介護福祉士は、介護分野における国家資格の中で唯一の名称独占資格として知られる。高齢化が進む中で需要が安定している一方、受験資格のルートが複数用意されており、実務経験を積みながら目指す人も、専門学校・大学で体系的に学んでから目指す人もいる。2026年1月の第38回試験は78,469人が受験して54,987人が合格し、合格率は70.1%だった。前回の78.3%から下がった一方、この回から科目群を3つに分けた「パート合格」が始まり、全体では不合格でもパート単位の合格を持ち越せるようになった。この記事では、社会福祉振興・試験センターの公表資料をもとに、介護福祉士の制度概要、取得ルート、直近5回の合格率と合格基準点、パート合格の仕組み、第39回の日程、他の介護・福祉系資格との違いまでを整理する。
介護福祉士資格の基本
介護福祉士は「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づく国家資格で、試験・登録事務は公益財団法人社会福祉振興・試験センターが実施している。名称独占資格であるため、資格を持たない人が「介護福祉士」を名乗ることはできないが、介護の業務自体は無資格でも行える点は、業務独占資格である医療系の一部国家資格とは異なる。
資格の位置づけとしては、介護の現場で必要とされる知識・技術を国が一定水準で担保する仕組みであり、現場実務に直結する内容が多いのが特徴である。未経験から介護業界を目指す人にとっても、実務を通じて資格取得を目指せる導線が用意されている点は他の国家資格と比べて特徴的といえる。
資格取得までのルートを分解する
実務経験ルート
介護施設などで一定の実務経験を積んだうえで、実務者研修を修了し、国家試験を受験するルートである。社会福祉振興・試験センターの案内では、実務経験3年以上だけでは受験資格を満たさず、実務者研修の修了が必須であることが明記されている。働きながら資格取得を目指せるため、社会人からのキャリアチェンジや、介護業界で経験を積んだ人が資格を取る際に選ばれやすいルートである。
養成施設ルート
専門学校や大学の介護福祉士養成課程を修了することで受験資格を得るルートである。平成29年度(第30回試験)から、養成施設ルートの卒業者にも国家試験の合格が求められるようになった。ただし経過措置が設けられており、一定年度までの卒業者は卒業後5年間、試験に合格しなくても資格者として登録できる仕組みがある。この経過措置の対象・期限は年度によって変わるため、該当する可能性がある人は自分の卒業年度で個別に確認する必要がある。
福祉系高校ルート
福祉系高校で所定の課程を修めることで受験資格を得るルートである。入学年度によって要件が異なり、平成21年度以降の入学者、特例高校等の卒業者、平成20年度以前の入学者では、それぞれ求められる条件が違う。自分がどの年度区分に該当するかで必要な要件が変わるため、養成施設ルート以上に個別確認が必要になりやすい。
EPA(経済連携協定)ルート
経済連携協定に基づき来日する外国籍の介護福祉士候補者向けの制度である。一定期間の就労・研修を経て国家試験を受験する仕組みで、他のルートとは要件の性質が異なる。
| ルート | 主な対象 | 必要な経験・修了要件 | 受験までの主な流れ |
|---|---|---|---|
| 実務経験ルート | 介護現場で働く社会人など | 実務経験3年以上+実務者研修修了 | 実務経験を積みながら研修を修了し受験 |
| 養成施設ルート | 専門学校・大学進学者 | 養成課程の修了(経過措置あり) | 卒業と同時に受験資格取得、経過措置対象は卒業後5年間は合格猶予 |
| 福祉系高校ルート | 福祉系高校の生徒 | 入学年度に応じた所定課程の修了 | 卒業後に受験資格取得(年度により実務経験要件が加わる場合あり) |
| EPAルート | 経済連携協定に基づく外国籍の候補者 | 協定に基づく就労・研修期間の経過 | 一定期間経過後に受験資格取得 |
試験制度の特徴
試験科目と出題範囲
国家試験は筆記試験が中心で、人間の尊厳と自立、人間関係とコミュニケーション、社会の理解、介護の基本、こころとからだのしくみ、医療的ケアなど幅広い科目群から出題される。実務者研修や現場経験を通じて学ぶ内容と試験範囲が重なる部分も多く、働きながら知識を体系的に整理していく学習スタイルが向いているとされる。合格基準や出題基準は「社会福祉士及び介護福祉士試験事務規程」に基づいて定められ、社会福祉振興・試験センターが公表している。
実技面の担保
国家試験の実技試験は、第37回(令和6年度)試験から廃止され、現在は筆記試験だけが行われる。実技面の技術水準は、実務経験ルートなら実務者研修の修了、養成施設ルートなら養成課程の修了で担保する考え方である。EPAルートの一部区分などでは、登録申請までに「介護過程Ⅲ」の受講が求められる場合があるため、自分の区分の扱いは受験の手引で確かめておきたい。
試験日程・試験地・費用
国家試験は例年1月下旬から2月にかけて実施される。令和8年度(第39回)は令和9年1月31日(日)に実施され、試験地は全国35か所、受験申込の受付期間は令和8年7月22日から9月2日までで、この年度の受付はすでに終了している。受験手数料は20,510円で、全パートを受ける場合も不合格パートだけを受け直す場合も同じ額である。試験時間はAパートが午前10時から11時45分、B・Cパートが午後1時40分から3時35分で、合格発表は令和9年3月23日(火)14時にセンターのホームページに受験番号が掲載される予定である。日程・試験地・手数料は年度によって変わる可能性があるため、受験する年度の最新の受験の手引で確認する必要がある。
直近5回の合格率と合格基準点
社会福祉振興・試験センターは合格発表のたびに、受験者数・合格者数・合格率と合格基準を公表している。直近5回の推移は次のとおりである。
| 回(実施年) | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 第34回(2022年) | 83,082人 | 60,099人 | 72.3% |
| 第35回(2023年) | 79,151人 | 66,711人 | 84.3% |
| 第36回(2024年) | 74,595人 | 61,747人 | 82.8% |
| 第37回(2025年) | 75,387人 | 58,992人 | 78.3% |
| 第38回(2026年) | 78,469人 | 54,987人 | 70.1% |
合格基準は、125点満点(1問1点)のうち総得点の60%程度を基準に問題の難易度で補正した点数以上で、かつ11の科目群すべてで得点があることである。基準点は第36回が67点、第37回が70点、第38回が64点だった。基準点が下がった第38回でも合格率が70.1%にとどまっており、7割台後半から8割台が続いた近年の中では低めの回になった。
受験資格のルート別に見た第38回の結果
同じ試験でも、どのルートで受験したかによって合格率には差がある。第38回の主な区分は次のとおりである。
| 受験資格の区分 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 介護福祉士養成施設 | 7,824人 | 4,603人 | 58.8% |
| 社会福祉施設の介護職員等 | 48,612人 | 33,893人 | 69.7% |
| 訪問介護員等 | 9,706人 | 7,985人 | 82.3% |
| 介護老人保健施設・介護医療院の介護職員等 | 4,892人 | 2,989人 | 61.1% |
| 医療機関の看護補助者等 | 5,355人 | 3,631人 | 67.8% |
| 福祉系高等学校(専攻科を含む) | 2,024人 | 1,839人 | 90.9% |
受験者の6割強は社会福祉施設で働く介護職員等で、実務経験ルートの受験者が中心の試験であることがわかる。合格者の年齢は21〜30歳が15,727人(28.6%)で最も多く、41〜50歳が11,970人(21.8%)、51〜60歳が10,927人(19.9%)と続く。働きながら40代・50代で合格する人が多い点も、この資格の特徴である。
第38回から始まったパート合格
第38回から、試験はAパート(60点)、Bパート(45点)、Cパート(20点)の3つに分けて採点されるようになった。総得点で合格基準に届かなくても、パートごとの基準点以上を取り、そのパートの科目群すべてで得点していれば、そのパートだけ合格になる。第38回のパート別基準点はAパート32.23点、Bパート20.43点、Cパート11.33点で、パート別の合格者はAパート3,935人、Bパート1,509人、Cパート6,181人だった(重複あり)。
他の介護・福祉系資格との違い
介護福祉士としばしば比較される資格との違いを整理する。
| 資格 | 資格区分 | 特徴 |
|---|---|---|
| 介護福祉士 | 国家資格(名称独占) | 介護分野で唯一の国家資格。実務・養成施設・高校など複数の取得ルートがある |
| 初任者研修 | 都道府県等が認定する研修修了資格 | 介護職としてのスタート地点となる入門研修。介護福祉士の実務経験ルートの前段階に位置づけられる |
| 実務者研修 | 研修修了資格 | 介護福祉士国家試験の実務経験ルートで受験に必須の研修。初任者研修より学習範囲が広い |
| 社会福祉士 | 国家資格(名称独占) | 相談援助業務が中心で、介護の直接的な身体介助よりも福祉制度の活用支援や関係機関との調整を担う |
| ケアマネジャー(介護支援専門員) | 都道府県が認定する公的資格 | 介護福祉士等の実務経験を経て受験できる場合が多く、ケアプラン作成など介護保険制度の運用を担う上位資格として位置づけられやすい |
選び方・実践的なコツ
働きながら目指すなら実務経験ルートを軸に考える
すでに介護施設などで働いている場合は、実務経験ルートが現実的な選択肢になりやすい。ポイントは実務者研修の修了時期を早めに逆算しておくことである。実務経験3年以上を満たしていても研修修了が伴わなければ受験できないため、勤務先の研修制度や外部の研修機関のスケジュールを早い段階で確認しておくと計画が立てやすい。
未経験からなら養成施設ルートも比較検討する
介護業界未経験で、体系的に学んでから現場に出たい場合は、専門学校・大学の養成施設ルートも選択肢になる。経過措置の対象かどうかで卒業後すぐに資格者として登録できるかが変わるため、進学を検討する養成施設に経過措置の扱いを確認しておくとよい。
受験資格の年度要件は必ず個別に確認する
特に福祉系高校ルートや養成施設ルートの経過措置は、入学・卒業年度によって適用される要件が異なる。自分の状況が複雑に感じられる場合は、社会福祉振興・試験センターが公開している資格取得ルート図や受験の手引を確認し、不明点は同センターに直接問い合わせるのが確実である。
・自分がどの受験資格ルートに該当するか
・実務者研修の修了(見込)証明書の取得スケジュール
・受験申し込み受付期間(例年7月~9月頃)と試験日
・受験手数料の支払い方法と期限
資格取得後のキャリアの広がり
介護福祉士を取得すると、施設によっては資格手当が支給されたり、リーダー職や現場のまとめ役への昇格要件になったりすることがある。無資格・初任者研修修了者と比べて任される業務の幅が広がりやすい点も、転職市場で評価されやすい理由のひとつとされる。将来的にケアマネジャー(介護支援専門員)などの上位資格を目指す場合、介護福祉士としての実務経験が受験要件に組み込まれているケースもあるため、早い段階から実務経験の積み方を意識しておくと、その後のキャリアアップにつなげやすい。
よくある質問
Q. 介護福祉士は無資格でも働ける介護の仕事とどう違いますか?
介護業務自体は資格がなくても行えるが、介護福祉士は名称独占資格のため、資格を持たない人が「介護福祉士」を名乗ることはできない。資格手当の対象になったり、任される業務の幅が広がったりする点が、無資格・未経験者との違いとして挙げられる。
Q. 実務経験だけで受験できますか?
実務経験3年以上だけでは受験資格を満たさない。実務者研修の修了が別途必要である。
Q. 実務者研修と初任者研修は同じものですか?
異なる研修である。初任者研修は介護職の入門的な研修、実務者研修はより学習範囲が広く、介護福祉士国家試験の実務経験ルートで受験する際に修了が必須となる研修である。
Q. 養成施設を卒業すれば国家試験を受けなくても資格者になれますか?
年度による経過措置の対象であれば、卒業後一定期間(5年間)は試験に合格しなくても登録が可能とされているが、対象年度を過ぎると国家試験の合格が必須になる。自分の卒業年度でどちらに該当するかを確認する必要がある。
Q. 受験手数料はいくらですか?
直近の案内では20,510円とされているが、年度によって変わる可能性があるため受験年度の最新情報を確認するのが確実である。
Q. 試験はどこで受けられますか?
全国35試験地で実施されており、申し込み時に希望の試験地を選択できる。
Q. 合格率はどのくらいですか?
第38回(2026年1月実施)は受験者78,469人、合格者54,987人で、合格率は70.1%だった。第35回から第37回は78〜84%台で推移していた。ルート別では養成施設58.8%、福祉系高校90.9%など差がある。最新値は社会福祉振興・試験センターの合格発表で確認できる。
Q. 社会福祉士とはどう違いますか?
介護福祉士は現場での介護実務が中心の資格である一方、社会福祉士は相談援助業務が中心で、福祉制度の活用支援や関係機関との調整を担う場面が多い。扱う業務の性質が異なる資格である。
Q. 資格を取ると給与は上がりますか?
施設によっては資格手当が支給されたり、リーダー職への昇格要件になったりすることがある。ただし待遇は勤務先の制度によって異なるため、一律に上がると断定はできない。
Q. 外国籍の人でも取得できますか?
EPA(経済連携協定)に基づく受験ルートが用意されている。協定に基づく就労・研修期間を経ることで受験資格を得られる仕組みである。
Q. どのルートが一番早く資格を取れますか?
年齢・現在の状況によって最短ルートは変わる。すでに介護現場で働いている人は実務経験ルート、これから学ぼうとする人は養成施設ルートが検討対象になりやすいが、それぞれ必要な年数や研修が異なるため一概にはいえない。
まとめ
介護福祉士は、介護分野で唯一の国家資格でありながら、実務経験ルート・養成施設ルート・福祉系高校ルート・EPAルートという複数の入り口が用意されている資格である。特に実務経験ルートでは実務者研修の修了が必須である点、養成施設ルートでは経過措置の対象年度によって扱いが変わる点は見落とされやすいため、自分がどのルートに該当するかを早い段階で確認しておくことが、無理のない資格取得計画につながる。
この記事の試験情報は、社会福祉振興・試験センターの「令和8年度 第39回介護福祉士国家試験」のページ(https://www.sssc.or.jp/kaigo/tetsuzuki.html)と、厚生労働省の「第39回介護福祉士国家試験の施行について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74538.html)を2026年9月26日に確認して整理しました。合格率・合格基準点・パート合格の数字は、同センターの「第38回介護福祉士国家試験の合格発表について」「第36回〜第38回 合格基準及び正答について」、第39回の日程・手数料・パート合格の有効期限は「第39回介護福祉士国家試験 受験の手引(抜粋版)」で2026年10月4日に確認しました。受験前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。