IT・エンジニア系資格

技術士とは?21部門と二段階試験、実務経験ルートを整理する

技術士は、文部科学省が所管する技術士法に基づいて認定される国家資格である。科学技術に関する高度な専門知識と応用能力を持つ技術者に与えられる資格で、機械や建設、電気電子から情報工学まで21の技術部門に分かれている。合格までに一次試験・二次試験という二段階の試験を突破する必要があり、二次試験では一定の実務経験も求められるため、社会人が数年がかりで取り組む資格として知られている。この記事では、技術士法上の位置づけから試験制度の全体像、21部門の内訳、受験資格、他のIT・エンジニア系資格との違い、キャリアの広がりまでを、日本技術士会など実施団体・所管官庁の一次情報に基づいて整理する。

技術士とは 技術士法に基づく名称独占資格

技術士制度は技術士法(昭和58年法律第25号)に基づく国による資格認定制度である。文部科学省が所管し、試験・登録の実務は文部科学大臣から指定された指定試験機関として公益社団法人日本技術士会が担っている。制度の目的は、科学技術に関する技術的専門知識と高等の専門的応用能力及び豊富な実務経験を有し、公益を確保するため高い技術者倫理を備えた優れた技術者を育成することにあり、有資格者にのみ「技術士」の名称の使用を認めることで、技術士に対する社会の認識と関心を高める仕組みになっている。

技術士は業務独占資格ではなく名称独占資格であり、資格を持たない者が技術士や技術士補の名称を使用した場合は罰則の対象になる。弁護士や税理士のように業務を行うこと自体を有資格者に限定する資格ではなく、名称の使用を制限することで専門性を担保する仕組みである点は、他の国家資格と比較する際に押さえておきたい特徴である。

一次試験・二次試験の二段階構造

技術士第一次試験

一次試験は技術士になるための第一段階の試験で、内容は大学のエンジニアリング課程(工学・農学・理学等)修了程度とされる。受験資格に年齢・学歴・国籍・業務経歴による制限はなく、誰でも受験できる。試験は基礎科目・適性科目・専門科目の3科目からなる択一式の筆記試験で行われる。令和8年度は、受験申込書の配布は令和8年6月5日から24日、受け付けは郵送が6月10日(水)から24日(水)まで、Web申込みは6月10日(水)から23日(火)17時までで、筆記試験は11月22日(日)、合格発表は令和9年2月予定というスケジュールで実施される。受験料は13,000円。

大学その他の教育機関における課程のうち、修了が一次試験の合格と同等であるものとして文部科学大臣が指定した課程(日本技術者教育認定機構=JABEEの認定課程)を修了した場合は、一次試験が免除される。

技術士第二次試験

二次試験は、技術士となるのに必要な技術部門についての専門的学識および高等の専門的応用能力を有するかどうかを判定する試験で、筆記試験と口頭試験の2段階で行われる。口頭試験は筆記試験の合格者のみを対象に実施される。令和8年度は、受験申込書の配布が3月24日から4月15日、受付が4月1日から15日(Webは14日17時まで)、筆記試験が7月19日(総合技術監理部門の必須科目)と7月20日(その他の技術部門など)、筆記試験の合格発表が11月上旬、口頭試験が12月上旬から翌年1月中旬、最終的な合格発表が令和9年3月中旬の予定である。受験手数料は1技術部門につき20,500円(非課税)、第一次試験は13,000円(非課税)である。

第一次試験・第二次試験の合格率

日本技術士会が公表している結果一覧から、直近5年度の数字を並べた。合格率は受験者に対する割合である。

年度 第一次 受験者 第一次 合格者(合格率) 第二次 受験者 第二次 合格者(合格率)
令和3年度 16,977人 5,313人(31.3%) 22,903人 2,659人(11.6%)
令和4年度 17,225人 7,264人(42.2%) 22,489人 2,632人(11.7%)
令和5年度 16,631人 6,601人(39.7%) 22,877人 2,690人(11.8%)
令和6年度 16,666人 6,233人(37.4%) 23,043人 2,395人(10.4%)
令和7年度 17,013人 5,754人(33.8%) 24,135人 2,752人(11.4%)

第一次試験は3〜4割が通るものの、第二次試験は毎年1割強しか合格しない。第二次試験は総合技術監理部門を含む数字で、令和7年度の部門別では建設部門が受験者14,094人・合格率9.3%と最も受験者が多く、情報工学部門は430人中18人(4.2%)、総合技術監理部門は2,575人中584人(22.7%)だった。部門によって合格率の差が大きい点は、部門選びの際に知っておきたい。

一次試験合格または指定教育課程修了の段階では「技術士補となる資格」を得るにとどまり、登録手続きを行って初めて技術士補になる。同様に、二次試験合格者も登録手続きを行うことで技術士となる。

区分 一次試験 二次試験
位置づけ 技術士補となる資格を得るための試験 技術士となる資格を得るための試験
受験資格 制限なし(誰でも受験可能) 技術士補となる資格+一定の実務経験
試験科目・方法 基礎科目・適性科目・専門科目(択一式筆記) 筆記試験+口頭試験(筆記合格者のみ)
筆記試験の時期 11月下旬 7月中旬
合格発表 翌年2月(令和8年度は令和9年2月予定) 筆記11月上旬/最終合格 翌年3月中旬(令和8年度の予定)

21の技術部門

技術士試験は文部科学省令で定める技術部門ごとに実施される。対象となる部門は以下の21部門で、機械や建設といった伝統的な工学分野から、情報工学、経営工学、環境、原子力・放射線まで幅広く分かれている。総合技術監理部門は二次試験のみが実施される部門で、一次試験は当分の間実施されない点が他の20部門と異なる。

No. 技術部門
1 機械部門
2 船舶・海洋部門
3 航空・宇宙部門
4 電気電子部門
5 化学部門
6 繊維部門
7 金属部門
8 資源工学部門
9 建設部門
10 上下水道部門
11 衛生工学部門
12 農業部門
13 森林部門
14 水産部門
15 経営工学部門
16 情報工学部門
17 応用理学部門
18 生物工学部門
19 環境部門
20 原子力・放射線部門
21 総合技術監理部門(二次試験のみ実施)

IT分野に関わる技術者にとって最も関係が深いのは情報工学部門である。経営工学部門も生産管理や情報システムに関わる領域を扱うことがあり、部門を選ぶ際は自分が携わっている業務の実態に近い区分を確認することが基本になる。

受験資格 二次試験の実務経験ルート

二次試験の受験資格を得るには、技術士補となる資格(一次試験合格またはJABEE認定課程修了)を有していることに加えて、次のいずれかの業務経歴(実務経験)を満たす必要がある。日本技術士会が公開している資料では、実務経験のルートは以下の3つに整理されている。

技術士第二次試験の受験資格(実務経験ルート)

  • 技術士補として、技術士の指導の下で4年を超える実務経験(総合技術監理部門は7年を超える実務経験)。技術士補登録後の期間に限る
  • 職務上の監督者の指導の下で4年を超える実務経験(総合技術監理部門は7年を超える実務経験)。一次試験合格後または指定教育課程修了後の期間に限る
  • 指導者・監督者の有無や要件を問わず7年を超える実務経験(総合技術監理部門は10年を超える実務経験)。一次試験合格以前の実務経験も算入できる

いずれのルートでも、一次試験合格や指定教育課程修了だけですぐに二次試験を受験できるわけではなく、数年単位の実務経験の蓄積が前提になる。この実務経験要件は、受験資格に制限を設けない情報処理技術者試験など他のIT系資格と比較したときの大きな違いになる。

技術士を目指す場合、次の点を意識しておくと計画を立てやすい。

  • 自分の専門分野がどの技術部門に該当するかを先に確認する
  • 大学等でJABEE認定課程を修了していれば一次試験が免除されるため、在学中の課程を確認しておく
  • 二次試験の受験資格は実務経験ルートによって必要年数が異なるため、指導技術士や職務上の監督者の有無を早めに確認する
  • 総合技術監理部門は必要な実務経験年数が他部門より長く設定されているため、目指す部門によって計画の立て方が変わる

他のIT・エンジニア系資格との違い

情報工学部門の技術士は、IT分野の国家資格の中でも実務経験を前提とする点が特徴的である。経済産業省所管で独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する情報処理技術者試験とは、所管省庁も法的性格も異なる。基本情報技術者試験やネットワークスペシャリスト試験、データベーススペシャリスト試験、ITストラテジスト試験などは年齢・学歴・実務経験を問わず受験できるが、技術士第二次試験は一定の実務経験を経なければ受験できない。

資格 所管・実施団体 受験資格 位置づけ
技術士(情報工学部門) 文部科学省所管、日本技術士会が試験実施 二次試験は実務経験が必要 名称独占の国家資格、実務経験を経た上位資格
基本情報技術者試験 経済産業省所管、IPAが実施 制限なし ITエンジニアの基礎知識を問う試験
ネットワークスペシャリスト試験 経済産業省所管、IPAが実施 制限なし ネットワーク分野の高度試験
データベーススペシャリスト試験 経済産業省所管、IPAが実施 制限なし データベース分野の高度試験
ITストラテジスト試験 経済産業省所管、IPAが実施 制限なし 経営戦略とIT戦略をつなぐ高度試験

技術士は特定の技術分野における実務経験と応用能力を国が認定する資格であるのに対し、情報処理技術者試験は知識やスキルレベルを段階的に問う体系になっているため、両者は競合するというより、キャリアの異なる段階で組み合わせて活用されることが多い。情報処理技術者試験の高度区分で知識を体系化した技術者が、実務経験を積んだ上で技術士(情報工学部門)を目指すという順序で捉えられることもある。

技術士のうち一定の部門・要件を満たす技術者は、APEC加盟エコノミー間で技術者の移動を円滑にするための「APECエンジニア」や、国際エンジニア協定に基づく「IPEA国際エンジニア」の登録を日本技術士会を通じて申請できる。情報工学部門の技術士もこれらの国際的な相互承認制度の対象に含まれており、技術士資格が国内にとどまらない技術者認証の基盤としても位置づけられている。

働く場所・キャリア

技術士の活躍の場は部門によって幅がある。建設部門・上下水道部門・衛生工学部門などの技術士は建設コンサルタント業界で中心的な役割を担うことが多く、公共工事や建設コンサルタント業務の入札参加資格・管理技術者要件で技術士の資格が条件や評価項目になる場面が多い。官公庁が発注する業務でも、技術士の在籍が事業者選定の評価に関わることがある。

技術士は独立して技術士事務所を開業し、技術指導や設計監理、コンサルティング業務を行う道も開かれている。情報工学部門や経営工学部門の技術士であれば、システム開発の上流工程や情報システムに関するコンサルティング、IT投資の評価といった業務に専門性を生かす例もある。

よくある質問

Q. 技術士に受験資格の制限はあるか

一次試験には年齢・学歴・国籍・業務経歴による制限はなく誰でも受験できる。二次試験は技術士補となる資格に加えて、一定の実務経験を満たす必要がある。

Q. 技術士補とはどのような資格か

一次試験合格者またはJABEE認定課程修了者が登録手続きを行うことで得られる資格で、二次試験を受験するための土台となる位置づけである。技術士とは別の資格として扱われる。

Q. 技術士補として登録しないと二次試験を受けられないか

実務経験のルートによって扱いが異なる。技術士補として登録し指導技術士の下で経験を積むルートのほか、職務上の監督者の指導の下での実務経験、あるいは指導者・監督者の有無を問わない7年を超える実務経験でも二次試験の受験資格を得られる。

Q. 21の技術部門はどれを選べばよいか

自分の専門分野や携わっている業務に最も近い部門を選ぶのが基本である。建設・上下水道など公共インフラに関わる分野では建設部門や上下水道部門、IT分野に関わる場合は情報工学部門が対象になりやすい。

Q. 情報処理技術者試験と技術士はどちらを先に取るべきか

両者は所管省庁も法的性格も異なる別の資格体系である。情報処理技術者試験は実務経験を問わず受験でき知識・スキルを段階的に示せるのに対し、技術士第二次試験は実務経験が前提になる。情報処理技術者試験の高度区分で知識を整理した後、実務経験を積んで技術士(情報工学部門)を目指すという順序で捉える考え方もある。

Q. 総合技術監理部門とはどのような部門か

技術部門を横断して、品質・コスト・納期・安全・環境などを総合的にマネジメントする能力を問う部門で、二次試験のみが実施される。受験に必要な実務経験の年数も他部門より長く設定されている。

Q. 技術士は独立開業できるか

技術士事務所を開業し、技術指導や設計監理、コンサルティング業務を行うことができる。建設コンサルタント業務など、技術士の在籍が入札参加資格や管理技術者要件の条件になる分野もある。

Q. 技術士資格は海外でも通用するか

一定の部門・要件を満たす技術士は、日本技術士会を通じてAPECエンジニアやIPEA国際エンジニアへの登録を申請できる。これらはAPEC加盟エコノミーや国際エンジニア協定加盟エコノミー間で技術者の能力を相互に認め合う仕組みで、情報工学部門の技術士も対象に含まれている。

Q. 技術士は業務独占資格か

技術士は業務独占資格ではなく名称独占資格である。技術士でなければ特定の業務を行えないというものではなく、有資格者以外が「技術士」や「技術士補」の名称を使用することを禁じる仕組みで、違反した場合は罰則の対象になる。

まとめ

技術士は、技術士法に基づき文部科学省が所管する名称独占の国家資格であり、一次試験・二次試験という二段階の試験と、二次試験受験に必要な数年単位の実務経験を経て取得する資格である。21の技術部門に分かれており、建設や機械といった伝統的な工学分野に加えて情報工学部門もその一つに含まれる。実務経験を問わない情報処理技術者試験とは異なり、実務での経験を土台とした上位資格として位置づけられている点を踏まえ、自分のキャリアのどの段階で技術士を目指すかを考えることが大切である。建設コンサルタントや官公庁関連の業務、独立開業まで活躍の場は幅広く、情報工学部門であればITエンジニアとしてのキャリアの延長線上に位置づけることもできる。

この記事の試験情報は、公益社団法人日本技術士会の「令和8年度 技術士第一次試験の実施について」(https://www.engineer.or.jp/c_topics/011/011423.html)を2026年9月28日に確認して整理しました。受験料13,000円、試験日令和8年11月22日(日)、合格発表令和9年2月予定。第二次試験の令和8年度の日程と手数料は「令和8年度技術士第二次試験 実施案内」、第一次・第二次試験の結果は日本技術士会の「技術士第一次試験結果(昭和59年度〜令和7年度)」「技術士第二次試験結果一覧表(昭和33年度〜令和7年度)」「令和7年度技術士第二次試験統計」で2026年10月4日に確認しました。制度や試験の実施内容は変更される場合があるため、受験前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。

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