医師になるための骨格は3つです。医師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受け(医籍への登録)、診療に従事するなら2年以上の臨床研修を受ける。この順番は医師法に書かれています。国家試験に受かっただけではまだ医師ではなく、免許を受けても臨床研修を終えなければ診療の現場には立てません。この記事では、医師にしかできない業務、受験資格の4つの類型、第121回医師国家試験の日程、第120回の結果と合格基準、免許の欠格事由と処分、そして臨床研修とマッチングの数字を、厚生労働省と法令の公開情報をもとに整理します。
医師にしかできないこと
医師法は、医師という資格に2種類の独占と1つの義務を定めています。
| 規定 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 業務独占 | 第17条 | 医師でなければ医業をしてはならない |
| 名称独占 | 第18条 | 医師でなければ医師またはこれに紛らわしい名称を用いてはならない |
| 応召義務 | 第19条第1項 | 診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合、正当な事由がなければ拒んではならない |
業務独占は「その仕事を資格のない人がしてはいけない」という決まりで、名称独占は「資格のない人がその名前を名乗ってはいけない」という決まりです。医師はこの両方を持っています。医業そのものが医師だけに認められているため、医療機関の中心に医師がいる構造になります。
応召義務は、独占とは逆に医師の側に課された義務です。対象は「診療に従事する医師」で、正当な事由がない限り診察や治療の求めを拒めません。免許を持つことは権利であると同時に、こうした責任を引き受けることでもあります。
医療系の国家資格は、それぞれ法律で役割が分けられています。看護職の資格の構造は看護師・准看護師・保健師・助産師の違いで、調剤を業務独占とする薬剤師については薬剤師になるにはで整理しています。比べて読むと、医師法の規定の特徴がつかみやすくなります。
免許を受けるまでの流れ
医師法第2条は、医師になろうとする者は医師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならないと定めています。流れを順に並べると次のようになります。
- 受験資格を得る 多くの人は大学の医学の正規の課程を卒業する(見込みを含む)
- 出願する 受験書類を期間内に提出し、受験手数料を納める
- 国家試験を受ける 2日間の日程で実施される
- 合格後に免許を申請する 医籍に登録されて免許となり、医師免許証が交付される
- 臨床研修を受ける 診療に従事するなら2年以上
国家試験と予備試験は、医師法第10条により毎年少なくとも1回、厚生労働大臣が行います。科目などを定めるときは、あらかじめ医道審議会の意見を聴くことになっています。
受験資格の4つの類型
第121回医師国家試験の施行の案内では、受験資格が4つに分けて示されています。
| 類型 | 内容 |
|---|---|
| (1)大学卒業 | 学校教育法に基づく大学で医学の正規の課程を修めて卒業した者。令和9年3月9日までに卒業見込みの者を含む |
| (2)予備試験 | 医師国家試験予備試験に合格し、合格後1年以上の診療及び公衆衛生に関する実地修練を経た者 |
| (3)外国の医学校卒業など | 外国の医学校を卒業し、または外国で医師免許を得た者で、厚生労働大臣が(1)(2)と同等以上の学力・技能を有し適当と認定したもの |
| (4)沖縄の特別措置 | 沖縄の復帰に伴う特別措置令により医師免許を受けたものとみなされる者で、厚生労働大臣が認定したもの |
(1)には条件がついています。臨床実習を始める前に修得すべき知識と技能を評価する試験で、大学が共用するものとして厚生労働省令で定める試験に合格した者に限られます。医学部を卒業するだけでなく、在学中にこの共用の試験に合格していることが前提です。ただし令和7年4月1日より前に卒業した人は、この規定にかかわらず受験できます。
(2)の予備試験と(3)の外国の医学校卒業は、日本の医学部を経ない人のための入口です。予備試験に合格したあとも、すぐ国家試験を受けられるわけではなく、1年以上の実地修練を経る必要があります。(3)は厚生労働大臣による個別の認定が要件で、外国で学んだことや外国の免許を持っていることだけで受験資格になるわけではありません。予備試験の科目や合格率は、この記事では扱いません。受験を考える場合は厚生労働省の案内を直接確認してください。
第121回医師国家試験の日程と手数料
厚生労働省が令和8年7月1日付で公表した「医師国家試験の施行について」の内容です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験期日 | 令和9年(2027年)2月6日(土)・7日(日) |
| 試験地 | 北海道、宮城県、東京都、新潟県、愛知県、石川県、大阪府、広島県、香川県、福岡県、熊本県、沖縄県の12か所 |
| 受験上の配慮の申出 | 視覚・聴覚等の障害による配慮の申出は令和8年10月1日まで |
| 受験書類の受付 | 令和8年11月2日(月)〜11月30日(月)。郵送は書留で、消印有効 |
| 受験手数料 | 15,300円(収入印紙)。受理後は返還されない |
| 受験票 | 令和9年1月上旬に発送予定 |
| 卒業証明書の提出 | 卒業見込証明書で出願した人は令和9年3月9日午後2時まで。提出がなければ原則として無効 |
| 合格発表 | 令和9年3月16日(火)午後2時。厚生労働省ホームページの資格・試験情報のページに受験地と受験番号を掲載 |
試験の内容は、臨床上必要な医学及び公衆衛生に関して、医師として具有すべき知識及び技能とされています。運営は医師国家試験運営本部事務所(東京都江東区有明)が担当します。
見落としやすいのは、卒業見込みで出願した場合の卒業証明書の期限です。試験を受けて結果を待つ間にこの提出期限が来るため、卒業が確定したら早めに手続きを済ませておく必要があります。
第120回の結果と合格基準
令和8年2月7日・8日に行われた第120回医師国家試験の結果は、令和8年3月16日に厚生労働省から発表されました。
| 区分 | 出願者 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 全体 | 10,244人 | 9,980人 | 9,139人 | 91.6% |
| 新卒 | 9,422人 | 9,205人 | 8,716人 | 94.7% |
全体から新卒を差し引くと、新卒以外の受験者は775人、合格者は423人で、合格率は約54.6%になります(当サイト計算)。合格者9,139人のうち新卒は8,716人で、割合は約95.4%です(当サイト計算)。合格者のほとんどが、卒業した年の試験で合格していることがわかります。
合格基準は、次の3つをすべて満たすことでした。
| 区分 | 基準 | 得点率の目安(当サイト計算) |
|---|---|---|
| 必修問題 | 160点以上(200点満点) | 80.0% |
| 一般問題及び臨床実地問題 | 224点以上(300点満点) | 約74.7% |
| 禁忌肢 | 選択数が3問以下 | 点数とは別の基準 |
特徴は、区分ごとに基準があり、どれか1つでも満たさなければ不合格になる点です。一般問題と臨床実地問題で高得点をとっても、必修問題が160点に届かなければ合格になりません。禁忌肢は、医師として選んではいけない選択肢のことで、その選択数にも上限が設けられています。
合格基準の細目は告示で毎年定められます。上の数字は第120回のもので、次の回も同じとは限りません。受験する回の基準は、厚生労働省の公式発表で確認してください。
免許の欠格事由と処分
国家試験に合格すれば必ず免許を受けられるわけではありません。医師法には、免許を与えない場合と、免許を受けたあとの処分の規定があります。
未成年者と相対的欠格事由
医師法第3条は、未成年者には免許を与えないと定めています。これは例外のない規定です。
一方、第4条は次のいずれかに該当する者に「免許を与えないことがある」としています。
- 心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
- 麻薬、大麻またはあへんの中毒者
- 罰金以上の刑に処せられた者
- 前号に該当する者を除くほか、医事に関し犯罪または不正の行為のあった者
条文の言い方は「与えない」ではなく「与えないことがある」です。該当すれば自動的に免許が受けられなくなるのではなく、個別に判断される余地がある規定になっています。
医籍への登録と届出
免許は、国家試験に合格した人の申請によって、厚生労働省に備える医籍に登録することで行われます(第5条・第6条)。免許を与えたときは医師免許証が交付されます。
免許を受けたあとにも届出の義務があります。医師は、厚生労働省令で定める2年ごとの年の12月31日現在の氏名や住所など(医業に従事する人はその場所も)を、翌年1月15日までに届け出なければなりません。後で触れる医師数の統計は、この届出をもとにした数字です。
免許を受けたあとの処分
第7条により、医師が第4条の各号に該当したり、医師としての品位を損するような行為があったりしたときは、厚生労働大臣は次の処分ができます。
| 処分 | 内容 |
|---|---|
| 戒告 | いましめを与える処分 |
| 医業の停止 | 3年以内の期間、医業を停止する |
| 免許の取消し | 医師免許そのものを取り消す |
対象には、罰金以上の刑だけでなく「品位を損するような行為」も含まれます。免許は一度受ければ終わりではなく、その後の行為によって停止や取消しがありうる資格です。
国家試験合格後の臨床研修
医師法第16条の2第1項は、診療に従事しようとする医師は、2年以上、都道府県知事の指定する病院または厚生労働大臣が指定する外国の病院で臨床研修を受けなければならないと定めています。
ここで押さえたいのは義務の対象です。条文は「診療に従事しようとする医師」としています。患者を診る仕事に就くなら、免許を受けたあとに2年以上の臨床研修が欠かせません。国家試験の合格、免許の登録、臨床研修という3段階が、冒頭で挙げた骨格です。
研修先はマッチングで決まる
研修先の病院は、医師臨床研修マッチング協議会が運営するマッチングで決まります。厚生労働省が公表している数字は次のとおりです。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 令和7年度(2025年度)マッチングの参加者 | 9,902名 |
| 同 募集定員 | 10,527人 |
| 同 希望順位登録者 | 9,651人 |
| 同 内定者 | 8,910人 |
| 同 内定率 | 92.3% |
| 令和8年度の臨床研修医の採用実績 | 9,054人(臨床研修病院1,028か所、前年度9,429人から375人減) |
| 令和8年度の全国の募集定員上限 | 10,803人 |
令和7年度のマッチングは2025年10月23日公表の資料、令和8年度の採用実績は2026年9月4日公表、募集定員の上限は医道審議会医師臨床研修部会の資料によるものです。募集定員が希望順位登録者を上回っているため、募集定員の総数で見れば、希望順位登録者の数を上回っています。ただし定員は病院ごとに分かれているため、総数だけで個々の研修先の決まりやすさは判断できません。
医師数の統計
厚生労働省の「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、令和6年12月31日現在の届出医師数は347,772人でした。前回の令和4年より4,497人、1.3%増えています。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 届出医師数 | 347,772人 |
| うち女性 | 84,971人(24.4%) |
| 人口10万人当たり医師数(医療施設従事者、全国) | 267.4人(前回より5.3増) |
| 人口10万人当たり医師数が最も多い県 | 徳島県 345.4人 |
| 参考 歯科医師数 | 103,652人 |
| 参考 薬剤師数 | 329,045人 |
医師のおよそ4人に1人が女性という構成です。同じ統計で並べると、医師と薬剤師の人数は近い規模にあります。薬剤師の養成課程や国家試験の仕組みは薬剤師の記事で詳しく扱っています。
この数字は、先に触れた2年ごとの届出をもとにしています。全国平均の267.4人に対して最多の徳島県は345.4人で、人口当たりの医師数には地域による差があります。
よくある質問
医学部を卒業すれば国家試験を受けられますか。
大学で医学の正規の課程を修めて卒業することに加えて、臨床実習の前に受ける大学共用の試験(厚生労働省令で定めるもの)に合格していることが条件です。令和7年4月1日より前に卒業した人は、この条件にかかわらず受験できます。
国家試験に合格したらすぐ診療できますか。
合格のあとに免許を申請し、医籍に登録されて初めて医師になります。さらに診療に従事しようとする場合は、2年以上の臨床研修を受けることが医師法で定められています。
外国の医学部を卒業した場合はどうなりますか。
外国の医学校を卒業した人や外国で医師免許を得た人は、厚生労働大臣が日本の大学卒業者などと同等以上の学力と技能があり適当と認定した場合に、国家試験の受験資格を得られます。認定を受けることが前提です。
受験手数料はいくらですか。
第121回の受験手数料は15,300円で、収入印紙で納めます。受験書類が受理されたあとは返還されません。
合格発表はいつ、どこで見られますか。
第121回は令和9年3月16日の午後2時に、厚生労働省ホームページの資格・試験情報のページに、合格者の受験地と受験番号が掲載される予定です。
臨床研修の病院はどうやって決まりますか。
研修先の決定には、医師臨床研修マッチング協議会が運営するマッチングの仕組みがあります。令和7年度(2025年10月23日公表)は、募集定員10,527人に対して内定者は8,910人、内定率は92.3%でした。
まとめ
医師は、医業を業務独占とし、名称も独占する国家資格です。診療に従事する医師には応召義務も課されています。
免許までの道のりは、国家試験に合格し、医籍に登録されて免許を受け、診療に従事するなら2年以上の臨床研修を受けるという3段階です。受験資格は大学卒業、予備試験、外国の医学校卒業など、沖縄の特別措置の4類型があり、大学卒業の場合は在学中の共用の試験への合格が条件になっています。
第120回の合格率は全体で91.6%、新卒で94.7%でした。合格基準は必修問題、一般問題及び臨床実地問題、禁忌肢の3つで、どれか1つでも満たさなければ合格になりません。第121回は令和9年2月6日・7日に行われ、受験書類の受付は令和8年11月2日から11月30日までです。
この記事の内容は、医師法と厚生労働省の公表資料をもとに2026年10月に整理したものです。試験の日程や合格基準は回ごとに定められるため、受験の前には必ず公式の最新情報を確認してください。
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この記事の集計方針や出典の扱いについては、運営者情報ページにまとめています。
出典
法令の条文と試験・統計の数字は、以下の資料で確認しました(確認日2026年10月16日)。
- e-Gov法令検索「医師法」(昭和23年法律第201号) https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000201
- 厚生労働省「医師国家試験の施行について」(第121回、令和8年7月1日付) https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/ishi/
- 厚生労働省「第120回医師国家試験の合格発表について」(令和8年3月16日) https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2026/siken01/about.html
- 厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/24/index.html
- 厚生労働省 臨床研修に関する公表資料(令和7年度マッチング結果 2025年10月23日公表、令和8年度臨床研修医の採用実績 2026年9月4日公表、医道審議会医師臨床研修部会資料)