学校の先生になるには教員免許が必要、というところまでは誰でも知っています。しかし「免許は何種類あるのか」「短大卒と大学卒で何が違うのか」「教職課程を取らずに大学を出てしまった人に道はあるのか」となると、途端に曖昧になります。教員免許状は1種類ではなく、取り方も大学の教職課程だけではありません。
この記事では、教育職員免許法にもとづく免許状の分類、専修・一種・二種の違い、社会人が後から取得する方法、2022年に廃止された更新制の扱いまでを、文部科学省と独立行政法人教職員支援機構の公表情報にもとづいて整理します。令和6年度に全国で授与された免許状は189,878件で、そのうち教員資格認定試験を経たものは263件でした。数字で見ると、大学の教職課程以外のルートがどれだけ細い道なのかもわかります。数値や制度は2026年10月4日に公表資料で確認したものです。
・免許状は普通・特別・臨時の3種類。それぞれ誰に、どんな効力で与えられるか
・専修・一種・二種の違いは何か(指導できる範囲は変わらない)
・教職課程を経ていない社会人が小学校教諭二種免許状を取る2つのルート
・2022年7月の更新制廃止で、休眠していた免許がどうなったか
まず押さえる 相当免許状主義
教育職員免許法は、学校の教員は「各相当の免許状を有する者でなければならない」と定めています。これを相当免許状主義と呼びます。幼稚園・小学校・中学校・高等学校は、原則として学校の種類ごとに免許状が必要で、さらに中学校と高等学校では教科ごとに免許状が分かれます。
中学校の国語の免許を持っていても、それだけで高校の国語は教えられません。小学校の免許で中学校の授業を担当することもできません。「教員免許を持っている」という言い方は、実際には「どの学校種の、どの教科の免許か」まで特定して初めて意味を持ちます。
免許状を授与するのは都道府県の教育委員会です。大学は教職課程で必要な単位を出すところまでを担い、免許状そのものは教育委員会が出します。この点は、試験に合格しただけでは資格が完成しない他の資格と似た構造で、試験に合格しても名乗れない資格がある 148記事を横断して分かった4つの型でも扱った論点です。
免許状は3種類ある
教育職員免許法が定める免許状は、普通免許状・特別免許状・臨時免許状の3つです。普段「教員免許」と言われるものは、ほぼすべて普通免許状を指しています。
| 種類 | 誰に与えられるか | 効力の範囲 | 有効期間 |
|---|---|---|---|
| 普通免許状 | 大学等で所定の単位を修得した人、または教員資格認定試験に合格した人 | 全国のすべての都道府県で有効 | 期限なし(2022年7月1日以降) |
| 特別免許状 | 優れた知識・経験を持つ社会人等。教育職員検定を経て授与される | 授与した都道府県内のみで有効 | 期限なし(2022年7月1日以降) |
| 臨時免許状 | 普通免許状を持つ人を採用できない場合に限り、助教諭等として | 授与した都道府県内のみ | 原則3年 |
特別免許状は、大学で教職課程の単位を修得していなくても授与されうる点が特徴です。社会人の専門的な知識や経験を学校に迎え入れるための制度で、任命または雇用しようとする者の推薦にもとづき、都道府県教育委員会の教育職員検定を経て授与されます。臨時免許状は、普通免許状を持つ人材を確保できないときの補充的な仕組みで、有効期間と地域が限られます。
授与件数で見る3種類の免許状
文部科学省は毎年、都道府県教育委員会が授与した免許状の件数を調べて公表しています。令和6年度の内訳は次のとおりです。
| 免許状の種類 | 令和6年度 | 令和5年度 | 令和3年度 |
|---|---|---|---|
| 専修免許状 | 9,838件 | 9,977件 | 10,479件 |
| 一種免許状 | 136,133件 | 137,506件 | 135,970件 |
| 二種免許状 | 33,418件 | 35,455件 | 40,405件 |
| 特別免許状 | 591件 | 611件 | 334件 |
| 臨時免許状 | 9,898件 | 9,810件 | 9,720件 |
| 合計 | 189,878件 | 193,359件 | 196,908件 |
授与総数は少しずつ減っており、なかでも二種免許状は令和3年度から3年で約7,000件減りました(当サイト計算)。反対に特別免許状は令和3年度の334件から600件前後まで増え、制度創設からの累計は令和6年度で3,976件になっています。令和5年度は高等学校「情報」の特別免許状が前年度の2件から101件に増えたことも報告されています。臨時免許状は毎年1万件近く出ており、令和6年度はそのうち4,604件が小学校でした。教員免許を持たない社会人が非常勤で教える特別非常勤講師の届出も、令和6年度に20,126件ありました。
専修・一種・二種はどう違うのか
普通免許状はさらに専修・一種・二種に分かれます。ここで誤解が多いのですが、3つの区分で、指導できる範囲そのものに違いはありません。二種免許状でも、担任を持ち、教科を教えることができます。違いは基礎資格(必要な学位)と、修得する単位数です。
| 区分 | 基礎資格 | 小学校の最低単位数 | 中学校の最低単位数 | 高等学校の最低単位数 |
|---|---|---|---|---|
| 専修免許状 | 修士の学位(大学院修了相当) | 91単位 | 91単位 | 91単位 |
| 一種免許状 | 学士の学位(大学卒業相当) | 67単位 | 67単位 | 67単位 |
| 二種免許状 | 短期大学士の学位(短期大学卒業相当) | 45単位 | 43単位 | 設定なし |
高等学校に二種免許状はありません。また、二種免許状で教員になった人には、一種免許状の取得に努める義務が法律上定められています(上進の努力義務)。現場で働きながら不足単位を積み上げ、一種に切り替えるという流れです。
単位の中身は3つの柱に分かれる
小学校教諭一種免許状の67単位を例にとると、教科に関する科目が8単位、教職に関する科目が41単位、教科または教職に関する科目が10単位、日本国憲法・体育・外国語コミュニケーション・情報機器の操作にあたるその他の科目が8単位という内訳です。中学校一種では教科に関する科目が20単位に増え、教職に関する科目が31単位に減ります。学校種が上がるほど教科の専門性が重くなる配分です。
取得ルートは大きく3つ
1 大学・短大の教職課程
もっとも一般的な道です。文部科学省の課程認定を受けた大学・短期大学で、卒業に必要な単位とは別に教職課程の単位を修得します。教育実習と介護等体験が含まれるため、在学中に計画的に組み立てる必要があります。教職課程を置く大学は文部科学省が一覧を公表しており、学校種・教科ごとにどの大学で取得できるかを確認できます。
2 通信制大学で働きながら取る
すでに学士を持っている人が、通信教育課程で不足分の単位だけを修得して免許を取る方法です。科目等履修生として在籍し、スクーリングと教育実習を組み合わせる形が中心になります。働きながら2〜3年かけて取得する人が多く、社会人の主要なルートになっています。ただし教育実習の受け入れ先を自分で確保する必要がある点は、在学中に取る場合と大きく違います。
3 教員資格認定試験
大学の教職課程を経ていない人に、試験だけで免許状取得の道を開く制度です。文部科学省が実施し、独立行政法人教職員支援機構が試験事務を担っています。合格すると、小学校であれば小学校教諭二種免許状の授与資格が得られます。
教員資格認定試験の中身
2026年度(令和8年度)は、幼稚園・小学校・高等学校(情報)の3区分で実施されます。高等学校(情報)は、情報科の担い手を増やすために設けられた区分です。
| 区分 | 取得できる免許状 | 受験手数料 | 2026年度の第1次試験日 |
|---|---|---|---|
| 小学校 | 小学校教諭二種免許状 | 25,000円 | 2026年5月10日 |
| 幼稚園 | 幼稚園教諭二種免許状 | 20,000円 | 2026年5月10日 |
| 高等学校(情報) | 高等学校教諭一種免許状(情報) | 25,000円 | 2026年5月10日 |
小学校の試験は第1次と第2次に分かれ、第1次は教科および教職に関する筆記、第2次は指導案の作成や模擬授業、口述試験といった実技的な内容です。2026年度は第1次の合格発表が7月10日、第2次試験が9月5日、最終合格発表が9月25日という日程で、出願から最終合格まで半年以上かかります。受験資格は高等学校卒業者など大学入学資格を有する人とされており、学歴で門前払いにはなりません。
教職員支援機構は「過去の実施結果」として、区分ごとの出願者数・受験者数・合格者数・合格率を公表しています。合格率は合格者数を受験者数で割ったものです。
| 年度 | 小学校 受験者 | 小学校 合格者 | 小学校 合格率 | 幼稚園 受験者/合格者 | 高校(情報) 受験者/合格者 |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和3年度 | 799人 | 173人 | 21.7% | 17人/7人 | 実施なし |
| 令和4年度 | 782人 | 135人 | 17.3% | 24人/10人 | 実施なし |
| 令和5年度 | 869人 | 191人 | 22.0% | 36人/9人 | 実施なし |
| 令和6年度 | 807人 | 194人 | 24.0% | 24人/3人 | 63人/40人 |
| 令和7年度 | 838人 | 243人 | 29.0% | 21人/12人 | 169人/56人 |
小学校の合格率は平成30年度の13.2%から2019年度の31.8%まで年によって開きがあり、直近の令和7年度は29.0%でした。幼稚園は受験者が20人前後と少ないため、合格率は12.5%から57.1%まで大きく動きます。高等学校(情報)は令和6年度に再開され、受験者が63人から169人に増えた令和7年度は合格率が63.5%から33.1%に下がりました。なお特別支援学校の区分は令和6年度から休止しています。
受験手数料25,000円は、資格試験としてはかなり高い部類に入ります。国家試験の費用感については資格取得にいくらかかる?受験料・講習費・登録費を合計した「入口コスト」で20資格を比較で20資格を並べました。
2022年に更新制が廃止された
2009年に導入された教員免許更新制は、10年ごとに30時間以上の更新講習を受けなければ免許が失効するという仕組みでした。これが2022年5月11日成立の「教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律」により、同年7月1日をもって発展的に解消されています。
実務上の影響が大きいのは休眠免許の扱いです。文部科学省の資料によれば、施行日である2022年7月1日時点で有効だった免許状は、休眠状態のものも含めて、手続きなしで有効期限のない免許状になりました。大学卒業時に取得したまま教職に就かず、更新講習を受けていなかった人の免許も、この日をもって期限のない免許として生き続けていることになります。
廃止の理由として文部科学省が挙げているのは、社会の変化が早く非連続になるなかで、10年に一度の講習という形が「教師が常に最新の知識技能を学び続ける」ことと整合しなくなった、という点です。代わりに、研修履歴を活用した対話にもとづく受講奨励という仕組みに移行しました。資格の更新制度という論点そのものは資格の更新制度と失効、知っておきたい注意点で他資格と比べています。
免許を取っても、それだけでは教壇に立てない
見落とされやすい点です。免許状は「教える資格がある」ことの証明にすぎず、公立学校で働くには各都道府県・政令指定都市が実施する教員採用候補者選考試験に合格し、名簿に登載される必要があります。私立学校は学校法人ごとの採用選考です。
免許取得と採用は別の関門であり、免許を持ちながら教職に就いていない人(いわゆるペーパーティーチャー)が相当数いるのはこのためです。近年は教員不足を受けて、休眠免許を持つ人を対象にした説明会や研修を行う自治体も出ています。
よくある質問
教職課程を取らずに大学を卒業しました。今から教員免許は取れますか。
取れます。通信制大学の科目等履修生として不足単位を修得する方法と、教員資格認定試験を受ける方法の2つがあります。前者は学士を持っていれば一種免許状を目指せますが、教育実習の受け入れ先確保が課題になります。後者は小学校・幼稚園・高等学校(情報)に区分が限られます。
二種免許状だと採用で不利になりますか。
免許の種類で応募できる採用試験が変わるわけではありません。ただし二種免許状には一種免許状取得への努力義務があり、採用後に現職教員として不足単位を修得する道が用意されています。
中学校と高校の免許は同時に取れますか。
同じ教科であれば、両方の課程を並行して履修することで同時取得を目指せます。多くの大学では中学校一種と高等学校一種をセットで取れるように科目が設計されています。
小学校の免許で中学校の授業を担当できますか。
相当免許状主義により、原則としてできません。逆方向については、中学校・高等学校の免許状を持つ人が小学校で教科の指導に加えて総合的な学習の時間・道徳・特別活動の指導を行える仕組みがあります。
更新講習を受けていない古い免許は失効していますか。
2022年7月1日時点で有効だった免許状は、休眠状態のものも含めて期限のない免許状になりました。それ以前に修了確認期限を過ぎて失効していた場合は、別途、免許状の再授与を受ける手続きが必要になります。都道府県教育委員会に確認してください。
保育士資格を持っていれば幼稚園教諭免許は取りやすいですか。
保育士資格と実務経験を持つ人を対象にした特例制度が設けられてきました。適用の条件や期間は改正されることがあるため、最新の扱いは幼稚園教諭免許状とは?種類・取得ルート・保育士との違いを徹底解説と、文部科学省の案内を確認してください。保育士資格そのものについては保育士資格の取得方法で解説しています。
教員免許は国家資格ですか。
教育職員免許法にもとづき都道府県教育委員会が授与する免許で、国家資格に分類されます。資格の分類については国家資格・公的資格・民間資格の違いとは?見分け方と履歴書の書き方を参照してください。
まとめ
教員免許状は普通・特別・臨時の3種類に分かれ、普段目にするのは普通免許状です。その普通免許状も専修・一種・二種の区分があり、必要な学位と単位数は違いますが、指導できる範囲そのものは変わりません。小学校一種なら67単位、二種なら45単位が最低ラインで、これに介護等体験7日間と教育実習が加わります。
教職課程を経ていない社会人にも道はあり、通信制大学での単位修得と、教員資格認定試験の2つが実質的な選択肢です。認定試験は2026年度に幼稚園・小学校・高等学校(情報)の3区分で実施され、小学校の受験手数料は25,000円、第1次試験は5月10日という日程でした。
そして2022年7月1日の更新制廃止により、それまで有効だった免許は休眠中のものも含めて期限のない免許になっています。昔取ったまま使っていない免許がある人は、失効していないかを調べるところから始める価値があります。制度は改正されるため、最終的な確認は文部科学省と都道府県教育委員会の公表情報で行ってください。
出典(2026年10月4日に確認)
- 文部科学省「教員免許状授与件数等調査及び教員免許状取得状況等調査」令和6年度分(教育委員会月報2026年4月号)、令和5年度分(同2025年2月号)、令和3年度分(同2023年12月号)
- 独立行政法人教職員支援機構「教員資格認定試験 過去の実施結果」(令和7年度試験結果まで)
- 同「令和8年度教員資格認定試験の実施について」「令和8年度教員資格認定試験の合格判定基準」、小学校・幼稚園・高等学校(情報)の令和8年度受験案内
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