企業の財務諸表を読み解き、株式や債券の投資価値を分析する専門家として金融業界で評価されているのが、証券アナリスト、通称CMAである。証券会社や運用会社の求人票で「CMA資格保有者歓迎」といった表記を見かけることもあり、FP(ファイナンシャルプランナー)や証券外務員と混同されがちだが、資格の性格はまったく異なる。本記事では、日本証券アナリスト協会が運営するCMA資格制度の仕組みと、取得に必須とされる通信教育講座の位置づけ、FP・証券外務員との違い、キャリアでの評価のされ方を整理する。
証券アナリスト(CMA)とは何か
証券アナリスト(CMA)は、正式名称を「日本証券アナリスト協会認定アナリスト」といい、公益社団法人日本証券アナリスト協会が認定する資格である。国が法律に基づいて実施する国家資格ではなく、協会という民間団体が運営する検定制度であるが、証券・運用業界では実務上の評価が高い資格として広く知られている。
協会は、企業の財務分析やポートフォリオ・マネジメント、証券市場の分析に関する体系的な教育プログラムを提供しており、CMAはその中核に位置づけられる資格である。資格の対象となる知識分野は、株式や債券といった個別商品の販売知識ではなく、企業やマクロ経済を分析し、投資判断につなげる専門知識である点が特徴になっている。
1次試験・2次試験の構成と通信教育講座制度
CMA資格を取得するには、協会が実施する第1次レベル講座と第2次レベル講座を順に受講し、それぞれに対応する試験に合格する必要がある。学習分野はいずれも「証券分析とポートフォリオ・マネジメント」「財務分析」「コーポレート・ファイナンス」「市場と経済の分析」「数量分析と確率・統計」「職業倫理・行為基準」の6分野で共通しており、第2次レベルではより実践的な応用力が問われる構成になっている。
第1次試験はこの6分野を3科目に分けて実施され、科目ごとの受験が可能である。一方の第2次試験は全学習分野を対象とした総合試験で、論述式の問題を中心に応用力・分析力・判断力が問われる年1回(6月上旬)の試験となっている。
| 項目 | 第1次レベル | 第2次レベル |
|---|---|---|
| 学習分野 | 6分野(基本知識の習得) | 6分野(実践的な応用力を習得) |
| 試験科目・形式 | 3科目に分けて実施 | 全分野を対象とした論述式の総合試験 |
| 受講資格 | 制限なし・誰でも受講可能 | 第1次試験3科目全て合格者(合格年を含め3年以内) |
| 試験実施時期 | 年2回(春・秋) | 年1回(6月上旬) |
| 受験可能時期 | 講座受講年度の翌年から | 講座受講年度の翌年から |
学習方法は、冊子とPDFで提供される講座テキストとデジタル教材(CMA e-Learning)による自習方式で、動画による講義は提供されていない。試験問題は講座テキストの内容から出題される。
なお、第1次試験の3科目すべてに合格した人は「検定会員補」に登録できる制度もあるが、これは任意の制度であり、登録の有無によって第2次レベル講座の受講や第2次試験が免除されることはない。
FP・証券外務員との違い
金融系の資格はFPや証券外務員としばしば並べて語られるが、それぞれ対象とする業務も資格の位置づけも異なる。証券外務員は金融商品の販売・勧誘そのものに必要な必須資格であり、資格がなければ業務自体を行えない。一方でCMAは業務独占資格ではなく、企業分析・運用の専門知識を持つことを示す専門資格という位置づけになる。
| 資格 | 実施団体 | 主な役割 | 業務との関係 |
|---|---|---|---|
| 証券アナリスト(CMA) | 日本証券アナリスト協会 | 企業・証券分析、ポートフォリオ運用の専門知識を証明 | 業務独占ではないが専門性の証明として評価される |
| 証券外務員(一種・二種) | 日本証券業協会 | 金融商品の販売・勧誘に関する法令・商品知識を証明 | 販売・勧誘業務に必須(資格なしでは業務不可) |
| FP(ファイナンシャルプランナー) | きんざい・日本FP協会 | 個人の家計・資産設計に関する知識を証明 | 独占業務はなく相談・提案のための知識体系 |
証券外務員は「所属する金融機関を通じて登録して初めて働ける」という販売の入口の資格であり、証券外務員とは?一種と二種の違いと、登録が所属会社を通す理由で整理した通り、合格と登録は別物という構造を持つ。これに対しCMAは、企業や市場を分析する側の専門性を示す資格であり、販売の可否を左右するものではない。
FPは個人の家計・保険・不動産・相続まで幅広く扱う相談業務向けの知識体系である点が、企業分析に特化したCMAとの大きな違いになる。FP資格の等級や種類の全体像はFP(ファイナンシャルプランナー)資格の種類と難易度で解説している。金融系資格全体の位置づけを俯瞰したい場合は宅建以外にもある金融系資格まとめもあわせて参照するとよい。
受験資格・取得までの流れ
CMA資格取得までの流れは、次のように段階を踏む形になっている。
- 第1次レベル講座を受講する(受講資格の制限はなく誰でも申込可能)
- 受講年度の翌年以降に第1次試験(3科目)を受験し、全科目に合格する
- 3科目合格年を含め3年以内に、第2次レベル講座を受講する
- 第2次レベル講座受講年度の翌年以降に第2次試験(総合試験)を受験し、合格する
- 第2次試験合格後、実務経験3年以上が認定された時点で協会の検定会員として入会し、「日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)」の資格称号を使用できるようになる
第2次試験合格時点で実務経験が3年に満たない場合は、資格を保留したまま実務経験を積み、3年に達した段階で検定会員に入会する形になる。証券外務員のように資格を独占業務の前提として持つ性質のものではないため、資格取得の可否と業務そのものの可否が直結しない点も特徴である。この種の業務独占・必置資格との違いについてはその資格は仕事にどう効くのか?業務独占・必置・名称独占で12資格を比較で整理している。
取得の意味・キャリアでの活かし方
CMA資格は、証券会社の調査部門(リサーチ)や運用会社のファンドマネージャー、銀行の法人営業やM&A関連部署など、企業分析力や財務分析力そのものが評価される職種で存在感を発揮する資格である。金融商品を売る力ではなく、企業や市場を読み解く力を客観的に示せる点が、証券外務員やFPとは異なる評価のされ方につながっている。
財務諸表を読み解く基礎力という観点では簿記の知識とも親和性が高く、簿記2級のレベルと転職での評価のされ方で扱った内容と合わせて学習計画を立てる社会人も多い。また、CMAは取得して終わりではなく、協会が用意する継続学習プログラムを通じて知識を更新し続けることが期待される資格でもある。資格取得後の維持・更新にかかる負担を他資格と比較したい場合は取ったあと手間がかかる資格はどれ?更新・維持の負担で12資格を比較を参考にしてほしい。
よくある質問(FAQ)
Q1. CMAは国家資格ですか?
いいえ。CMAは公益社団法人日本証券アナリスト協会が実施する民間の検定資格である。国が法律に基づいて付与する国家資格ではないが、証券・運用業界では実務上高く評価されている。
Q2. 独学だけで取得できますか?
できない。CMA講座(第1次・第2次レベル講座)の受講が受験の前提になっており、講座を受講しない限り試験そのものを受けることができない仕組みになっている。
Q3. 受講・受験に学歴や実務経験は必要ですか?
第1次レベル講座の受講資格に年齢・学歴等の制限はなく、誰でも申し込むことができる。ただし、資格称号としてCMAを名乗るには、第2次試験合格に加えて実務経験3年以上が必要になる。
Q4. 第1次試験と第2次試験はどう違いますか?
第1次試験は6つの学習分野を3科目に分けて基本知識を問う試験で、科目ごとの受験も可能である。第2次試験は全分野を対象にした論述式の総合試験で、応用力・分析力・判断力が問われる。
Q5. 証券外務員を持っているとCMAの学習は有利になりますか?
試験範囲や資格の目的は異なるため単純に有利とは言えないが、株式・債券など金融商品の基礎知識に触れた経験があれば、学習の導入部分で役立つ場面はあると考えられる。
Q6. FPとCMAはどちらを取るべきですか?
目的が異なるため優劣で決めるものではない。個人の家計・資産設計の相談業務を志向するならFP、企業分析や運用業務でのキャリアを志向するならCMAが目的に合致しやすい。
Q7. 検定会員補とは何ですか?
第1次試験の3科目すべてに合格した人が任意で登録できる制度である。登録することで一定の会員サービスを受けられるが、第2次レベル講座の受講や第2次試験が免除されるわけではない。
Q8. 試験は年に何回実施されますか?
第1次試験は春・秋の年2回、第2次試験は6月上旬の年1回実施されている。詳細な日程は毎年、協会の公式サイトで前年10月末頃に案内される。
まとめ
証券アナリスト(CMA)は、日本証券アナリスト協会が認定する、企業分析・証券分析の専門性を示す資格である。第1次・第2次レベル講座の受講と、それぞれに対応する試験への合格、さらに実務経験3年以上を経て初めて資格称号を名乗ることができ、通信教育講座を受講せずに独学だけで取得することはできない制度設計になっている。金融商品の販売に必須の証券外務員、個人の家計・資産設計を扱うFPとは目的も対象業務も異なるため、自分がどのキャリアを目指すのかを踏まえたうえで、学習の優先順位を検討するとよい。
この記事の内容は、公益社団法人日本証券アナリスト協会が公開している情報をもとに2026年9月に整理したものです。制度や試験の実施内容は変更される場合があるため、受験の前には必ず同協会の最新の公式発表を確認してください。
企業年金・確定拠出年金に特化した資格としてはDCプランナーもある。CMAが企業分析・証券分析の専門性を示す資格であるのに対し、DCプランナーは年金制度・確定拠出年金の知識に特化しており、金融・年金分野の資格を横断的に把握したい場合はあわせて確認しておくとよい。
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