工事担任者は、光回線やLAN、電話設備などの「端末設備」を通信事業者のネットワークにつなぐ工事を行う、または実地に監督するための国家資格です。試験は日本データ通信協会の電気通信国家試験センターが実施しており、種別によって方式が異なります。第一級アナログ通信・第一級デジタル通信・総合通信は年2回の筆記(マークシート)、第二級アナログ通信・第二級デジタル通信はCBT方式で通年受験できます。この記事では、公式の公示と総務省のQ&Aをもとに、資格の必要性、5つの種別の違い、試験の仕組み、そして受験料が「科目数によらず一定」であることを踏まえた費用の考え方を整理しました。
この記事の要点
- 資格の種別は第一級/第二級アナログ通信、第一級/第二級デジタル通信、総合通信の5つ。第二級デジタル通信は、1Gbps以下のインターネット接続の工事が範囲
- 試験科目は「電気通信技術の基礎」「端末設備の接続のための技術及び理論」「端末設備の接続に関する法規」の3つ。各科目100点満点で60点以上が合格
- 第二級はCBTで通年・9,800円、第一級と総合通信は年2回の筆記試験で14,600円。どちらも受験科目数によらず同額
- 受験資格はなく、科目合格は3年間有効。資格者証に有効期限や更新はない
工事担任者とは
総務省のQ&Aによると、利用者が自分の端末設備を電気通信事業者のネットワークに接続するときは、工事担任者に接続の工事を行わせるか、実地に監督させることが電気通信事業法第71条第1項で義務づけられています。端末機器そのものが技術基準に適合していても、接続の仕方を誤ったり配線が不備だったりすると、結果として基準を満たさなくなるためです。
職務は主に3つで、「工事の実施または実地の監督」「端末設備の機能確認試験等」「責任分界点での技術基準適合性の確認」とされています。実地に監督するとは、自分で工事をしなくても、現場で従事者を指揮・指示して工事の責任を負うことを指します。
資格が必要な工事と、不要な場合
同じQ&Aで、資格が不要な場合も示されています。技術基準に適合した端末機器(技適マークが付いたもの)を、プラグジャック方式などで接続するだけなら、一般の利用者が行っても構いません。工事担任者が要らない接続方式として、次の4つが告示で定められています。
- プラグジャック方式
- アダプタ式ジャック方式
- 音響結合方式
- 電波により接続する方式
一方、責任分界点からプラグジャックの接続口まで配線する場合や、接続口を移設する場合、オフィスビル内の規模の大きい端末設備や自営電気通信設備を接続する場合などは、工事担任者が必要です。運用中のルータの下位にパソコンを増設するような作業は不要とされており、「ネットワーク関連の仕事なら全員が必要」という資格ではありません。配線工事や大規模な設備の導入を請け負う立場かどうかが分かれ目になります。
5つの種別と工事の範囲
| 種別 | 工事の範囲(電気通信国家試験センターの説明) | 試験方式 |
|---|---|---|
| 第一級アナログ通信 | アナログ伝送路設備およびISDN用設備への接続工事 | 定期試験(筆記) |
| 第二級アナログ通信 | アナログ伝送路設備に端末設備を接続する工事(回線数に制限あり) | CBT |
| 第一級デジタル通信 | デジタル伝送路設備への接続工事(ISDN設備を除く) | 定期試験(筆記) |
| 第二級デジタル通信 | デジタル信号の入出力速度が毎秒1ギガビット以下のインターネット接続の工事 | CBT |
| 総合通信 | アナログ・デジタル両方の伝送路設備への接続工事 | 定期試験(筆記) |
1Gbps級の光回線サービスが増えたことから、2013年2月の規則改正で、旧DD第二種・第三種(現在の第二級デジタル通信)でも1Gbps以下のインターネットサービスへの接続工事ができるようになりました。家庭向けや小規模オフィスの光回線が中心なら、第二級デジタル通信で範囲に入ります。
なお、2021年4月の規則改正より前に取得した資格は、そのまま有効です。AI第一種は第一級アナログ通信、AI第三種は第二級アナログ通信、DD第一種は第一級デジタル通信、DD第三種は第二級デジタル通信、AI・DD総合種は総合通信の資格者とみなされ、新しい資格者証への交換は要りません。
試験科目・合格基準・試験時間
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験科目 | 電気通信技術の基礎 / 端末設備の接続のための技術及び理論 / 端末設備の接続に関する法規 |
| 出題方式 | 択一式(定期試験はマークシート) |
| 合格基準 | 各科目100点満点で60点以上(配点は各設問の末尾に記載) |
| 試験時間 | 1科目40分。定期試験の総合通信の「端末設備の接続のための技術及び理論」のみ80分 |
| 受験資格 | なし(学歴・年齢・経験年数を問わない) |
| 科目合格 | 合格した試験の翌月初めから3年間有効 |
合格点は科目ごとに判定され、3科目すべてで60点に達して初めて資格の取得となります。1科目でも届かなければ、その科目だけを次回以降に持ち越せます。
令和8年度の日程と受験料
| 項目 | 定期試験(第一級・総合通信) | CBT方式(第二級) |
|---|---|---|
| 試験日 | 第1回 2026年5月24日 / 第2回 11月22日 | 2026年4月1日〜2027年3月31日の通年(年末年始を除く) |
| 申請期間 | 第1回 2月1日〜25日 / 第2回 8月1日〜21日 | 通年24時間 |
| 受験料(非課税) | 14,600円(全科目免除は9,400円) | 9,800円(第二級の全科目免除は6,300円) |
| 結果発表 | 第2回は2026年12月14日 | 受験日の翌月10日 |
| 申請後の支払い | 申請後3日以内。期限を過ぎると申請が取り消され、払い込み後のキャンセルはできない | |
この記事を書いている2026年9月25日の時点では、令和8年度第2回の定期試験の申請期間(8月21日まで)はすでに終わっています。第一級や総合通信を目指す場合の次の機会は令和9年度の第1回で、日程は例年12月に出る公示で確認する形になります。第二級はCBTのため、いつでも申請できます。CBTは、確認票の発行から90日以内に受験する決まりです。
受験料が科目数に関係しないと、どう考えるか
公示では、定期試験の受験料は「受験科目数によらず均一料金」、CBTは「1試験種別当たり9,800円」とされています。ここから、当サイトで費用を試算しました。
| 受験の進め方 | 第二級(CBT)の受験料 | 総合通信(定期)の受験料 | かかる期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 3科目を1回で受ける | 9,800円 | 14,600円 | 1回 |
| 2回に分ける(2科目+1科目) | 19,600円 | 29,200円 | CBTは任意、定期は半年以上 |
| 3回に分ける(1科目ずつ) | 29,400円 | 43,800円 | CBTは任意、定期は1年以上 |
この試算は、すべての回で不合格がなかった場合の最小額で、再受験が入るとさらに増えます。
合格率の推移(電気通信国家試験センターの統計)
統計情報ページで公開されている推移表(PDF)を確認すると、定期試験(筆記)とCBTで合格率に大きな差があります。
| 回 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和6年度 第1回(定期) | 3,671人 | 952人 | 25.9% |
| 令和6年度 第2回(定期) | 4,063人 | 990人 | 24.4% |
| 令和7年度 第1回(定期) | 3,013人 | 794人 | 26.4% |
| 令和7年度 第2回(定期) | 3,539人 | 894人 | 25.3% |
| 令和8年度 第1回(定期) | 3,041人 | 691人 | 22.7% |
| 令和7年度 CBT上期 | 1,593人 | 864人 | 54.2% |
| 令和7年度 CBT下期 | 2,397人 | 1,202人 | 50.1% |
第二級を受けるCBTは5割強が合格するのに対し、第一級と総合通信を受ける定期試験は2割台にとどまります。令和8年度第1回の種別ごとでは、第一級アナログ通信が194人中73人(37.6%)、第一級デジタル通信が653人中157人(24.0%)、総合通信が2,167人中434人(20.0%)でした。定期試験の申請者は令和3年度第1回の14,584人から令和8年度第1回の3,851人まで減っています(第二級がCBTに移ったことを含む数字)。
費用だけを見れば、1回の申請でなるべく多くの科目に合格するのが最も安くなります。ただし、それは実力が足りているときの話で、3科目とも半端な状態で受けて全滅すると、次の申請でまた同額がかかります。分割にするか一括にするかは、学習に使える時間と、追加の受験料を天秤にかけて決めるのが現実的です。定期試験は年2回しかないため、分割すると資格の取得までの期間が長くなる点にも注意が必要です。
科目免除と、資格を積み上げるルート
電気通信国家試験センターの案内では、次の条件で科目が免除されます。免除の可否は種別ごとに異なり、申請システムで免除コードが自動入力されます。
| 免除の根拠 | 総合通信での扱い(センターの免除科目表) |
|---|---|
| 第一級アナログ通信または第一級デジタル通信の資格者 | 「電気通信技術の基礎」が免除 |
| 電気通信主任技術者の資格者 | 「技術及び理論」と「法規」が免除 |
| 接続工事の実務経歴 | 1年以上で基礎、2年以上で基礎と技術及び理論が免除(条件によりさらに3年以上で複数科目) |
| 認定学校の修了者 | 「基礎」が免除(修了証明書を申請期間内に提出) |
| 科目合格者 | 合格した科目が免除 |
この表から、次の2つのルートが読み取れます。
- 第二級デジタル通信(CBT)で取り始め、経験を積んだあと、総合通信へ進む。科目合格や実務経歴で免除を使えば、総合通信の受験科目を減らせる
- 電気通信設備の運用に関わり、電気通信主任技術者を取得したうえで、総合通信を受ける。免除により、受験科目が「基礎」だけになる可能性がある
実務経歴による免除には経歴証明書の提出が必要で、勤務先の証明が要ります。どの経歴が対象になるかは種別・年数ごとに細かく決まっているため、申請前に必ず最新の受験の手引きで確認してください。
向いている人・向いていない人
向いているのは、通信工事会社、ネットワーク構築の現場、ビル設備や防災設備などで、端末設備の接続工事に関わっている人です。総務省のQ&Aにあるとおり、責任分界点からの配線やオフィスビルでの設備接続は、この資格を持つ人が実施または監督する立場になります。
向いていないのは、社内ネットワークの設定やクラウド構築がおもな仕事で、通信事業者の回線に自分で工事をする場面がない人です。運用中の設備の設定変更や、ルータの下位にパソコンを増設する作業には資格は要らないため、その場合はネットワークスペシャリスト試験やCCNAとLPICの比較のほうが目的に合うことがあります。
失敗しやすいパターン
- 申請後3日以内の支払いを忘れる ── 期限を過ぎると申請が取り消されます。定期試験の受付は3週間ほどしかなく、やり直しがききません
- 種別を変えられると思い込む ── 定期試験とCBT方式のあいだで、試験種別を変更することはできません。最初に方式と種別を決める必要があります
- CBTの確認票を放置する ── 確認票が発行されてから90日以内に受験しないと、手数料を払ったのに受けられなくなります
- 科目合格の期限を数え間違える ── 有効期間は、合格した月の翌月初めから起算して3年間です。定期試験は3年以内の最後の申請受付期限まで、CBTは有効期間の最終日の30日前までに申請する必要があります
- 合格しただけで取得したと考える ── 合格後に、資格者証の交付を総務省(各都道府県の総合通信局)へ別途申請する手続きが要ります
合格後のこと
総務省の案内によると、工事担任者の資格者証には有効期限がなく、更新の義務もありません。ただし規則には、知識と技術の向上に努めることが努力義務として定められており、総務省のQ&Aも、自習や民間の研修による自己研鑽が必要としています。工事を行うときには、依頼主から提示を求められることがあるため、資格者証の携帯が推奨されています。
よくある質問
Q1. 受験資格はありますか?
ありません。学歴・年齢・性別・経験年数にかかわらず、誰でも受験できます。
Q2. 第二級デジタル通信と第一級デジタル通信の違いは何ですか?
第二級は、入出力速度が毎秒1ギガビット以下のインターネット接続が範囲で、CBTで受験します。第一級は、デジタル伝送路設備への接続工事(ISDN設備を除く)が範囲で、定期試験(筆記)で受験します。
Q3. 総合通信は何が取れる資格ですか?
アナログ・デジタル両方の伝送路設備への接続工事ができる、最上位の種別です。試験科目は他の種別と同じ3科目ですが、「端末設備の接続のための技術及び理論」の試験時間だけが80分と長くなっています。
Q4. 3科目を同時に受けなければいけませんか?
いいえ。科目ごとに受験を分けることができ、合格した科目は3年間持ち越せます。ただし、受験料は科目数によらず一回ごとにかかるため、分割すると総額が増えます。
Q5. 受験料は科目免除があると安くなりますか?
全科目が免除される場合だけ、金額が下がります。第一級と総合通信は9,400円、第二級は6,300円です。一部の科目だけが免除される場合は、通常の受験料がかかります。
Q6. CBTはいつでも受けられますか?
年末年始を除く通年で実施されています。申請は24時間できますが、試験会場と日時は申請者が選ぶ形で、確認票の発行日から90日以内に受験します。結果は受験日の翌月10日に、マイページで確認できます。
Q7. 過去問はどこで見られますか?
電気通信国家試験センターの「試験問題・正答」のページに、第一級・第二級・総合通信の各種別の問題と正答が公開されています。受験などに使うなら、ダウンロード・印刷でき、著作権表示が必要です。
Q8. 電気通信主任技術者との違いは何ですか?
電気通信主任技術者は、電気通信事業者が事業用の設備を維持するための監督者です。工事担任者は、利用者側の端末設備を事業用ネットワークに接続する工事を担う資格です。同じ日本データ通信協会が実施しますが、対象の設備も選任の仕組みも異なります。
まとめ
この試験を検討するときの要点
- 端末設備の接続工事を実施または監督する資格。プラグジャックで接続するだけの作業などには不要
- 種別は5つ。第二級はCBTで通年・9,800円、第一級と総合通信は年2回・14,600円
- 各科目60点以上で合格。受験料は科目数によらず一定のため、分割すると総額が増える
- 実務経歴や他の資格で科目免除を使える。資格者証に有効期限はない
日程・受験料・免除条件は年度ごとに公示されるため、申請の前に必ず電気通信国家試験センターの最新情報を確認してください。この記事は一般的な情報整理であり、資格取得や個別の工事の可否についての助言ではありません。
この記事の集計方針や出典の扱いについては、運営者情報ページにまとめています。
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出典
- 一般財団法人日本データ通信協会 電気通信国家試験センター「電気通信の工事担任者とは」「受験案内(受験の手引き)」「CBT方式による試験」「Q&A」「免除科目 総合通信」(https://www.dekyo.or.jp/shiken/charge/、2026年9月25日確認)
- 同「令和8年度工事担任者定期試験の公示」「令和8年度CBT方式による工事担任者試験の公示」(2025年12月1日公示)
- 総務省「工事担任者資格制度Q&A」(https://www.soumu.go.jp/main_content/000829038.pdf)、電気通信事業法第71条第1項、工事担任者規則
- 受験料の総額試算は、上記公示の金額から当サイトで計算
- 同「統計情報」の全体の推移表・試験種別毎推移表(PDF、2026年10月4日確認)