情報セキュリティの資格を調べると、情報セキュリティマネジメント試験と情報処理安全確保支援士試験の2つが出てきます。どちらも情報処理技術者試験の枠組みにありますが、対象とする人がまったく違います。前者は情報を使う側と管理する側、後者は守る技術を担う専門家のための試験です。難しさも大きく違い、令和7年度の合格率は情報セキュリティマネジメント試験が70.0%、情報処理安全確保支援士試験が20.7%でした。この記事では、2つの違いと合格率の推移、自分がどちらを選ぶべきかの判断材料を整理します。
ひと目で分かる違い
| 項目 | 情報セキュリティマネジメント試験 | 情報処理安全確保支援士試験 |
|---|---|---|
| レベル | レベル2 | レベル4(高度区分) |
| 想定する立場 | 情報システムを利用・管理する部門の担当者 | セキュリティを設計・実装・運用する技術者 |
| 実施方式 | CBT方式で通年実施 | 年2回の筆記試験 |
| 出題 | 多肢選択式 | 多肢選択式に加えて記述式 |
| 合格後 | 合格証書が交付される | 登録すると「情報処理安全確保支援士」を名乗れる |
| 更新 | 不要 | 登録した場合は講習の受講義務がある |
情報セキュリティマネジメント試験はどんな試験か
この試験が対象にしているのは、セキュリティの専門家ではありません。部署で情報を扱う人、社内のルールを作る人、管理する立場の人です。
出題は、情報セキュリティの基本的な考え方、組織としての対策、法令や制度、そして日常業務で起こりうる場面への対応などが中心になります。技術の細部を問うより、リスクをどう捉えて何を判断するかという視点が問われます。
大きな特徴が実施方式です。CBT方式で通年実施されているため、自分の都合に合わせて受験日を選べます。年に1回や2回しか機会がない高度区分とは、計画の立て方が根本的に違います。準備が整った時点で申し込めるため、学習が中断しにくいという利点があります。
ITパスポートの次のステップとして選ばれることも多い区分です。ITパスポートがIT全般の基礎を扱うのに対し、こちらはセキュリティに焦点を絞っています。
情報処理安全確保支援士試験はどんな試験か
こちらはレベル4の高度区分で、セキュリティを技術として担う人が対象です。支援士の制度そのものは別の記事で扱っていますが、試験としての性格を整理すると次のようになります。
- 午前Iは高度区分に共通する広い範囲、午前IIはセキュリティの専門知識
- 午後は記述式で、実際のシステム構成や運用の事例をもとに、脆弱性や対策を答える
- 暗号、認証、ネットワークの防御、インシデント対応、セキュアな開発など、技術の内容に踏み込む
午前Iには免除制度があり、応用情報技術者試験の合格や、高度区分の午前Iで基準点を超えることで得られます。この免除には有効期間があるため、権利が生きているうちに合格を目指す計画が有利です。
また、支援士試験に合格すると、他の高度区分を受けるときの午前Iも免除されます。ネットワークスペシャリストやデータベーススペシャリストへ進む足がかりにもなります。
合格率で比べる2つの試験
IPAの統計資料(令和7年度 推移表)から、直近5年度の結果を並べました(支援士は春期・秋期の合計)。
| 年度 | マネジメント 受験者 | マネジメント 合格率 | 支援士 受験者 | 支援士 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 令和3年度 | 28,827人 | 53.2% | 22,582人 | 20.7% |
| 令和4年度 | 28,551人 | 56.2% | 24,278人 | 20.2% |
| 令和5年度 | 36,362人 | 72.6% | 27,110人 | 20.9% |
| 令和6年度 | 41,657人 | 69.0% | 31,666人 | 17.0% |
| 令和7年度 | 45,924人 | 70.0% | 35,342人 | 20.7% |
情報セキュリティマネジメント試験は令和5年度以降、7割前後が合格しています。支援士試験はほぼ毎年2割前後で、合格のしやすさには3倍以上の開きがあります。受験者は両試験とも増える傾向にあり、マネジメント試験は4年で約1.6倍になりました(当サイト計算)。合格基準は、マネジメント試験が1,000点満点の総合評価点で600点以上、支援士試験が科目A-1・A-2・Bの各科目100点満点で60点以上です。
合格しただけでは支援士を名乗れない
ここが支援士のもう一つの特徴です。
試験に合格した時点では「情報処理安全確保支援士試験の合格者」であり、情報処理安全確保支援士を名乗るには登録が必要です。登録には手数料がかかり、登録後は講習を受け続ける義務が生じます。オンラインの講習を毎年、加えて数年に一度の実践的な講習を受ける仕組みです。
どちらを選ぶべきか
| こんな人 | 向いている試験 |
|---|---|
| 総務・人事・経理などでルールや運用を管理している | 情報セキュリティマネジメント試験 |
| 営業や企画で顧客の情報を扱う | 情報セキュリティマネジメント試験 |
| 社内のセキュリティ教育や規程づくりを担当している | 情報セキュリティマネジメント試験 |
| インフラやアプリの構築でセキュリティ設計に関わる | 情報処理安全確保支援士試験 |
| インシデント対応や脆弱性診断に携わる | 情報処理安全確保支援士試験 |
| セキュリティ専業のポジションを目指す | 情報処理安全確保支援士試験 |
迷ったときの判断基準はシンプルです。技術を自分の手で実装・診断する立場かどうかです。そうでないなら、マネジメント試験のほうが実務に直結します。
順番に取るのも自然な流れです。マネジメント試験で全体像をつかんでから、必要になった段階で支援士に進む人もいます。ただし難易度の差は大きく、間に応用情報を挟むほうが現実的な場合が多くなります。
それぞれの学習の進め方
情報セキュリティマネジメント試験
市販のテキストを1冊通して読み、過去問と演習問題を繰り返すのが基本になります。出題には、社内で起きた出来事にどう対応するかを問う場面設定の問題が含まれます。用語を覚えるだけでなく、その場面で何を優先すべきかを判断する練習が必要です。個人情報保護法やサイバーセキュリティ基本法など、法令に関する出題もあるため、制度の枠組みは押さえておいてください。
CBTで通年受験できるため、学習を始めた時点で目標日を決め、そこに向けて進める形が取りやすくなっています。日程が固定されていないぶん、自分で締め切りを設定しないと先延ばしになりやすい点だけ注意してください。
情報処理安全確保支援士試験
午前IIまでは知識のインプットで対応できますが、午後は事例問題です。実際のネットワーク構成やアプリケーションの仕様が示され、そこに潜む問題点と対策を答えます。攻撃の手口と防御の仕組みを、理由まで含めて説明できる状態が必要です。
ネットワークの基礎知識が前提になる設問が多いため、そこに不安がある場合は先に補強したほうが進みが早くなります。年2回の実施であることを活かし、1回目で午前Iの基準を超えて免除を確保し、2回目以降で午後に集中するという組み立ても有効です。
企業から見た評価のされ方
- マネジメント試験は、部門横断でセキュリティ意識を底上げする目的で、受験を推奨する企業がある
- 支援士は、情報セキュリティの体制を示す必要がある案件で、有資格者の在籍が求められることがある
- IT企業では、どちらも資格手当や一時金の対象になっている場合がある
- 公共の調達では、体制表に高度区分の有資格者を記載する場面がある
資格そのものより、その資格で何を任されるようになるかで価値が決まります。マネジメント試験は社内の役割につながり、支援士は技術的な責任範囲につながります。
2026年末からの試験休止に注意
この試験を含むCBT方式の区分(ITパスポート試験・情報セキュリティマネジメント試験・基本情報技術者試験)は、システム更新のため2026年12月28日以降、実施が一時休止されるとIPAが公表しています。もともと2026年4月27日以降に予定されていた休止が延期されたもので、会場によっては12月27日より前に受験できなくなる場合があります。2027年1月以降の実施については、2026年秋ごろにIPAのウェブページで案内される予定とされています。
通年で受けられることを前提に「準備ができてから申し込もう」と考えていると、休止期間に重なって数か月動けなくなります。受験を考えているなら、学習計画を立てる前に受験できる時期を確認してください。最新の日程はIPAの公式サイトで告知されます。
よくある質問
受験資格はありますか。
どちらもありません。年齢・学歴・実務経験を問わず受験できます。
情報セキュリティマネジメント試験はいつ受けられますか。
CBT方式で通年実施されています。会場と日時を選んで申し込む形式のため、学習の進み具合に合わせて受験日を決められます。
支援士試験は年に何回ありますか。
年2回実施されます。他の高度区分の多くが年1回であるのに対し、受験機会が多い区分です。
支援士に登録しないとどうなりますか。
「情報処理安全確保支援士」という名称は使えません。試験に合格した事実は残るため、合格者として実績を示すことはできます。
支援士の登録には費用がかかりますか。
登録の手数料に加え、登録後の講習にも費用がかかります。継続的な負担になるため、登録前に総額を確認してください。
マネジメント試験は技術の知識がなくても受かりますか。
技術の詳細まで問われるわけではありませんが、用語や仕組みの理解は必要です。IT業務の経験がない場合は、ITパスポートの範囲から入ると進めやすくなります。
両方取る意味はありますか。
支援士に合格できる人であれば、マネジメント試験の内容はほぼ包含されます。両方を目指すより、立場に合うほうを選ぶのが効率的です。
まとめ
情報セキュリティマネジメント試験と情報処理安全確保支援士試験は、名前が近くても対象がまったく違います。前者は情報を扱い管理する立場のための試験でCBTにより通年受験でき、後者はセキュリティを技術として担う専門家のための高度区分です。
選ぶ基準は、自分がセキュリティを実装・診断する側かどうかです。そうでなければ、マネジメント試験のほうが業務に結びつきます。
支援士を目指す場合は、合格と登録が別であること、登録すると講習の義務が続くことを先に理解しておいてください。名称を使う必要があるかどうかで、登録の判断が変わります。
この記事の試験制度に関する内容は、情報処理推進機構(IPA)が公開している情報処理技術者試験および情報処理安全確保支援士試験の案内をもとに2026年9月に整理したものです。実施方式・登録や講習の要件は変更される場合があるため、受験や登録の前に必ず公式の最新情報を確認してください。合格率は令和7年度の統計資料(推移表、令和8年4月21日現在)、合格基準は試験要綱Ver.5.6、支援士試験の令和8年度の日程は「令和8年度 申込受付期間及び試験実施期間について」で、2026年10月4日に確認しました。
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