理士試験の科目合格制という独自の仕組みが関わってくる。2023年度からは受験資格が緩和され、会計科目は誰でも挑戦できるようになった。試験合格以外にも大学院での科目免除や、公認会計士・弁護士資格による登録といったルートがあり、自分の状況に合わせた道を選べる点も特徴である。令和7年度は受験者36,320人のうち一部科目合格を含めて7,847人が合格し、試験合格に達したのは527人だった。科目別の合格率は年によって大きく動くため、国税庁が毎年公表する結果表で直近の数字を確かめながら学習計画を立てたい。
出典(いずれも2026年10月4日に確認)
- 国税庁「令和7年度(第75回)税理士試験結果表」(試験地別・学歴別・年齢別・科目別)
- 国税庁「令和6年度(第74回)税理士試験結果表」
- 国税庁「令和8年度(第76回)税理士試験 受験申込者数」
- 国税庁「令和8年度(第76回)税理士試験公告」(試験日時、合格発表予定日、受験手数料)
- 国税審議会「令和8年度(第76回)税理士試験における試験結果の発表方法の変更について」(令和8年8月21日)
- 国税庁「令和8年度(第76回)税理士試験(熊本県)の再試験実施について(予定)」
- 国税庁「税理士試験の概要」(合格基準点)、日本税理士会連合会の登録要件に関する公開情報(2026年9月28日確認)
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