資格とキャリア

施工管理技士・建築士の資格が転職で重視される理由|建設業法の配置要件と経審の点数から整理

建設業の求人を見ると、施工管理技士や建築士の資格を応募条件や歓迎条件に挙げている会社が多くあります。理由をひとことでいえば、建設会社にとって有資格者は「いると助かる人」というより、法律上置かなければ仕事を受けられない人だからです。建設業法は、許可を受けるための営業所技術者、工事ごとの主任技術者・監理技術者の配置を義務づけています。さらに公共工事を受注しようとする会社が受ける経営事項審査では、技術職員の資格の種類ごとに1人あたりの点数が決まっています。

この記事では、建設業法と経営事項審査の仕組みを国土交通省やe-Govの一次資料に沿って整理し、資格を持つ人や取得を考えている人が転職先を探すときに何を確認すればよいかを考えます。金額などの数字は改正が続いているため、現行値と過去の値を分けて載せています。

資格者の配置は建設業法で決まっている

建設会社が一定規模以上の工事を請け負うには建設業の許可が必要で、許可を維持するにも、実際に工事を進めるにも、要件を満たす技術者を置かなければなりません。ここで求められる技術者は大きく分けて、営業所に置く人と工事現場に置く人の2種類です。

営業所に置く「営業所技術者」(旧・専任技術者)

建設業法第7条第2号は、許可の基準として、営業所ごとに営業所技術者を専任で置くことを求めています。以前は「専任技術者」と呼ばれていましたが、令和6年12月13日施行の改正で「営業所技術者」という名称に変わりました。古い解説記事や求人票では今も「専技」「専任技術者」と書かれていることがあり、同じ役割を指していると考えて差し支えありません。

営業所技術者になれるのは、所定の学科を修めて高校卒業後5年以上または大学・高専卒業後3年以上の実務経験がある人(イ)、10年以上の実務経験がある人(ロ)、国土交通大臣がこれらと同等以上と認定した人(ハ)のいずれかです。施工管理技士などの国家資格は、国土交通省の告示によってこのハに当たるものとして扱われます。資格がなくても実務経験で要件を満たす道はありますが、10年という年数を考えると、資格で要件を満たせる人がいることの意味は会社にとって小さくありません。

特定建設業の「特定営業所技術者」

元請として大きな工事を受け、多額の下請発注をする会社は「特定建設業」の許可が必要です。第15条第2号は、特定建設業の営業所ごとに特定営業所技術者(旧・特定建設業の専任技術者)を専任で置くよう定めています。要件は、技術検定などの試験に合格した人や免許を受けた人(イ)、第7条第2号の要件を満たしたうえで一定額以上の元請工事で2年以上の指導監督的な実務経験がある人(ロ)、大臣認定を受けた人(ハ)です。

さらに政令で定める「指定建設業」では、特定営業所技術者はイの合格者・免許取得者か、それと同等以上と大臣認定を受けた人に限られます。実務経験だけでは足りない区分があるということです。

工事現場に置く「主任技術者」と「監理技術者」

第26条第1項により、建設業者は請け負った工事を施工するとき、営業所技術者と同じ要件(第7条第2号イ・ロ・ハ)を満たす人を主任技術者として置かなければなりません。元請の特定建設業者が下請に出す金額の合計が政令の金額以上になる場合は、特定営業所技術者と同じ要件(第15条第2号イ・ロ・ハ)を満たす人を監理技術者として置きます(同条第2項)。

公共性のある施設や多くの人が利用する施設の重要な工事で、請負代金が政令の金額以上のものについては、主任技術者・監理技術者は工事現場ごとに専任でなければなりません(同条第3項)。政令で挙げられている施設には、国や地方公共団体が注文者の施設のほか、学校、図書館、病院、事務所、共同住宅、工場、倉庫などが含まれます。専任の監理技術者は、監理技術者資格者証の交付を受け、登録を受けた監理技術者講習を受講した人の中から選ぶことになっています(同条第5項)。

つまり現場が専任を求められる規模になると、その現場には有資格者が1人張り付くことになります。同時に動いている現場の数だけ有資格者が必要になるので、会社の受注量は有資格者の人数に左右されます。

専任が必要な金額は2回引き上げられた

特定建設業の許可や監理技術者の配置が必要になる下請代金額、主任技術者・監理技術者の専任が必要になる請負代金額は、令和5年1月1日と令和7年2月1日の2回にわたって引き上げられています。ネット上には古い金額のまま書かれた記事も残っているので、現行値を確認しておきましょう。

区分 令和4年12月まで 令和5年1月1日施行 令和7年2月1日施行(現行)
特定建設業許可・監理技術者の配置が必要な下請代金額の下限 4,000万円(6,000万円) 4,500万円(7,000万円) 5,000万円(8,000万円)
主任技術者・監理技術者の専任が必要な請負代金額の下限 3,500万円(7,000万円) 4,000万円(8,000万円) 4,500万円(9,000万円)

括弧内は建築一式工事(特定建設業許可の行は建築工事業)の場合の金額です。現行の数字は建設業法施行令第2条と第27条第1項の条文で確認できます。

令和6年12月13日からは、専任の扱いにも緩和が入りました。請負代金が1億円(建築一式工事は2億円)未満で、情報通信技術の活用などの要件を満たす場合は、2現場まで兼任できます。また、監理技術者を補佐する人(監理技術者補佐)を各現場に専任で置けば、同じ監理技術者が2つの現場を兼務できます。後者は監理技術者のみの仕組みで、主任技術者には適用されません。

経営事項審査では資格ごとに点数が決まっている

経営事項審査(経審)は、国土交通省の説明によれば、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が必ず受けなければならない審査です。結果は総合評定値(P)という点数で示され、P=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15Wという式で算出されます。Zは技術力の評点で、技術職員の数と元請完成工事高から求められ、全体の4分の1のウェイトを占めています。

技術職員の数は単純な人数ではなく、資格の種類ごとに決められた数を掛けて合計した「技術職員数値」で評価されます。国土交通省「経営事項審査の事務取扱いについて」(令和8年7月1日施行版)の区分は次のとおりです。

区分 1人あたり 主な該当者
一級監理受講者 6 一級技術者で監理技術者資格者証の交付を受け、監理技術者講習を受講した日の属する年の翌年から5年を経過しない人
一級技術者(一級監理受講者以外) 5 建設業法第15条第2号イに該当する人(1級施工管理技士など)
監理技術者補佐 4 建設業法施行令第29条第1号・第2号に掲げる人で一級技術者以外の人(1級技士補など)
基幹技能者・レベル4技能者 3 一級技術者・監理技術者補佐以外の人
二級技術者 2 2級の技術検定合格者など
その他の技術者 1 学歴と実務経験などで要件を満たす人

1人の職員が技術職員として申請できる建設業の種類は2つまでとされています。また、表の区分は令和8年2月6日公布・同年7月1日施行の経審改正後の事務取扱いでも変わっていません。古い解説では「監理技術者補佐」の4点の区分が載っていないことがあるので注意してください。

この表から読み取れるのは、同じ1人でも、資格の級や講習の受講状況によって会社の評価に入る数値が最大6倍違うということです。ただ、技術職員が1人増えると総合評定値が何点上がるかは、許可業種や会社の規模によって換算が変わるため、ここでは一律の数字は示しません。

技士補と監理技術者補佐、受検資格の見直し

施工管理技士の技術検定は、令和3年4月から第一次検定と第二次検定に分かれました。第一次検定に合格すると「技士補」、第二次検定に合格すると「技士」の称号を名乗ることができます(建設業法第27条第7項、施行令第40条)。

1級の第一次検定に合格した1級技士補で、その工事の種類の主任技術者の資格を持つ人は、監理技術者補佐として現場に置くことができます(機械器具設置、さく井、消防施設、清掃施設の各工事は監理技術者の資格を持つ人に限られます)。先ほどの兼務の仕組みと組み合わせると、会社は監理技術者1人で2現場を回せるようになるため、1級技士補にも配置上の役割があります。

令和6年度からは受検資格も変わりました。1級の第一次検定は受検年度末時点で19歳以上、2級の第一次検定は17歳以上であれば受検できます。第二次検定は、第一次検定に合格した後の実務経験で受検します。1級の場合は、1級第一次検定合格後に実務経験5年以上、特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上、監理技術者補佐としての実務経験1年以上のいずれかです。令和10年度までは旧制度の受検資格で第二次検定を受けることもできます。種目ごとの詳しい違いは施工管理技士とは?7種目の違いと2024年度からの受験資格改正にまとめています。土木分野に絞った内容は土木施工管理技士の解説も参考になります。

建設業の会社数と働く人の年齢構成

有資格者を必要とする会社がどれくらいあるのかも見ておきます。国土交通省が令和8年5月15日に公表した調査では、令和7年度末(令和8年3月末)の建設業許可業者数は483,823業者で、前年度から123業者(0.03%)増え、3年連続の増加でした。ピークだった平成12年3月末と比べると117,157業者(19.5%)少ない水準です。

項目 数値
建設業許可業者数(令和7年度末) 483,823業者
一般建設業許可を持つ業者 457,617業者
特定建設業許可を持つ業者 50,511業者
個人と資本金1億円未満の法人 478,383業者(全体の98.9%)

一般と特定の両方の許可を持つ業者があるため、2つを足しても全体の数とは一致しません。業種別では、とび・土工工事業184,825業者、建築工事業140,967業者、土木工事業130,833業者が上位です。全体の約99%(98.9%)が個人または資本金1億円未満の法人で、こうした会社でも許可を持つ以上は営業所技術者を置き続ける必要があります。

働く人の側では、国土交通省が令和8年7月にまとめた資料(総務省「労働力調査」の暦年平均をもとに作成)によると、令和7年の建設業就業者は478万人でした。平成9年の685万人から大きく減っています。内訳は技術者41万人、技能者296万人です。年齢構成は55歳以上が36.6%、29歳以下が11.9%で、資料では高齢化が進み次世代への技術承継が大きな課題だとしています。

有資格者が退職すると、会社は許可や配置の要件を満たすために代わりの人を確保しなければなりません。中途採用で資格者を探す求人が出る背景には、こうした事情もあると考えられます。

建築士は設計・工事監理の独占と管理建築士

建築士の場合、法律上の位置づけは施工管理技士と少し違います。建築士法第3条は、一定の建築物を新築する場合、一級建築士でなければ設計や工事監理をしてはならないと定めています。

一級建築士でなければ設計・工事監理ができない建築物(新築)
学校、病院、劇場、映画館、観覧場、公会堂、集会場(オーディトリアムを有しないものを除く)、百貨店で延べ面積500平方メートル超のもの
木造で高さ16メートル超、または地階を除く階数が4以上のもの
鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、れんが造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造で、延べ面積300平方メートル超、高さ16メートル超、または地階を除く階数4以上のもの
延べ面積1,000平方メートル超かつ階数2以上のもの

増築や改築、大規模の修繕・模様替えの場合は、その部分を新築するものとみなして適用されます。一級と二級で扱える範囲の違いは建築士1級と2級の違いで詳しく説明しています。

また第24条により、建築士事務所の開設者は事務所ごとに専任の管理建築士を置かなければなりません。管理建築士になるには、建築士として3年以上の設計などの業務に従事した後、登録講習機関の講習を修了する必要があります。管理建築士は、受託できる業務の量や難しさ、必要な期間の設定といった技術的事項を総括する立場です。事務所を続けるうえで欠かせない人なので、設計事務所の求人では資格に加えて実務年数が問われることがあります。

資格を持つ人が転職先を見るときの考え方

ここまでの仕組みを踏まえると、会社が資格者を求める理由は主に、許可を維持するため、現場に技術者を配置するため、経審の評価に入れるため、建築士事務所を運営するための4つに整理できます。どの理由で人を探しているかは会社によって違うので、応募前や面接の場で確認しておくと、入社後の役割の食い違いを減らせます。

確認しておきたいのは、たとえば次のような点です。

  • 営業所技術者として登録される予定か、現場の主任技術者・監理技術者として配置される予定か
  • 専任が必要な規模の現場が多いか、兼任や監理技術者補佐の仕組みを使っているか
  • 公共工事を受注していて経審を受けているか、資格手当や講習受講の支援があるか
  • 1級技士補や2級の人に、上位資格の受検に必要な実務経験を積める現場があるか

資格を持っていることが採用や待遇にどう反映されるかは、会社の業種や規模、受注している工事の内容によって変わります。資格は求人の条件を満たす材料にはなりますが、それだけで結果が決まるわけではありません。自分の資格がその会社のどの要件に使われるのかを把握したうえで、仕事内容や働き方と合わせて判断するのが現実的です。設備や電気の分野で働く人は、建築設備士の資格解説もあわせて読むと、関連資格の位置づけがつかみやすくなります。

建設業専門の転職エージェントを使う方法

求人票だけでは、上に挙げたような配置の予定や現場の規模まではわからないことが多いものです。こうした点を企業に確認してもらいたい場合は、建設業に特化した転職エージェントを使う方法があります。

一例として「建築転職」は、設計・施工管理などの建設系技術者に特化した転職・求人サービスです。有料職業紹介の許可番号として「厚生労働大臣 13(ユ)313467」が公式サイトに表示されています。登録時に選べる希望職種は、建築施工管理(新築・改修・リフォーム)、設備施工管理(給排水設備他・空調)、電気施工管理、施工図・設計、工務・積算、CADオペレーター、営業などに分かれています。

公式サイトの説明では、施工管理の業務に詳しく国家資格を持つコンサルタントが担当し、履歴書・職務経歴書の添削から企業ごとの面接対策までを無料でサポートするとしています。求職者は基本的に無料で利用できます。AIで建築業界向けの履歴書・職務経歴書を作れる無料サービス「建築パス」も用意されています。サイトには求人の例も載っていますが、これは個別の求人の一例で、平均的な条件を示すものではない点に注意してください。

サービスの内容や登録方法は公式サイトで確認できます。建築転職の公式サイトはこちら

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よくある質問

資格がなくても営業所技術者や主任技術者になれますか?

なれる場合があります。所定の学科を修めて高校卒業後5年以上または大学・高専卒業後3年以上の実務経験、あるいは10年以上の実務経験があれば、営業所技術者や主任技術者の要件を満たします。ただし特定建設業のうち指定建設業の特定営業所技術者や、それに対応する監理技術者は、試験合格者・免許取得者か大臣認定を受けた人に限られます。

1級技士補は、経審で何点の扱いになりますか?

主任技術者の資格を持ち、所定の種別の1級第一次検定に合格した人は、施行令第29条の監理技術者補佐に当たり、経審の技術職員数値では1人あたり4として数えられます。1級第二次検定に合格して一級技術者になると5、監理技術者資格者証の交付を受けて講習を受講すると6の区分になります。

ネットで見た専任の金額が記事と違うのはなぜですか?

専任が必要な請負代金額は、令和5年1月と令和7年2月の2回引き上げられています。3,500万円や4,000万円と書かれているものは改正前の金額です。現行は4,500万円(建築一式工事は9,000万円)です。

施工管理技士の第一次検定は何歳から受けられますか?

令和6年度からの技術検定の見直しで、1級の第一次検定は受検年度末の時点で19歳以上、2級の第一次検定は17歳以上であれば受検できるようになりました。第二次検定は、第一次検定に合格したあとの一定期間の実務経験などで受検できます。

1級技士補になったあと、1級の第二次検定はどう受けますか?

国土交通省のよくある質問では、1級第一次検定の合格後に監理技術者補佐としての実務経験を1年以上積むと、1級第二次検定を受検できると案内しています。国土交通省のチラシ(令和5年11月9日版)には、合格後の実務経験5年以上、または特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上というルートも示されています。

出典

この記事の内容は、建設業法・建設業法施行令・建築士法の条文と国土交通省の公表資料をもとに2026年10月に整理したものです。制度や金額は改正されることがあるため、実際の手続きや判断の前には国土交通省などの最新情報で確認してください。

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