視能訓練士は、視力検査や斜視・弱視の訓練など、目の機能に特化した業務を担う国家資格です。医師の指示の下で検査や訓練を行う点は診療放射線技師や臨床検査技師と共通していますが、対象を「両眼視機能」に絞っている点が視能訓練士の特徴です。国家試験の合格率は直近3回とも95%を超えており、2026年2月の第56回は受験者804人のうち773人が合格しました。この記事では、視能訓練士法上の定義、業務範囲、資格取得ルート、国家試験の合格率と日程、他の医療系資格との違いを、厚生労働省と公益社団法人日本視能訓練士協会が公開している情報にもとづいて整理します。
視能訓練士とは何か
視能訓練士は、視能訓練士法(昭和46年法律第64号)にもとづく国家資格です。同法第2条では、視能訓練士を「厚生労働大臣の免許を受けて、視能訓練士の名称を用いて、医師の指示の下に、両眼視機能に障害のある者に対するその両眼視機能の回復のための矯正訓練及びこれに必要な検査を行なうことを業とする者」と定義しています。
制度としては1971年(昭和46年)に視能訓練士法が制定されたことで誕生しました。公益社団法人日本視能訓練士協会によると、創設当初は斜視・弱視の視能矯正という専門分野が中心でしたが、その後の法改正で業務範囲が拡大し、現在は眼科領域全般の検査や健診業務にも携わる専門職になっています。
業務範囲
公益社団法人日本視能訓練士協会は、視能訓練士の業務分野を大きく4つに整理しています。
| 分野 | 主な内容 |
|---|---|
| 視能矯正 | 斜視・弱視の子どもを対象に、両眼視機能・眼位・眼球運動の検査、矯正訓練を行う |
| 視能検査 | 視力検査、屈折検査、眼鏡・コンタクトレンズの処方前検査、視野検査、眼圧検査、眼底・前眼部の画像検査、手術前検査などを行い、医師の診断を支える |
| 健診業務 | 3歳児健康診査、就学時健康診断、生活習慣病予防健診などで視覚検査を担当し、眼疾患の早期発見につなげる |
| ロービジョンケア | 視機能が低下した患者に対し、拡大鏡や遮光眼鏡などの選定、日常生活上の工夫を助言する |
これらの検査・訓練のうち、視能訓練士法が定める矯正訓練とこれに必要な検査は医師の指示の下で行うことが法律上の要件になっています。公益社団法人日本視能訓練士協会も、業務を行う場所は原則として医師と連携できる病院・診療所等に限られるとしています。保健師助産師看護師法が定める診療の補助行為のうち、視能訓練士法によって視能訓練士にも認められている範囲で業務を行う仕組みで、この構造は診療放射線技師や臨床検査技師が医師の指示の下で検査を行うのと共通しています。
資格取得ルート
視能訓練士になるには、年1回実施される視能訓練士国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受ける必要があります。試験は厚生労働省が実施しており、直近の実施日程や合格発表は厚生労働省の公式サイトで確認できます。
受験資格を得るルートは、主に次の3つに整理できます。
| ルート | 内容 |
|---|---|
| 高校卒業後の養成施設ルート | 高校卒業後、指定された視能訓練士養成施設で3年以上、必要な知識・技術を修得する |
| 大学等併修ルート | 大学・短期大学、または看護師・保育士などの養成機関で指定科目を履修したうえで、指定の視能訓練士養成施設で1年以上、必要な知識・技術を修得する |
| 外国の学校卒業者ルート | 外国の視能訓練士養成校を卒業した者などで、日本の養成校卒業者と同等の技術を持つと厚生労働大臣が認定した場合 |
養成施設は大学(4年制)、短期大学(3年制)、専門学校(2〜3年制)のいずれかの形態があり、全国に一定数の指定校があります。学校ごとの修業年限や指定科目の詳細は、進学を検討する養成校の募集要項、または全国視能訓練士学校協会の情報で確認してください。試験科目や合格基準の詳細も年度によって案内が更新されるため、受験を予定する年度の要項を厚生労働省のサイトで確認するのが確実です。
国家試験の合格率と第57回の日程
厚生労働省が毎年公表している合格発表から、直近5回の結果をまとめました。
| 回(実施日) | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | うち新卒者の合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 第52回(2022年2月17日) | 842人 | 773人 | 91.8% | 95.5% |
| 第53回(2023年2月16日) | 943人 | 842人 | 89.3% | 93.7% |
| 第54回(2024年2月15日) | 976人 | 929人 | 95.2% | 97.8% |
| 第55回(2025年2月20日) | 911人 | 882人 | 96.8% | 98.7% |
| 第56回(2026年2月19日) | 804人 | 773人 | 96.1% | 98.5% |
養成課程を終えた新卒者はほぼ全員が合格する一方、既卒者の合格率は低くなります。第56回は既卒の受験者26人のうち合格は7人でした(全体から新卒者を引いた当サイト計算)。合格基準は、一般問題1問1点・臨床問題1問2点の合計168点満点で、第56回は101点以上でした。受験者は毎年800〜1,000人ほどの小さな試験です。
他の医療系資格との違い
視能訓練士は、身体機能全般ではなく「視覚」に専門を絞った医療専門職という位置づけです。同じく国家資格を持つコメディカル職と並べると、対象領域の違いが見えてきます。
| 資格 | 専門領域 | 医師の指示との関係 |
|---|---|---|
| 視能訓練士 | 両眼視機能・視覚全般(斜視・弱視の訓練、視能検査) | 矯正訓練・検査は医師の指示の下で実施 |
| 臨床検査技師・診療放射線技師・臨床工学技士 | 検体検査・生理検査、画像検査、生命維持管理装置の操作など | いずれも医師の指示の下で検査・技術業務を実施 |
| 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 | 身体機能、応用動作、言語・聴覚・摂食嚥下機能のリハビリテーション | 医師の指示の下でリハビリテーションを実施 |
| 看護師・保健師・助産師 | 療養上の世話と診療の補助全般(助産師は助産・妊産婦の保健指導) | 診療の補助は医師の指示の下、療養上の世話は看護師の判断で実施 |
視能訓練士も含め、これらの資格はいずれも医師の指示の下で一定の医療行為を行う専門職ですが、担う専門領域はそれぞれ異なります。臨床検査技師・診療放射線技師・臨床工学技士の違いで扱った3資格は検体・画像・装置操作が軸になっているのに対し、視能訓練士は視覚機能そのものが軸になっている点が異なります。また理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の違いで扱ったリハビリテーション系の3資格が身体機能・動作・言語聴覚を対象にするのに対し、視能訓練士は視覚に特化した訓練を行う点で対象範囲が異なります。看護師・准看護師・保健師・助産師の違いで見た看護系資格が療養上の世話を含む幅広い業務を担うのに対し、視能訓練士は眼科領域の検査・訓練に特化した専門職です。
働く場所・キャリア
視能訓練士の主な勤務先は、眼科クリニックや病院の眼科です。医師の指示の下で業務を行う資格である以上、勤務先は医師と連携できる医療機関が中心になります。このほか、視力検査機器やコンタクトレンズ・メガネなど視力矯正関連の企業で、製品開発や検査業務に関わる形で知識を活かすケースもあります。健診業務に携わる視能訓練士は、自治体の乳幼児健診や学校健診に関わることもあります。
よくある質問
視能訓練士は独占業務資格ですか。
視能訓練士法上、視能訓練士でない者が視能訓練士という名称を用いることはできない名称独占の資格です。業務そのものについては、法律で定める矯正訓練・検査を医師の指示の下で行える専門職として位置づけられています。
視能訓練士になるには大学に行く必要がありますか。
必須ではありません。高校卒業後に指定の養成施設(専門学校を含む)で3年以上学ぶルートもあれば、大学・短期大学等で指定科目を履修したうえで1年以上の養成課程を修めるルートもあります。
視能訓練士の国家試験はどこが実施していますか。
厚生労働省が実施しています。年1回の実施で、日程・受験資格・合格発表は厚生労働省の公式サイトで確認できます。
視能訓練士と眼科医の違いは何ですか。
眼科医は医師免許を持ち診断・治療方針の決定を行う立場です。視能訓練士は医師の指示の下で視能検査や矯正訓練を行う専門職で、診断や治療方針の決定は行いません。
視能訓練士は診療放射線技師や臨床検査技師と同じ枠組みの資格ですか。
医師の指示の下で検査等を行う点は共通していますが、それぞれ根拠法(視能訓練士法、診療放射線技師法、臨床検査技師等に関する法律)が別に定められた独立の国家資格です。専門領域も画像検査・検体検査と視覚機能とで異なります。
視能訓練士は子どもしか担当できませんか。
斜視・弱視の訓練は子どもが中心ですが、視能検査や健診業務、ロービジョンケアは乳幼児から高齢者まで幅広い年代が対象です。
視能訓練士の資格に更新はありますか。
視能訓練士免許そのものに更新制度があるかどうかは、厚生労働省が公開している制度資料で確認してください。専門性を高める仕組みとして、日本視能訓練士協会が認定する専門視能訓練士制度が別途設けられています。
視能訓練士の求人はどこで探せますか。
眼科クリニックや病院の求人媒体、日本視能訓練士協会の会員向け情報などで確認できます。募集状況は地域や時期によって異なるため、個別の求人情報で確認してください。
まとめ
視能訓練士は、視能訓練士法(昭和46年法律第64号)にもとづき、医師の指示の下で両眼視機能の検査・矯正訓練を行う国家資格です。視能矯正・視能検査・健診業務・ロービジョンケアという4つの業務分野を持ち、視覚に特化した専門職として眼科クリニックや病院で活躍しています。資格取得には、高校卒業後の養成施設ルートか、大学等での指定科目履修を経た養成課程ルートのいずれかで国家試験の受験資格を得て、厚生労働省が実施する国家試験に合格する必要があります。他の医師の指示の下で働く医療専門職と比べると、対象領域を視覚に絞っている点が視能訓練士の位置づけを理解するポイントになります。