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損害保険募集人・生命保険募集人とは?試験の仕組みと登録までの流れを解説

保険会社や保険代理店で保険を販売する仕事に就くとき、必ず名前が出てくるのが「損害保険募集人」と「生命保険募集人」という資格です。宅建士やFPのように独立して名乗れる資格とは性質が異なり、保険業法という法律にもとづいて、保険を販売する人全員に義務づけられている登録制度です。この記事では、損害保険募集人・生命保険募集人の試験の仕組みと、資格を取得するまでの流れを、公式情報にもとづいて整理します。

損害保険募集人・生命保険募集人とは

保険募集人とは、保険業法上「特定保険募集人」と呼ばれる立場のうち、生命保険募集人・損害保険代理店(および少額短期保険募集人)を指す言葉です。保険業法第276条は、これらの募集人は内閣総理大臣の登録を受けなければならないと定めています。実務上は、生命保険については一般社団法人生命保険協会、損害保険については一般社団法人日本損害保険協会が、業界共通の試験と登録に関わる事務を担っています。

つまり損害保険募集人・生命保険募集人は、保険を売るために誰もが取得できる民間資格ではなく、保険業法にもとづいて保険を販売する人全員が通らなければならない法定の登録要件です。試験に合格しただけでは保険を販売できず、内閣総理大臣への登録(生命保険募集人・損害保険代理店の場合)または届出(損害保険代理店の使用人として活動する場合)を経て、はじめて募集行為が可能になります。

損害保険募集人試験の構成

損害保険募集人になるための試験(損保一般試験)は、一般社団法人日本損害保険協会が実施しています。試験は全員が受ける「基礎単位」と、取り扱う商品に応じて選ぶ「商品単位(自動車保険単位・火災保険単位・傷害疾病保険単位)」で構成されており、基礎単位への合格が代理店登録・募集人届出の必須要件、商品単位への合格がその商品を取り扱うための条件となります。

試験時間はいずれの単位も40分で、基礎単位は50問(各2点、100点満点)、商品単位は各20問(各5点、100点満点)、合格基準はどの単位も70点以上です。単位ごとに5年ごとの更新制となっており、CBT(コンピュータを使った試験)方式で全国の会場で受験します。

生命保険募集人試験の構成

生命保険募集人については、一般社団法人生命保険協会が業界共通の教育課程を定めています。基礎知識を問う「一般課程」から始まり、「専門課程」(合格するとライフ・コンサルタント=LCの称号)、「応用課程」(合格するとシニア・ライフ・コンサルタント=SLCの称号)、さらに上位の「生命保険大学課程」(トータル・ライフ・コンサルタント=TLCの称号)へと段階的にステップアップしていく仕組みです。募集人として登録するために最低限必要なのは一般課程試験への合格で、専門課程以降は知識を深めるための上位資格という位置づけになります。

生命保険協会の案内では、営業職員の場合は入社後おおむね3ヶ月にわたり所定の研修を行ったうえで一般課程試験を受験する流れが説明されています。代理店の場合も基礎研修の受講が前提とされており、保険会社があらかじめ実施する研修を受けることが受験の要件になっています。

損保・生保募集人の比較表

項目 損害保険募集人 生命保険募集人
実施団体 一般社団法人日本損害保険協会 一般社団法人生命保険協会
試験の呼び方 損保一般試験(基礎単位・商品単位) 一般課程試験(以降、専門課程・応用課程・大学課程)
登録の根拠法令 保険業法第276条ほか(内閣総理大臣の登録・届出) 保険業法第276条ほか(内閣総理大臣の登録)
受験の前提 保険会社の承認を得て代理店登録・募集人届出をする(予定の)者 所属予定の保険会社・代理店による研修の受講
更新・継続教育 単位ごとに5年の更新制 所属会社・代理店による年次の継続教育を毎年履修
個人で任意に受験できるか 不可(自賠責・原子力・海上運送のみ扱う場合を除き所属先の承認が前提) 不可(所属先の研修受講が受験要件)
試験の詳細な出題範囲・最新の受験料・実施スケジュールは変更されることがあるため、受験前に必ず日本損害保険協会および生命保険協会の公式サイトで最新情報を確認してください。

受験料・試験時間・申込方法(2026年10月確認)

ここでは2026年10月9日に両協会の公式ページで確かめた内容をもとに、受験にかかる費用と時間、申込みの方法、登録と更新の決まりをまとめます。試験の構成や称号については上の節を見てください。

試験 試験時間 受験にかかる費用 受験できる日・回数
損保一般試験(基礎単位・商品単位) 各単位40分 税込で1単位2,700円、2単位5,100円、3単位5,600円、4単位6,100円(1回の申込みで受ける単位数による) 月曜〜土曜(年末年始休業期間と祝日を除く)
生保 一般課程試験 40分 受験手数料2,500円+デジタルブック代70円(合計2,570円※) 土日祝日・年末年始を除く希望の日。年間回数の制限の記載なし
生保 専門課程試験 80分 受験手数料2,500円+デジタルブック代160円(合計2,660円※) 土日祝日・年末年始を除く希望の日。年間3回
生保 応用課程試験 80分 受験手数料2,500円+デジタルブック代280円(合計2,780円※) 土日祝日・年末年始を除く希望の日。年間3回

※生保の合計は、生命保険協会が示す令和8年度の受験手数料とデジタルブック代を当サイトで足し合わせた計算です。受験手数料2,500円は令和7年度と同じ額で、デジタルブック代とあわせて申込時に支払います。

損保一般試験の申込みと受験手数料

損保一般試験はCBT方式で、月曜から土曜まで(年末年始休業期間と祝日を除く)受験できます。申込みは試験日の90日前から、日本損害保険協会の「募集人・資格情報システム」で行います。受験手数料は1回の申込みでまとめて受ける単位数によって決まり、単位を増やすほど1単位あたりの負担は軽くなります。たとえば基礎単位と自動車保険単位を一度に申し込めば2単位で5,100円です。

なお損保代理店試験サイトには「受験手数料の改定についてはお知らせ参照」という記載があります。上の金額は2026年10月9日時点の掲載額なので、申込みの前に公式サイトのお知らせで最新の額を確認してください。ほとんどの損害保険会社がこの損保協会の損保一般試験を利用しています。

生保の業界共通試験の申込みと費用

生命保険協会の業界共通試験は2020年4月からCBT方式で実施されています。会場は全国100〜150か所で、試験の運営はプロメトリックに委託されています。毎月通年で実施され、土日祝日と年末年始を除いて希望の日と時間帯を選べます。

代理店に所属する人は、代理店自身がCBT申込みシステムから直接申し込み、受験手数料はCBT委託会社へ直接支払う仕組みです。一般課程試験と変額保険販売資格試験は研修と合格後の登録が、専門課程試験は研修が必要とされています。生命保険募集人になるにはまず一般課程試験に合格する必要があり、その前に生命保険会社の研修を受けておかなければなりません。業界共通試験にはこのほか、外貨建保険販売資格試験も用意されています。

合格点・受験者数・合格率の公表状況

損保一般試験は、どの単位も100点満点中70点が合格基準と公式に示されています。一方で生命保険協会の公開ページとPDFでは、一般課程などの合格点の記載を確認できませんでした。また受験者数・合格者数・合格率は、損保・生保とも公表された数字を公式ページで確認できませんでした。ネット上で見かける合格率の数字は、公式の公表値ではない可能性がある点に注意してください。

登録の根拠と更新・失効の決まり

保険業法第276条は「特定保険募集人(生命保険募集人、損害保険代理店又は少額短期保険募集人(特定少額短期保険募集人を除く。)をいう。)は、この法律の定めるところにより、内閣総理大臣の登録を受けなければならない」と定めています。損害保険代理店は保険会社と代理店委託契約を結んだうえで、代理店の所在地を管轄する財務局に登録します。代理店に所属して保険を販売する人も財務局への届出が必要で、手続きは通常、保険会社を経由して行われます。第302条では、損害保険代理店が役員や使用人に保険募集をさせるときは、その氏名と生年月日を内閣総理大臣に届け出ることになっています。

損保一般試験は単位ごとに5年の更新制です。有効期限は本人が募集人・資格情報システムで管理し、期限までに更新します。基礎単位の有効期間満了日までに合格できなかった場合は、その翌日から保険募集ができなくなります。また保険業務に関して著しく不適当な行為を行った代理店の募集人には、再教育の仕組みとして一定期間内に損保一般試験の再受験などが求められます。生保の側は、生命保険募集人が所属する保険会社や代理店の研修を毎年履修することが義務づけられています。

FPなど他の資格との違い

保険を扱う仕事でよく比較されるのがFP(ファイナンシャル・プランナー)資格です。FPは保険だけでなく、税金・年金・資産運用・不動産など家計全般の知識を証明する国家資格・民間資格であり、保険商品を実際に販売するための法的な許可ではありません。一方で損害保険募集人・生命保険募集人は、保険という商品を販売するために保険業法上必ず必要になる登録要件であり、知識の証明というより「販売行為を行ってよいかどうか」を管理する制度という性格が強い点が異なります。

FPの資格を持っていても、それだけでは保険を販売することはできません。逆に募集人試験に合格して登録していても、税務や資産運用まで含めた総合的な家計相談を行うにはFPなど別の知識が必要になります。保険業界でFPと募集人資格の両方を持つ人が多いのは、この役割の違いによるものです。

同じく「所属先を通じて登録する」という仕組みを持つ資格として証券外務員があります。証券外務員も個人で任意に受験するのではなく、証券会社などに所属したうえで日本証券業協会の試験に合格し、所属会社を通じて登録する仕組みで、募集人資格と似た構造を持っています。金融関連の資格全体の位置づけについては宅建以外にもある金融系資格まとめもあわせて参考にしてください。

取得の流れ(所属先が必要という特徴)

損害保険募集人・生命保険募集人の資格でもっとも間違えやすいのが、個人が思い立って単独で受験できる資格ではないという点です。一般的な流れは次のようになります。

  1. 保険会社や保険代理店に採用される、または業務委託契約を結ぶ
  2. 所属先の保険会社が実施する募集人向けの研修を受講する
  3. 損害保険であれば日本損害保険協会の損保一般試験(基礎単位、必要に応じて商品単位)、生命保険であれば生命保険協会の一般課程試験を受験する
  4. 合格後、所属先を通じて内閣総理大臣への登録(または届出)手続きが行われる
  5. 登録完了後、はじめて保険の募集・販売業務を行える
転職サイトや資格情報サイトの中には「誰でも受験できる」という表現も見られますが、実際には保険会社・代理店に所属(または所属予定)し、その承認や研修受講を経ていることが受験の前提です。保険会社に所属せずに個人が単独で申し込んで受験する制度ではない点に注意してください。

よくある質問

Q1. 損害保険募集人と生命保険募集人は、どちらか一方だけ取ればよいのですか?

扱う保険の種類によって必要な資格が異なります。自動車保険や火災保険など損害保険を扱うなら損害保険募集人、生命保険や医療保険を扱うなら生命保険募集人の資格が必要です。両方の保険を取り扱う代理店で働く場合は、両方の試験に合格し、それぞれ登録する必要があります。

Q2. 保険会社に勤めていなくても受験できますか?

原則として、保険会社や保険代理店に所属している(または所属予定で承認を得ている)ことが受験の前提です。損害保険募集人試験は保険会社の承認を得た人が対象で、生命保険募集人試験も所属予定の保険会社による研修受講が受験要件とされています。個人が趣味や自己啓発として単独で申し込む形の試験ではありません。

Q3. 一度合格すれば資格はずっと有効ですか?

損害保険募集人試験は単位ごとに5年の更新制です。有効期限は本人が「募集人・資格情報システム」で管理して期限までに更新します。基礎単位の有効期間満了日までに合格できなかった場合は、その翌日から保険募集ができなくなるので注意してください。生命保険募集人については、所属する保険会社・代理店が実施する研修を毎年履修する継続教育制度が業界共通の仕組みとして設けられています。具体的な更新手続きや有効期間の扱いは所属先によっても異なるため、所属先の案内や各協会の公式サイトで確認してください。

Q4. 生命保険の「専門課程」「応用課程」は取得したほうがよいのですか?

募集人として登録するために必須なのは一般課程試験への合格です。専門課程(ライフ・コンサルタント)・応用課程(シニア・ライフ・コンサルタント)・生命保険大学課程(トータル・ライフ・コンサルタント)は、必須ではないものの、より専門的な知識を持つ担当者であることを示す称号として位置づけられています。キャリアアップや顧客からの信頼につなげたい場合にステップアップを検討する形になります。

Q5. FPの資格があれば保険募集人の資格は不要ですか?

不要にはなりません。FPは家計全般に関する知識を証明する資格であり、保険商品を販売する法的な許可とは別物です。保険を実際に販売する業務を行うには、FP資格の有無にかかわらず、損害保険募集人・生命保険募集人としての登録が必要です。

Q6. 試験に落ちた場合、保険の仕事に就けませんか?

試験に合格し、所属先を通じて登録(または届出)が完了するまでは、保険の募集・販売業務を行うことはできません。多くの保険会社では、入社後の研修期間中に合格を目指す仕組みが整えられていますが、具体的な運用は各社によって異なるため、就職・転職を検討している場合は応募先の会社に確認するとよいでしょう。

Q7. 損害保険募集人の「商品単位」はすべて取得する必要がありますか?

必須なのは基礎単位への合格で、商品単位(自動車保険・火災保険・傷害疾病保険)は、実際に取り扱う商品に応じて必要な単位を選んで合格する仕組みです。扱わない商品の単位まで無理に取得する必要はありません。

まとめ

損害保険募集人・生命保険募集人は、保険業法にもとづいて保険を販売するすべての人に求められる登録要件であり、個人が任意に取得する民間資格とは性質が異なります。損害保険は日本損害保険協会の損保一般試験(基礎単位・商品単位)、生命保険は生命保険協会の一般課程試験(以降、専門課程・応用課程・大学課程)という形で試験が用意されており、いずれも保険会社・代理店への所属と、所属先を通じた登録手続きが前提になります。保険業界への就職・転職を考えている場合は、資格そのものを先に取得するのではなく、まず保険会社や代理店に所属したうえで、入社後の研修を通じて試験に臨むという流れになる点を押さえておきましょう。

関連して、業務独占資格や必置資格など資格の法的な効力の違いについてはその資格は仕事にどう効くのか?業務独占・必置・名称独占で12資格を比較、更新や失効の仕組み一般については資格の更新制度と失効、知っておきたい注意点、同じく所属先を通じて登録するタイプの資格としては貸金業務取扱主任者とは?設置義務と3年ごとの登録更新もあわせて参考にしてください。

【出典】

・保険業法 第276条(登録)ほか e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/407AC0000000105 (2026年9月15日確認)

・一般社団法人日本損害保険協会「損保代理店試験/損保一般試験」 https://www.sonpo-dairiten.jp/ippan/ (2026年9月15日確認)

・一般社団法人生命保険協会「業界共通試験」 https://www.seiho.or.jp/exam/curriculum/ (2026年9月15日確認)

・一般社団法人生命保険協会「営業職員・代理店の教育制度」 https://www.seiho.or.jp/activity/education/training/ (2026年9月15日確認)

・一般社団法人生命保険協会「継続教育制度について」 https://www.seiho.or.jp/exam/continue/ (2026年9月15日確認)

・一般社団法人日本損害保険協会 損保代理店試験「損保一般試験」 http://www.sonpo-dairiten.jp/ippan/index.html (更新日2026年2月19日、2026年10月9日確認)

・一般社団法人日本損害保険協会 損保代理店試験「損保代理店試験の全体像」 http://www.sonpo-dairiten.jp/zentaizo/index.html (2026年10月9日確認)

・一般社団法人日本損害保険協会 損保代理店試験「募集人・資格情報システム」 http://www.sonpo-dairiten.jp/system/index.html (2026年10月9日確認)

・一般社団法人日本損害保険協会 損保代理店試験サイトFAQ http://www.sonpo-dairiten.jp/faq/ippan/0001.html (2026年10月9日確認)

・一般社団法人日本損害保険協会「損害保険代理店になるには」 https://www.sonpo.or.jp/exam/dairiten/tobe/index.html (2026年10月9日確認)

・一般社団法人生命保険協会「業界共通試験」 https://www.seiho.or.jp/exam/ (2026年10月9日確認)

・一般社団法人生命保険協会「CBT試験」 https://www.seiho.or.jp/exam/cbt/ (2026年10月9日確認)

・一般社団法人生命保険協会「令和8年度 受験手数料」 https://www.seiho.or.jp/exam/cbt/pdf/digitalbook_fee.pdf (令和8年5月、2026年10月9日確認)

・一般社団法人生命保険協会「受験に際しては研修が必要です」 https://www.seiho.or.jp/exam/education/training/ (2026年10月9日確認)

・一般社団法人生命保険協会「継続教育制度」 https://www.seiho.or.jp/exam/continue/ (2026年10月9日確認)

・e-Gov法令検索「保険業法」(第276条・第302条) https://laws.e-gov.go.jp/law/407AC0000000105 (2026年10月9日確認)

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