製造業の工場で環境関連の部署に配属されると、まず名前が挙がるのが公害防止管理者です。工場側に法律上の選任義務があるため、有資格者がいないと操業に支障が出るという点で、企業にとっての必要度が高い国家資格といえます。
一方で、区分が13種類あり、どれを取ればよいのかが分かりにくい資格でもあります。この記事では、選任義務の仕組み、13区分の中身、国家試験と資格認定講習という2つの取得ルート、受験料と科目別合格制度までを、産業環境管理協会と環境省の公表情報にもとづいて整理します。数値は2026年9月時点で確認したものです。
・公害防止管理者は「特定工場」に選任が義務づけられた必置資格であること
・13区分の正式名称と、区分によって担当する公害の種類が変わること
・国家試験のほかに、実務経験者向けの資格認定講習というルートがあること
・受験料は区分によって12,300円と11,600円の2通り、科目別合格は3年間有効であること
「特定工場」に選任義務がある資格
根拠法は、1971年(昭和46年)に制定された「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」です。製造業、電気供給業、ガス供給業、熱供給業に属する工場のうち、ばい煙発生施設など定められた種類の施設を持つものが特定工場にあたり、施設の区分ごとに公害防止管理者を選任しなければなりません。
つまりこの資格も、個人が名乗るためではなく、事業所が法令を満たすために必要とする人材要件という性格を持ちます。必置資格の考え方はその資格は仕事にどう効くのか?業務独占・必置・名称独占で12資格を比較で整理しました。
選任されるのは公害防止管理者だけではありません。工場全体を統括する公害防止統括者、技術的事項を管理する公害防止主任管理者、それぞれの代理者という形で、組織として体制を組むことが求められています。
13の区分がある
2006年度に騒音関係と振動関係が統合され、現在は13区分です。担当できる施設の範囲が区分ごとに決まっており、工場が持っている施設に合った区分の有資格者でなければ選任できません。
| 系統 | 区分 | おおまかな守備範囲 |
|---|---|---|
| 大気関係 | 大気関係第1種公害防止管理者 | 排出ガス量が多く、有害物質を排出する施設 |
| 大気関係第2種公害防止管理者 | 排出ガス量が少なく、有害物質を排出する施設 | |
| 大気関係第3種公害防止管理者 | 排出ガス量が多く、有害物質を排出しない施設 | |
| 大気関係第4種公害防止管理者 | 排出ガス量が少なく、有害物質を排出しない施設 | |
| 水質関係 | 水質関係第1種公害防止管理者 | 排出水量が多く、有害物質を含む排水の施設 |
| 水質関係第2種公害防止管理者 | 排出水量が少なく、有害物質を含む排水の施設 | |
| 水質関係第3種公害防止管理者 | 排出水量が多く、有害物質を含まない排水の施設 | |
| 水質関係第4種公害防止管理者 | 排出水量が少なく、有害物質を含まない排水の施設 | |
| 粉じん関係 | 特定粉じん関係/一般粉じん関係 | 石綿等の特定粉じん、および一般粉じんの発生施設 |
| 騒音・振動 | 騒音・振動関係公害防止管理者 | 騒音発生施設と振動発生施設(2006年度に統合) |
| ダイオキシン類 | ダイオキシン類関係公害防止管理者 | ダイオキシン類発生施設 |
| 主任 | 公害防止主任管理者 | 大気と水質の両方にまたがる技術的事項の管理 |
資格を得る2つの方法
| ルート | 要件 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 国家試験に合格する | 受験資格なし。年1回の試験で、区分ごとの科目に合格する | 実務経験がない人、学生、これから配属される人 |
| 資格認定講習を修了する | 技術士等の資格、または学歴と実務経験の要件を満たしたうえで講習を受け、修了試験に合格する | すでに現場で相当年数の実務経験がある人 |
見落とされやすいのが2つ目です。政令で定める資格(技術士などの資格、あるいは学歴と実務経験の組み合わせ)を満たす人は、国家試験を受けずに講習ルートで資格を得られます。自分が講習の対象になるかどうかを先に確認したほうが、遠回りを避けられます。技術士については技術士とは?21部門と二段階試験、実務経験ルートを整理するで扱っています。
国家試験の受験料と日程
試験は年1回、10月の実施です。2026年度(令和8年度)は10月4日に行われ、インターネット申込の受付は7月1日9時から7月31日17時まででした。
| 受験料 | 対象区分 |
|---|---|
| 12,300円 | 大気関係第1種・第3種、水質関係第1種・第3種、ダイオキシン類関係、公害防止主任管理者 |
| 11,600円 | 大気関係第2種・第4種、水質関係第2種・第4種、騒音・振動関係、特定粉じん関係、一般粉じん関係 |
上位区分のほうが700円高い設定です。受験資格の制限はなく、学歴や実務経験がなくても受験できます。受験資格の有無という論点は「受験資格なし」はどこまで本当か 150記事を横断して分かった資格の入口4類型でも整理しました。
科目別合格制度を使えば分割できる
この資格の学習設計で最も重要なのが科目別合格制度です。区分のすべての科目に合格すれば区分合格ですが、一部の科目だけ合格した場合も科目合格として記録され、合格した年度を含めて3年間、その科目の受験が免除されます。
免除を受けるには、出願時に「試験結果通知」や「科目合格のおしらせ」に印字された10桁の管理番号を願書に記載します。途中の年度に出願しなかったとしても、3年の期間内であれば免除の効力は消えません。
大気関係第1種や水質関係第1種は科目数が多く、1年で全科目を通すのは負担が大きくなります。2年計画、3年計画で科目を分けて攻める人が多いのはこのためです。免除制度の使い方という観点では使わないと損する試験免除の制度 149記事を横断して分かった3つの型もあわせてどうぞ。
どの区分から取るべきか
基本は、勤務先(または志望先)の工場が持っている施設に合わせることです。そのうえで一般的な考え方を挙げると、次のようになります。
- 製造業全般で需要が広いのは水質関係と大気関係。まずどちらかを選ぶ
- 上位区分(第1種)は下位をカバーするため、長期的には第1種を目指す価値がある
- ただし第1種は科目数が多い。初挑戦なら第4種や第2種で合格体験を作る選択もある
- 騒音・振動関係、粉じん関係は対象施設が限られ、需要は工場の業種に強く依存する
合格率は区分と年度によって幅があります。産業環境管理協会(公害防止管理者試験センター)が公表している令和7年度の結果と、直近の推移は次のとおりです。
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和3年度(第51回) | 19,946人 | 5,774人 | 28.9% |
| 令和4年度(第52回) | 20,456人 | 5,179人 | 25.3% |
| 令和5年度(第53回) | 20,494人 | 4,843人 | 23.6% |
| 令和6年度(第54回) | 20,263人 | 5,244人 | 25.9% |
| 令和7年度(第55回) | 19,845人 | 7,175人 | 36.2% |
令和7年度は合格者が前年度より1,931人増え、合格率も10.3ポイント上がりました。区分別では、受験者の多い水質関係第1種が6,041人中2,821人(46.7%)、大気関係第1種が4,064人中1,396人(34.4%)、ダイオキシン類関係が57.8%、大気関係第3種が21.3%などです。
似た資格との違い
工場の管理系資格はいくつもあり、守備範囲が重なって見えます。整理すると次のようになります。
| 資格 | 守る対象 | 根拠法 |
|---|---|---|
| 公害防止管理者 | 工場の外の環境(大気・水質・騒音振動・粉じん) | 特定工場における公害防止組織の整備に関する法律 |
| エネルギー管理士 | 工場のエネルギー使用の合理化 | 省エネ法 |
| 作業環境測定士 | 工場の中で働く人の作業環境 | 作業環境測定法 |
| 衛生管理者 | 事業場の労働衛生全般 | 労働安全衛生法 |
公害防止管理者は敷地の外に出ていくものを、作業環境測定士と衛生管理者は敷地の中で働く人を、エネルギー管理士は使うエネルギーを見る資格です。工場では複数がセットで求められることも多く、組み合わせの考え方はダブルライセンスで効く資格の組み合わせ 相性がよくなる5つの型、個別の制度は作業環境測定士とは?第1種・第2種の違いと対象作業場、取得ルートを解説と衛生管理者とは?第一種と第二種の違い、受験資格の実務経験まで解説で扱っています。
よくある質問
受験資格はありますか。
国家試験に受験資格の制限はありません。学歴・年齢・実務経験を問わず受験できます。一方、資格認定講習のルートには、技術士等の資格または学歴と実務経験の要件があります。
どの区分が一番人気ですか。
水質関係と大気関係の受験者が多い傾向にあります。対象となる施設を持つ工場が多いためです。ただし選ぶ基準は人気ではなく、自分が関わる工場の施設に合っているかどうかです。
第1種を取れば第2種の仕事もできますか。
できます。第1種は第2種の範囲を含み、第3種は第4種の範囲を含む関係になっています。
試験は年に何回ありますか。
年1回、10月の実施です。申込は7月の1か月間に限られます。
一度落ちた科目はやり直しですか。
合格した科目は、合格した年度を含めて3年間免除されます。出願時に管理番号を記載することで適用され、途中の年度に出願しなかった場合でも効力は続きます。
更新は必要ですか。
資格そのものに更新制度はありません。ただし選任された公害防止管理者には、法令や技術の変化に対応するための研修が実務上求められる場面があります。
実務経験がなくても就職に役立ちますか。
選任義務があるため、工場を持つ企業では評価されやすい資格です。ただし配属される部署や施設によって必要な区分が変わるため、取得後に「この区分では足りない」となることもあります。志望先の業種を意識して区分を選んでください。
まとめ
公害防止管理者は、特定工場における公害防止組織の整備に関する法律にもとづく必置資格です。製造業・電気供給業・ガス供給業・熱供給業の工場のうち、定められた施設を持つものが対象で、施設の区分ごとに選任が義務づけられています。
区分は大気関係4種、水質関係4種、特定粉じん、一般粉じん、騒音・振動関係、ダイオキシン類関係、公害防止主任管理者の13種類。第1種は第2種を、第3種は第4種を含む関係です。取得ルートは年1回の国家試験と、実務経験者向けの資格認定講習の2つがあります。
国家試験の受験料は区分により12,300円または11,600円で、受験資格の制限はありません。合格した科目は3年間免除されるため、科目数の多い第1種を複数年に分けて攻める設計が現実的です。試験日と申込期間は年度ごとに変わるので、産業環境管理協会の公表情報で最新の日程を確認してください。
合格率と区分別・科目別の結果は、公害防止管理者試験センター「令和7年度公害防止管理者等国家試験結果」(令和7年12月15日)で2026年10月4日に確認しました。この記事の集計方針や出典の扱いについては、運営者情報ページにまとめています。