医療・福祉・心理系資格

義肢装具士とは?「モノを作る医療専門職」の業務範囲から資格取得ルートまで徹底解説

義肢装具士は、医師の指示のもとで義肢や装具の採型・製作・身体への適合を担う国家資格である。理学療法士や作業療法士がリハビリの動作訓練を担当するのに対し、義肢装具士は患者の身体に合わせて義肢や装具そのものを作るという、他のリハビリ系資格にはないモノづくりの専門性を持つ。この記事では、義肢装具士法にもとづく定義と業務範囲、資格取得までのルート、理学療法士・作業療法士・臨床検査技師等との違い、働く場所とキャリアの広がりまでを整理する。

義肢装具士とは 法律上の定義と成り立ち

義肢装具士は、義肢装具士法(昭和62年法律第61号)にもとづく国家資格である。同法第1条は、義肢装具士の資格を定め業務を適正に規律することで「医療の普及及び向上に寄与すること」を目的として掲げている。

同法第2条は、義肢装具士を「厚生労働大臣の免許を受けて、義肢装具士の名称を用いて、医師の指示の下に、義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の製作及び身体への適合を行うことを業とする者」と定義している。採型・製作・適合という3つの行為をまとめて「義肢装具の製作適合等」と呼ぶ点が、この資格の業務の骨格になっている。

義肢と装具についても、同法第2条であわせて定義されている。義肢は上肢または下肢の全部あるいは一部を失った人に装着し、失われた部位や機能を補う器具器械である。装具は上肢・下肢・体幹の機能に障害のある人に装着し、機能の回復や低下の抑制、機能の補完を図る器具器械である。義手・義足だけでなく、コルセットや装具靴なども装具に含まれる。

業務範囲 採型・製作・適合と医師の指示

義肢装具士の業務は、大きく3つの工程に分けられる。

  • 採型・採寸 医師の処方にもとづき、患者の身体の欠損部位や障害部位の型をとる
  • 製作 金属、プラスチック、皮革、繊維など複数の材料を加工し、義肢・装具そのものを作る
  • 適合 完成した義肢・装具を実際に身体に装着し、歩行や動作に支障が出ないよう調整する

義肢装具士法第37条は、保健師助産師看護師法の規定にかかわらず、診療の補助として採型と身体への適合を業とすることができると定めている。看護師でなくても、義肢装具士の資格があればこの範囲の行為を行えるという例外を設けた条文である。

義肢装具士法第38条により、厚生労働省令で定める義肢及び装具については、医師の具体的な指示を受けなければ採型・適合を行ってはならないと定められている。すべての採型・適合が対象になるわけではなく、対象となる義肢・装具の範囲は省令で定められているため、実際の線引きは厚生労働省や日本義肢装具士協会が公開している最新の情報で確認してほしい。

義肢装具士の名称は、義肢装具士法第41条により保護されている。資格を持たない者が「義肢装具士」またはこれに紛らわしい名称を名乗ることはできない、名称独占資格である。理学療法士や作業療法士と同じく業務独占ではなく名称独占という枠組みだが、診療の補助として採型・適合を業として行えるのは資格を持つ者に限られる。

資格取得ルート 養成校で学ぶことが前提

義肢装具士国家試験の実施事務は、義肢装具士法第17条第1項にもとづき厚生労働大臣から指定を受けた指定試験機関、公益財団法人テクノエイド協会が行っている。

受験資格は、義肢装具士法で3つのルートが定められている。実務経験だけで受験資格を得ることはできず、いずれのルートも養成校での学習が前提になる。

ルート 対象となる人 養成期間の考え方
ルート1(第1号) 大学に入学できる学力を持つ人 文部科学大臣指定の大学または厚生労働大臣指定の養成所で3年以上、義肢装具士としての知識・技能を修得
ルート2(第2号) 大学・高等専門学校等で一定期間学んだ人 1年(高等専門学校は4年)以上の修業と指定科目の履修に加え、養成所で2年以上の課程を修了
ルート3(第3号) 技能検定合格者 職業能力開発促進法にもとづく義肢・装具製作の技能検定に合格し、養成所で1年以上の課程を修了

現在稼働している養成校は、ルート1(第1号)に対応する大学・専門学校が中心になっている。学校の数や所在地、募集の状況は年によって変わるため、最新の養成校一覧は日本義肢装具士協会や厚生労働省の資格・養成校情報で確認してほしい。

義肢装具士国家試験の合格率と合格基準

直近4回(第36回〜第39回)の合格率は71.5%から81.0%の間で推移しています。4回分を合計すると受験者766名のうち合格者は599名で、合格率は約78.2%です(合計と割合は当サイト計算)。合格基準は130点満点中78点以上で、4回とも変わっていません。

直近4回の受験者数・合格者数・合格率

厚生労働省が公表している各回の合格発表をもとに、直近4回の結果をまとめました。

回 試験日 受験者数 合格者数 合格率
第36回 令和5年2月24日(金) 200名 162名 81.0%
第37回 令和6年2月22日(木) 194名 154名 79.4%
第38回 令和7年2月21日(金) 186名 133名 71.5%
第39回 令和8年2月20日(金) 186名 150名 80.6%
4回合計(当サイト計算) - 766名 599名 約78.2%

第39回の合格発表は令和8年3月26日(木)14時に行われました。第37回は、午後問題第45問が採点除外等の取扱いとされています。

合格基準は130点満点中78点以上

合格基準は、一般問題を1問1点、実地問題を1問2点として合計130点満点とし、78点以上を合格とするものです。第36回から第39回まで同じ基準が使われています。78点は満点の60%にあたります(当サイト計算)。

新卒・既卒別の合格率について

新卒者と既卒者に分けた受験者数や合格者数は、厚生労働省の合格発表ページには記載がなく、確認できませんでした。そのため、この記事では全体の数字のみを載せています。

次回 第40回義肢装具士国家試験の日程と手数料

第40回試験は、令和8年9月1日に厚生労働大臣から告示されています。主な内容は次のとおりです。

項目 内容
試験期日 令和9年2月19日(金)
試験地 東京都
出願期間 令和9年1月4日(月)から1月18日(月)まで。公益財団法人テクノエイド協会に提出します。郵送の場合は書留で、1月18日の消印まで有効です。受付時間は土日祝を除く午前9時〜12時と午後1時〜5時です
受験手数料 59,800円。テクノエイド協会指定の銀行口座へ振り込みます。受理後は返還されません
受験票 令和9年1月29日(金)に投函され、郵送で交付されます
合格発表予定 令和9年3月26日(金)午後2時
配慮申出の期限 令和8年11月30日(月)まで
試験科目 臨床医学大要、義肢装具工学、義肢装具材料学、義肢装具生体力学、義肢装具採型・採寸学及び義肢装具適合学
修業・卒業見込みの者の証明書提出期限 令和9年3月1日(月)午後5時まで
問い合わせ先 テクノエイド協会 03-3266-6884

配慮申出の期限は出願期間よりも前に設定されています。申出を考えている人は早めに準備しておくと安心です。

この節の出典

いずれも2026年10月8日に確認しました。

他の医療・リハビリ系資格との違い モノを作る医療専門職

リハビリテーション医療には複数の国家資格が関わっており、それぞれ担当する範囲が異なる。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、いずれも患者の身体機能や生活能力の回復を、訓練や指導を通じて支える資格である。一方、義肢装具士は義肢や装具という「モノ」そのものを作り、身体に適合させるところに専門性がある。

臨床検査技師・診療放射線技師・臨床工学技士との違いも同様で、これらは検査や画像診断、医療機器の操作・保守を担う資格であり、患者の身体に装着する器具そのものを製作するわけではない。

資格 主な役割 独占の種類 器具そのものを作るか
義肢装具士 義肢・装具の採型、製作、身体への適合 名称独占 作る
理学療法士 基本動作(立つ・歩く等)の回復訓練 名称独占 作らない
作業療法士 生活動作・社会適応の回復訓練 名称独占 作らない
臨床工学技士 生命維持管理装置の操作・保守 名称独占 作らない(操作・保守が中心)

義肢装具士・理学療法士・作業療法士は、いずれも名称独占資格であり業務独占ではない点は共通している。ただし義肢装具士は、養成校で金属・プラスチック・皮革などの材料加工技術を学ぶ点が他のリハビリ系資格と大きく異なる。

義肢を装着した患者が歩行訓練を行う場面では、義肢装具士が作った義足を、理学療法士が使い方の訓練を担当するという形で連携することも多い。それぞれの専門性が組み合わさって、患者の生活再建を支えている。

働く場所とキャリア

  • 義肢装具製作会社 義肢・装具の設計から製作、適合までを担う民間企業。就業先としてもっとも人数が多い
  • 病院・リハビリテーション施設のリハビリ科や義肢装具部門 医師・理学療法士・作業療法士などとチームで患者にかかわる
  • 義肢装具製作所を併設した福祉用具関連企業

義肢装具士単独での開業を直接定めた制度はなく、義肢装具製作を事業として行う場合は、医療機関や医師との連携体制、補装具費支給制度など公的な給付制度との関係も含めて確認が必要になる。開業の可否や要件は事業の形態によって扱いが変わるため、検討する場合は日本義肢装具士協会や税理士・社会保険労務士など専門家に個別に確認することを勧める。

よくある質問

義肢装具士は理学療法士や作業療法士と同じ資格ですか。

異なる資格です。理学療法士・作業療法士は身体機能や生活動作の訓練を担当し、義肢装具士は義肢・装具そのものを作り身体に適合させます。同じリハビリ医療にかかわりますが、業務の中身は分かれています。

実務経験だけで義肢装具士になれますか。

なれません。義肢装具士法で定められた3つの受験資格ルートのいずれも、養成校での学習が前提になっています。実務経験のみで受験資格を満たすルートはありません。

義肢装具士は独立開業できますか。

義肢装具士単独の開業を直接定めた制度はありません。義肢装具製作を事業として行う場合は、医師や医療機関との連携、公的な給付制度との関係を含めて個別に確認する必要があります。

国家試験はどこが実施していますか。

義肢装具士法第17条にもとづき、厚生労働大臣から指定を受けた指定試験機関である公益財団法人テクノエイド協会が試験の実施事務を行っています。

義肢装具士は名称独占資格ですか、業務独占資格ですか。

名称独占資格です。資格を持たない人が「義肢装具士」を名乗ることはできませんが、業務独占ではありません。ただし、診療の補助としての採型・適合を業として行えるのは資格を持つ者に限られます。

社会人から義肢装具士を目指せますか。

目指せます。年齢制限はありませんが、いずれの受験資格ルートも養成校での就学が必要なため、数年単位の就学期間をどう確保するかが検討課題になります。

義肢装具士と臨床工学技士はどう違いますか。

臨床工学技士は生命維持管理装置の操作・保守を担う資格で、義肢装具士のように患者の身体に合わせて器具を製作するわけではありません。扱う対象も業務の内容も異なります。

義肢や装具は医師の指示なしで作れますか。

義肢装具士法第37条により、採型と身体への適合は診療の補助として業とすることができると定められていますが、同法第38条では厚生労働省令で定める義肢・装具について医師の具体的な指示を受けなければならないとされています。対象となる範囲の詳細は、厚生労働省や日本義肢装具士協会の情報で確認してください。

まとめ

義肢装具士は、義肢装具士法にもとづき、医師の指示のもとで義肢・装具の採型、製作、身体への適合を担う国家資格である。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が動作や生活能力の回復を訓練によって支えるのに対し、義肢装具士は義肢や装具というモノそのものを作り、身体に合わせて調整するという独自の専門性を持つ。

資格を取得するには、義肢装具士法が定める3つのルートのいずれかにもとづき、養成校で学ぶ必要がある。実務経験だけで受験資格を得ることはできない。

働く場所は義肢装具製作会社や病院のリハビリ科が中心で、理学療法士・作業療法士など他の医療専門職とチームを組んで患者を支える場面が多い。制度の細部や最新の養成校情報は、日本義肢装具士協会や厚生労働省の公開情報で確認してほしい。

この記事の内容は、義肢装具士法(昭和62年法律第61号)と、厚生労働省及び公益財団法人テクノエイド協会が公開している情報をもとに2026年9月28日に整理したものです。試験の実施事務は義肢装具士法第17条第1項にもとづき、厚生労働大臣から指定を受けた指定試験機関であるテクノエイド協会が行っています。受験資格・試験内容・合格基準などの詳細は、テクノエイド協会「義肢装具士情報」ページ(https://www.techno-aids.or.jp/senmon/)で確認してください。制度や試験の実施内容は変更される場合があるため、受験や申請の前に必ず公式の最新情報を確認してください。

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